第六十七話
覇黒宮廷魔王謁見室にて。
「ふむ、共闘本能で収まったか」
バスタードは頷いた。
カルカロス、イーゼラーが部屋にいる。
「で、クラリスタ。これは一体どういうことだ?」
「魔が差しました」
「……まあ、今回はいいがな」
バスタードは溜息を一つ吐いた。
「噴火山脈竜アースが出現したか……」
「バスタード様もしってるのか?」
「まあ、文献での話だがな。三体が魔方陣で合わさることで出現したといっていたが……」
バスタードは気になっていた。
文献に刻まれていたのは大昔のことなので、今は変わっていてもおかしくはない。
だが、それは食物連鎖の範囲内の話だ。
噴火山脈竜アースは、体内にダンジョンを持つ。
実はこれ、かなり希少なのだ。
バスタードは魔王である以前に魔族なので、魔族領土から出ることはないが(あくまで本来のステータスで、と言う意味でだが)、魔族領土だけで言っても、その地上の面積は5600万9000平方キロメートル。地球……だったかな。そこで言う、ユーラシア大陸よりもちょっと広いのだ。
その分、活動面積も広いので、それなりに経験はあるのだ。
「火山帝竜アースにならあったことがあるが……」
「バスタード様一人で戦ったのか?」
「そうだが」
「どれくらいの時間がかかったんだ?」
「五秒」
カルカロスとイーゼラーとクラリスタは愕然とした。
え、何?あんなに時間をかけてほとんどダメージを与えられなかったのに、この人がやると五秒で終わるの?
「バスタード様、やっぱりチートだな」
「自分でもパワーインフレしていると感じるがな」
ちなみにその時の討伐方法だが、蹴りである。
それにしても……魔方陣を出現させるなどと言うのは聞いたことがない。
バスタードの知識から察するに……それはおそらく、何者かがそれを可能にする者を入手したと考えるのが自然だ。
となると、コマンディアがその何かを手に入れたことになるのだが、一体どこから手に入れたのだろうか……不思議である。
「そう言えば、竜族の第一王女と第二王女が誘拐されたという話だったな」
「はい」
「その……誘拐された施設や家の特徴ってわかるか?」
「確か……妙な像があったな」
バスタードは体の空気を全て抜く勢いでため息を吐いた。
「……何かあったのか?」
「うん……たぶんあったはずなんだよ。ちょっと待ってろ」
バスタードは席を立つと、カルカロス達が入ってきた扉とは逆の方向にある扉に入る。
自室だ。ミチヤからもらったゲームもここに置いている。
机とベッドが一つずつで、他はすべてタンスでごちゃごちゃになっている。
流石はズボラ魔王。こんな場所でも平常運転だ。書斎は別にあるからな。
「えーと確か……あった」
その中のタンスの中からガラケーを取り出す。
そして、アドレス帳を出す。
ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ。
「お、あった」
なんともアナログかつ友好範囲の広い魔王である。
コールは58回だった。
「おいアークヒルズ!お前あの像があった家で王女二人が誘拐されただろ!」
『何故知っているのだ?』
「聞いたわ!お前あの家に『遺伝子天秤』おいてただろ!」
『遺伝子天秤……あ』
遺伝子天秤。
アーティファクトの一つだ。
ただし、そんじゃそこらにあるものとは価値が断然違う最高峰のものの一つである。
遺伝子の強化、集結。
天秤と言うものの役目は調節だが、それを崩壊させることも可能である。
「あれがあれば、本来行えないはずの、モンスター同士の合体が可能になる。まあ、竜族だけだが、面倒なことしたもんだな」
『まあ、まさかあれが突破されるとは思わなくてな』
「そうだな。私はお前からすれば、セキュリティに関していえばごみレベルだが……一般的に見ればそうではあるまい」
『で、どうすればいいのだ?』
「お前あの竜人族に任せてばかりで頭使ってないな……まあ、とにかく、考えれる対策はしなくてはならないだろう」
『……任せる』
「魔王に丸投げするとかお前くらいのもんだぞ」
『まあ、いいではないか、私とお前の付き合いだ』
「お前大して魔力くれないじゃん」
『……まあ、それはいいだろう。とにかく、任せた』
プツッ。
「あ、切りやがった」
魔族領土は危険区域にあるといっても過言ではない。
