第六十九話
「お、フルーセが返ってきたな」
三日後に帰って来た。
何か言っているようだが、ミラルドにしかわからないのも現状である。
「『自分にはもう王がいるから、自分はもう王にはならない』って言ってる」
「王とか柄じゃないが……まあ、別に悪い話ではないか。お帰り、フルーセ」
「あと、出来ることが増えたって」
「?」
次の瞬間。フルーセが光った。
かなりまぶしかったので目を閉じる。
で、光が収まったのでみると……。
ヨシュアくらいの身長で金髪銀眼の美少女がいた。
ちょっと垂れ目である。
胸は皆無。ヨシュアはそれなりにある方なのだが、まあ、いいのやら悪いのやら……。
で、一番重要なこと。
「とりあえず服着ろ」
長い金髪で隠れているが……全裸だということだ。
本当に……覇竜城で借りている部屋の中でよかったと思う。
----------------------------------
ヨシュアが即席で服を作った。
因みに、馬のもどることも考えたのだとおもうが、その時は魔力に変換されて、人の時だけ出てくると言う優れものである。
白いワンピースを着ている。
「人化……と言ったところか?」
「そうだよ~」
すごくのほほんとしているな……。
馬の時と比べて精神年齢がかなり低く見えるが……これは一体どういうことなのだろうか。
まあ、身長140センチで大人の貫禄とか見せられても困るけど。いろんな意味で。
「ちなみに、今のセアルハーグの女王って、人化できるの?」
「出来るよ~。160歳くらいのおばあちゃんになるかな~」
妖怪じゃねえか。せめて若々しい姿でいろよ。
あ、実年齢は竜王アークヒルズよりもはるかに上らしい。
ちなみに、人化できるというと竜族もセアルハーグも同じだが、竜族は亜人に属しており、セアルハーグは実質的にはモンスターである。
この違いがよくわからないのだが、まあ、人族の貴族連中が何か決めているようだ。
世界中で一番多いのは人族なので(蟻族とかがいたら多分そっちの方が多いけど)、世論と言えば人族だけの話になるのである。
ちなみに、老化する種族としない種族がある。
老化しない種族の代表格は天使族や吸血鬼らしい。
竜族やエルフは老化が遅いだけで、しっかりする。とのこと。
「それにしても……そもそもセアルハーグ自体そこまで見るものではありませんが、人化するのは初めて見ましたね」
「俺もだ。というか、出来る可能性があることすら知らなかった」
ミーティアとイナーセルが呟いた。
セアルハーグは種族名で、『馬竜種』と言う種族の一つだ。
馬竜種の中でも下位種族とされるものは竜族領土にも住んでいるらしいが、セアルハーグは生息していない。
フルーセはそんな中でも希少種だ。なかなか見る機会は少ない。
「話を聞く限り王族っぽいけど、大丈夫なのか?」
「大丈夫ですよ~。そのあたりアバウトですし~。お母さんも産むときはバリバリ産みますから」
ここまで来てなんか強烈な加齢臭がするのは気のせいだろうか。
「まあ、問題がないんならいいんだ。というか、そうしないとやってられん」
ミチヤに集まって来るもの達は優秀だし、それぞれ高いポテンシャルを持っている。それはそれでうれしいのだが、なんともまあ……胃が痛い。
「で、戦闘力云々はどうなるんだ?」
「蹴りが強いことは変わらないかな~」
脚力はあまり変わらないが馬力は落ちる。と言ったところか。まあ、馬ではなく人間の姿なのだから馬力は落ちるのも当然か……ギャグではないぞ。
「まあ、これはこれで問題ない。と思うからいいか」
「主様の料理食べたい~。いつも林檎とかにんじんだったもん」
「いや、俺、好き嫌いのない馬が何を好むのかなんて知るわけないだろ」
馬の場合、甘みがあってちょっと硬いものを好む。
ニンジンやリンゴ、地域によっては角砂糖を食べさせることもあるらしい。
