第六十六話
事後処理と言うものは、関係のないものを巻き込む規模になった時、それはもう面倒なことになる。
竜王としてアークヒルズは飛び回っていろんなところに顔を出す必要もある。
冒険者ギルドグランドマスターとして、ハルカも復興のクエストを破格で発注しまくって、何とかしなければならない。
セアルハーグがアースを蹴って海まで飛ばした時、町が21個、村が40個壊滅状態になった。
命の危機に立たされたものが何人もいた。
全員の命は無論助けた。
その方法なのだが、まず、風雅の『破壊神シヴァ』との契約で『概念破壊』と言うものを編み出すことに成功した。
しかし、それは不完全なものであるが、使う価値は恐ろしいほど高かった。
ミチヤの魔力を使って、魔力の大量消費を補って、ある概念を破壊した。
即ち『欠損』『崩壊』『損害』と言った、まとめれば『被害』そのものだろう。
不完全な状態で放てば、失敗する可能性もあるし、次を使う余力など風雅には残されないのだ。
そこで、春瀬のタロットの力の一つ、ナンバー21『世界』の正位置の意味の中にある『完成』を起動することで、不完全な状態で放出される概念破壊を強引に完成させることで補い、概念破壊は完璧な形で起動した。
被害が出ていた町や村はすべて元通りになり、損害を消してしまったことで村では豊作状態に、行商人も、魔物に襲われることはなかったそうだ。
無論。二人はぶっ倒れて一週間起きなかったが。
で、なんかどさくさに紛れて王女を誘拐しようとしたものがいたらしいのだが……失敗は成功したと言っておこう。
そのもの達の末路は、ミチヤは知らない。聞かされていないし、関与していないからな。
「でまあ、何とかなったな」
「解決したといえるのかどうかの問題だがな……」
そう、また出てくる可能性もあるのだ。そこが面倒なのである。
ミチヤ、風雅、春瀬で集まっていた。
ちなみに、全員が全員を名前で呼ぶようになった。
思えば、クラスメイトだけで会うのはもうかなり久しぶりだ。
「そう言えば、お前らレベルはどうなったんだ?」
「僕たち二人ともカンストしたよ」
「まあそれはいいだろ。ミチヤ、お前、一体どんなスキルを持っているんだ?」
まあ、話してもいいか。
「俺が持っているスキルは『真名解放』だ。俺は、意志あるものの真名を見ることが出来る。それを行うことで、なんだろう。何かの解放を行うんだと思うが、詳しくは知らん。あと、シュ族としての壁を突破することもある」
思えば、最初、イナーセルは呪いがかかっていたが、真名の解放でそれがなくなったからな。
「すごいスキルだね」
「まあ、俺もそう思う。レベルの上限もなくなるみたいだからな。だが、召喚された勇者に関しては、俺をふくめてみることはできない」
「まあ、この世界の人間じゃないしね。もともと。それの違いだと思うよ」
そう言えばそうなのかもしれんが……。
「それとね……」
春瀬は話す。
「この世界。アムネシアって言うんだったよね」
「ああ」
「僕の記憶が正しければ、アムネシアと言うのは『記憶喪失』の意味があったはずだ」
「記憶喪失?」
「そうだよ。真名の解放による効果は、僕から見てもすさまじかった。真名。この世界の人は、おそらくそれを、生まれた瞬間に授けられて、しかも、自分にわかるように認識して、そして忘れるんだと思う。名前もわからないのに、本来の力を使うなんていうのは変な話だよ」
「節理……か」
神よりも上の概念。いや、もう存在と言ってもいいかもしれない。
その働きによって、真名に関するものが封印されたのだと思う。
封印と言う言葉が正しいのかどうかは別だが、解放と言うのだから封印されていたと言う言葉は正しいと思う。
「それにしても、それはそれですごいスキルだ。レベルの上限が無くなるなんてね」
「もっと具体的に言えば、ステータスプレートでは測り切れなくなった」
「ふむ……」
「……そういや、ミチヤは魔力がとんでもなく多いみたいだが、それは、真名解放の影響なんじゃないか?」
ありうるな。
ミチヤの魔力の多さが、他のステータスが低いからと言うものではなく、スキル『真名解放』の副産物であるという可能性は、低くはないし、納得できる。
「節理、と言う言葉がこの世界ではかなり重要だ。神と呼ばれる存在ですら、この世界に住んでいるわけだからね。だから、ミチヤのスキルをカテゴリに分類するとすれば、『節理干渉系』または『節理崩壊系』
とでもいうべきものに属するかもしれない」
節理……か。
「風雅と春瀬は、摂理についてどう思う?」
「僕は……存在はするけど、決して認知することも、感じることはないものだと思う。全てには限界が設定されているように感じるけど、それは才能だったり、努力の差があったりするだけで、それを節理とは考えないだろう」
「俺はそういうのはあまり関係ないと思う。あると信じているのなら、それは多分本当で、ないと信じているのなら、それも多分本当なんだ。本人次第だと思うぜ。なにせ、摂理に定義なんてないんだから」
そう言うものか……。
「ミチヤはどう思うんだ?」
「……わからないな。だが……この世界では簡単な話ではないという、それだけの話なのかもしれない」
「節理という単語しか、今のところが伊藤させることが出来ないというだけで、他の言葉が適用されている可能性も十分にある」
「結局、そのまま変わらんだろ。今更悩む必要はないと思うぜ」
ふむ、まあ、考えて分かるのなら、悩みはしないか。
「そういうもんか……で、お前らは、これからどうするんだ?」
「「ハルカが帰るって言うまで帰れないことになってる」」
なぜそこでハモるんだ?
ていうか、どんだけ理不尽な契約してんだお前ら。
「なんか……乗せられたな。お前ら」
「否定できないんだよねぇ」
「そうだな。ただ、俺は、ここに来てよかったと思ってるよ」
「あんなにスリリングだったのにか?」
「だからこそっている気はねえよ。でも、なんか、らしい世界に来たって感じるからな」
そうだな。
「とにかく、コマンディアについてはさっさと終わらせないとな」
「ああ、あんな化けもんを相手にするのはごめんだ」
「同感だ」
三人は、本当に久しく、語り合っていた。




