第七十一話
さて、冒険者ギルドの一つの部屋に来たわけだが……。
SSランクの冒険者。一体誰なのだろうか。
と思った時、誰かが入ってきた。
見た感じ、普通の好青年だ。
青い髪を短く切り揃えている。法衣の配色でコートを作ったような、そんな感じがした。
武器は持っていないが、まあ、ポーチくらいは持っているだろう。
「君がミチヤ君かな?」
声も雰囲気にあったものだった。
「はい。そうです」
「そっか。初めまして、SSランクの冒険者。ロイです。今回は宜しくね」
「よろしくお願いします」
うーん……確かに、内に秘めている存在感はすさまじいものを感じるのだが、なんか……外骨格がすさまじく強靭だ。ほとんど漏れていない。
「お、分かるんだね。強さとかそう言う部分は」
「まあ、そうですね」
「召喚された勇者って話だったね。争いとはほぼ無縁な場所から来ていると思ったけど、安心したよ。守りきる自信はあるけど、不安要素は少ない方がいいしね」
「お互い様です。あと、召喚された勇者ですけど、職業は『巻き込まれた青年』です」
「ふむ……なるほど。まあいいかな」
それにしても……SSランク。ねぇ。
馬車で移動していた。
フルーセやルークは目立つからな。
しかも、奴隷たちも連れていない。現地集合らしいが……まあ、そんなところだ。
「ロイさんは、冒険者をやっていて長いんですか?」
「まあ、それなりにね。6歳のころからやっているかな」
「6歳!?」
地球だと幼稚園児だぞ。
「冒険者と言っても、することの範囲が広いからね。流石に最初のころからモンスターを倒したりなんてことはなかったさ」
「まあ……そうですよね」
「まあそれでも、7歳で倒したけどね」
「……すごくコメントに困りますね」
「人生ってそんなものだよ」
同じ人族か?本当に。
「SSランクって言いますけど、ぶっちゃけ、どうなんですか?」
「国のトップがSランクと言うことは知っているかな?」
「まあ、会ってますし」
法国と帝国のトップがそうだった筈だ。
「ぶっちゃけるとそれ以上に強いってことさ。僕の場合は、Sランクになったのが13歳のころか。SSランクになったのは16歳のころだけどね」
「すごいって言うか……運がいいですね」
「お、いい表現だね。確かに、僕は運がよかった……ん?」
馬車の上空をドラゴンが飛んでいた。
全長……30メートルはある。
で、こちらを向いて口の中に火をためていく。
「む、一級接触禁止モンスターか」
「噴火山脈竜アースを見た後だと全然怖くないな」
「そういうものだよ」
ロイは右手を前に出して、魔方陣を出現させる。
すると、ドラゴンは墜落していった。
「……は?いや、さっきのって……回復魔法だよな」
「お、分かるんだ」
「ロイさんは、治療師なんですか?」
「うん。まあ、邪道だけどね。どうやったんだと思う?」
「いや、さっぱり。そもそもこの世界に来て一年もたっていないからな」
「それもそうか。まあ、簡単に言えば、ちょっといじったんだよ」
「いじった……ああ、なるほど」
「これだけのヒントで分かるものなのかな。まあいいけどね」
「そういうもんだ。というか、そうでもないとこの世界でやって行けない」
「……苦労人だね」
「ソロの人にはわからんさ」
ロイは苦笑した。
「ロイさんの場合、他の冒険者の育成以外でパーティーを組むことはないですよね」
「そうだね」
ロイが行ったのは回復魔法だ。
だが、確かにいじっている。
普通の回復魔法は、傷の回復速度を恐ろしく速くすることで行われている。
だからこそ、部位欠損はそんじゃそこらの回復魔法では治らないのだが、全ての回復魔法には、もうひとつ要素がある。
それは、回復作用を魔法に組み込まれた魔力で行う。と言うことだ。
この設定があるからこそ、体内のカロリーやらエネルギーを使うことなく使用できるのだ。
もし、この魔力代用作用がない場合、どうなるのか。
答えは簡単だ。体内のエネルギーを使うしかない。
使用された側の魔力で代用することもない。そもそも魔力を使おうとしないのだから。
おそらく、体内の何かを傷つけるような要素を混ぜているのだろう。
自分の体内のそれを、必要以上のカロリー消費で行い続ける。
簡単に言えば、餓死したのだ。
回復魔法は、かけられた後でなければ本人には感知できないという話をよく聞くのだが、それはミチヤもほぼ変わらない。
射程に問題があることはあるものの、効果は絶大だろう。
ただし、この討伐方法は、他の冒険者と戦場を共有するには合わない。
理由は簡単だ。回復魔法と言うより餓死魔法とでも言える産物だが、それでも、回復していることに変わりはない。
モンスターを攻撃し、その結果としてHPを奪っていくスタイルのもの達からすれば、そして、仲間が傷ついた時にそれをいやすわけでもなく、モンスターを餓死させるために回復魔法を使うというのは……確かに、邪道ではある。
「まあでも、倒せるんだから、別に悪い話じゃないですよね。倒せないよりは」
「まあ、食料にはなってくれないけどね。餓死しているから」
まあ、そうだろうな。
イナーセルとか悲鳴を上げるんじゃないか?
「だが……簡単な技術ではないな。言うに易し、するに硬しだ」
「異世界にはそんな言葉があるんだね。良い言葉だ」
「本来、回復魔法に限らず、魔法において、魔力を余分に抜き取って代用させる作用は必要不可欠だろう」
火の玉を出したりする魔法はある。
だが、この魔法であっても、魔力を余分に抜き取られて、その魔力を材料にして燃えているのだ。
本来は空気中の酸素を使うはずだが、魔法の場合は魔力を材料にする。
そもそも魔力とは何なのかという話になるのだが、これは諸説あったが、かつての召喚された勇者が解明した結果に寄れば、物質の三形態、個体、液体、気体、その三つの要素をつないでいる三角形の物質『レゾナシウム』という物質らしい。語源は『resonance』……日本語で言えば『共鳴』だろうか。おそらくそれだと思われる。
全ての物質には、沸点と融点が存在する。そのため、一つの元素から生まれた場合、その物体の空気中での状態は決定することになるが、もとより三つの状態が強制的に共鳴されているレゾナシウムは、魔法を使う瞬間、好きな状態の要素のみを材料にすることで、好きな個体、液体、気体を出せるとされている。
魔方陣は、三つの要素を強制的に共鳴させている、三角形の辺の部分が他のレゾナシウムを共鳴することで、材料状態のレゾナシウムに情報を与える『図面』がつくられるだそうだ。
さらに、全てのレゾナシウムは分裂性能を持っている。この性能があることで、魔法発動中の魔力が尽きることはないらしい。空気中では魔法発動中しか分裂作用は発動しないが、その分裂速度は一億人いても3%しか誤差がないとのこと。生物の体内では、使うことが出来ない魔力が存在するため、枯渇したとしても体内に残っている。そして、また分裂して戻って行くのだ。
アークヒルズが言うには、この解明を行ったのは、まだバスタードが出現した時期に召喚された付与術師とのこと。
前置きが長くなったが、少なくとも、酸素だけではほぼ必ず足りなくなって来る。
そのため、魔力を材料にするのだが、これはもう、この世界の有史以来、使うことがほぼ各地していたことだ。いわば本能である。
そのため、意識的に材料として使用しないというのは、すさまじいことなのだ。
「まあ、まだ小さいころに気が付いたからね。もう慣れたもんさ」
「そういうものですかね」
「そう言うものだよ」
さて、そろそろ見えてきたな。