「まあ、フルーセはそこまでバカ食いするわけでもないしな……」
ミラルドにしか聞こえない音量でつぶやいた。
馬の時から謙虚だったので、まあ大丈夫だろう。落ち着いたやつだったし。
で……結果。
「……精神年齢がやっぱりおかしい。食いすぎだろこれ」
資金はたくさんあるし、在庫もたくさんあるので問題は実質的にはない。
が、作るミチヤの身になってほしいというのが、正直な感想だった。
すごくよく食べるよ。もう本当に。
イナーセルほどまでとはいかないけどさ。
「人も馬も見かけによらないのか……それとも、本当に精神年齢が低くなっているのか……それとも、もともとこんな感じなのか……変な贈り物をしてくれたものだな。あの時の女王」
妙な心境だったが、おいしそうにモリモリ食べているのはいいことである。
ヨシュアはそこまで食べるタイプではなく、ミラルドも似たり寄ったりだったので(まあどっちも最初はそれなりに食べていたが)、久しぶりにバクバクと食べていると言う状況は、ミチヤにとって悪い話ではない。
あとは……ちょっと風呂が騒がしくなったくらいか。
まあ、いままでミラルドしか意思疎通できなかったので、その分しゃべるのは楽しいのだろう。
実年齢が高いせいか、時々強烈な加齢臭がするのは免れないが……。
で、夜。
「即席で新しくベッドを作ったけど……」
「やー!主様と一緒に寝るー!」
ずっとこんな感じである。
ああ、うん。もう精神年齢が意図的に下げられたな。
「あなたはこっち」
ヨシュアがフルーセを引っ張っており、フルーセは抵抗中だ。
脚力はあっても馬力はないので、引きはがすことが出来ないらしい。
ヨシュアもレベルは1000を超えているからな。ミチヤのほぼ五倍以上。悲しいな。
まあ、フルーセもレベルにおいてはものすごく高いはずだが、そもそも、人化したのが今日がほぼ初めてで、全力を出すにはまだ経験不足だ。
「やー!だってフルーセだけずっと外だったんだもん!」
「思えばそうだったな……」
ルークは今ではすごく大きいが、小さくなれるし、コハクはスライムなので普通に小さい。
だが、うまであるフルーセは、近くにはいたが、宿屋の店主が許容してくれない場合が多かったのだ。
で、外で寝るわけにもいかなかったので、フルーセだけずっと外だったのである。
精神年齢が低くなった今、一人で寝るのは無理っぽいのだ。
「今日はいいぞ」
「やった~主様大好き~!」
「グホッ!」
脚力が強いということは……ジャンプ力がすさまじいということもである。
腹に来たわけだが、内臓がつぶれるかと思った。
ちなみに、時速112km。ちょっと勘弁してほしいぞ。
「フルーセ」
「なあに?主様~」
「飛びついて来るときはちょっと自重してくれ、一瞬内臓を本気で心配した」
「わかった~」
いつの間にか隠れ犯罪者にならないかどうか心配だ。ものすごく。
精神年齢が低く、高いポテンシャルと持つことがここまで脅威だとは……ジャンルは正確には異なるが、海道とは別の意味で危険のような気がする。
ただ、フルーセは寝る時はすごくおとなしかった。
寝相はいいのである。ミチヤの腕の中ですやすや眠っている。
イナーセルとは違って。
イナーセルってすごいぞ。起きた時に頭と足の位置が逆になっていたり、別のベッドにもぐりこんでたり(ミラルドにしばかれた)、誰かを下敷きにしていたり(ヨシュアに縛られた)、まあ……男女共同で寝ていることが普通になっている俺達もどうかと思うがな。
馬車の中で寝る時も、部屋を分けたりしないからな。
というか、特別性欲が強いのは人族で、それ以外の種族はそうでもないのだ。
まあ、たまにミラルドが血をすって来るときはあるけど。
で、唯一の人族であるミチヤが性欲皆無なので、変な意味で平和なのである。
いつもの普通に、ちょっと一味が加わった日だった。