今回、カルカロスとイーゼラーを派遣したのは、ちょっとでも甘さをなくしてほしかったからだ。魔族領土であってもアースなんてめったにでないからである。
だが、まあいろいろ考えるのはやめるとして、魔族領土であるグランシャリオ大陸以外にも、ちょっと集団ではかかってほしくない者達もいるのだ。
戦闘力的には、本気を出せば瞬殺できるだろうが、魔族領土は広いので、対策に時間がかかる上に、どれも万全に行けるかどうかとなると不安な部分も多いのである。
「くうう……仕方がない。あまり恩を売りたくないけど……対策しなかったらやばいからな」
ということで……。
ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ
「あ~多い……あった!」
……。
『おかけになった番号は現在使用されておりません』
「ふざけるなあ!」
バスタードは一瞬ガラケーを床にたたきつけそうになったが、こらえる。
「仕方がない。手紙でも書くか。文字書くの久しぶりだな……何万年ぶりだろ。いつも電話だからな」
バスタードは机の引き出しを開ける。
完璧にほこりをかぶっていたが、きれいなものを出して、シャーペンを取り出して書き始めた。
「……よし、これで対抗魔法具を作ってくれ……るといいがな」
バスタードは指をパチンと鳴らした。
すると、音もなく忍び装束の女が現れる。
「これを届けてくれ」
「はっ!」
で、消えた。
ふう……。
「面倒なことになったな。遺伝子天秤を盗まれるなんて……そもそも、あの像を一体誰が壊したのだろうか……」
思えば、家の遺伝子天秤を置いていたことなんて、アークヒルズはすっかり忘れているだろうということは推測できるだろう。実際忘れていたし。
「ということは……王女誘拐は、あくまでもフェイクだということか?だが……それにしては作戦は綿密なものだ。完全な水面下とも言っていいだろう」
作戦そのものの首謀者は神だろう。
だが、神も知らないところで、部下が動いている可能性は十分にある。
そして、首謀者を見る限り、あまり頭がいいとは言えないだろう。
誰かが計画しているのだろうか……。
「何か誰かに似ているんだよなぁ。この計画……まさか……」
ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ
「おーい。ドッペルキング」
『私にはヌレハと言う名前があるんだけど』
「ンなことはいいとして、お前、今、傍にナーザはいるか?」
ドッペルゲンガー。別名『影人』
モンスターっぽい名前だが、普通に頂上会議にも出席する種族である。
影に関してはトップクラスの種族であり、上級者になるとかなり化けることにも高いスキルを持っているのだ。
だが、化けるスキルがかなり厄介と思われているのか、風当たりの悪い種族だ。頂上会議に出席する規模を満たしているが、かなり少数種族で、ひっそりと暮らしている。
『ナーザね。今行方不明なのよ』
「やっぱりな」
『何かあったの?』
そう言えば世情に疎いやつだった。
「今な。コマンディアって言う組織が何か知らんが作戦を行っているんだよ」
『ふんふん』
「でな。その計画がな。何ともナーザが作ったモノっぽいんだよ」
『……え!?』
「だが、相手が神でな。多分『神隷の紋章』付きで使っているんだと思う」
『許せないわね。そのコマンディアの本部はどこにあるの?』
「現在調査中」
『私の方でも調べてみる』
「宜しく」
通話終了。
「さて、どうするかな……あ、そう言えば待たせてたんだった」
謁見室に戻ってみると誰もいなかった。
ちょっとショックだった。
「あ、おじいちゃ~ん!」
フランが走ってきてバスタードに飛びついた。
可愛いなぁ。
「あ、これ、おじいちゃんにあげる~」
腕輪だった。
純金で、なんというか、すごく細かい装飾が施されている。
本当に四歳なのかね?まあいいが。
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【おじいちゃんへのプレゼントリング】
製作者 フラン・ハザードベル・グランシャリオ
message おじいちゃんファイト!
効果
・魔王クラスのものが付けている時のみ、効果を発揮する。不死になる。
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はっ!?
内心ビビるバスタードであった。




