第六十四話
ミチヤたちは、火山帝竜アースを追いかけていた。
「……なあ、なんか、同じような雰囲気が集まろうとしている感じがするんだが……」
ミチヤの呟きにアークヒルズもうなずいた。
「私もそう思う……だが、一匹だけが異様に弱っているような気がするのだが……」
「奴隷たちがいる方角から来てる個体だな。アイツらのところには確か、爺が向かっているはずだが……そんなに火力あったっけ?」
「爺と言うのは……ケルキオンのことか?」
「ミチヤ良く知ってるな。その通りだ。頭が切れるって言うより、ずるがしこいって言うか……」
ミチヤはミーティアから聞いているのだが、ミーティアの話からすれば、確かに火力があるようには感じない。阻害系は強かったはずだが……。
「まあとにかく、行ってみれば分かるか。で、時間は大丈夫なのか?」
「……爺じゃない可能性もあるからな……ぶっちゃけ不安」
結構問題な感じがする。
……あ、ルークとフルーセが見えた。
「あの方角だな。ちょっと見えてきた」
「その全身錬金、視力もよくなるのか」
「ああ、で、誰だろうな。コルセットドレスを着た赤い髪の女だけど……」
イーゼラーとアークヒルズの脳内では、該当人物は一人しかいなかった。
「姫……来ちゃったんだな……」
「何となく予想はしていたのだがな……」
お転婆なのかねぇ……よくわからない。
「ケルキオン。変な感じにだまされたな」
「ああ、俺もそう思う。あの爺、太股派だからな……コルセットドレスっつっても下半身はミニスカみたいなもんだから、一応ストッキングはいてるけど、たぶん悩殺でもされたんだろ。そこで一服盛られたらもうあとは夢の世界に直送って訳だな」
やっぱり魔族ってよくわからん。
で、ハルカ達とも合流した。
合流する前に錬金は戻しておいたがな。
「で、何が起こっているんだ?」
風雅が聞いて来る。
ミチヤはそれに対してこう返した。
「たぶんここにいる誰もが分かってねえよ」
それは一応、事実であった。
まあそれはともかく……。
「……ん?なんか魔方陣が見たような……」
イーゼラーが呟いた。
ミチヤも見る。
……現在進行形で今もある。
「なんだろう。すごくいやな予感がする」
イナーセルが呟くが、ミチヤも賛同した。
次の瞬間。アース三体が、その魔方陣の有るエリアに到達し、三体が同時に光った。
そして、その光が魔方陣に次々と吸収され、魔方陣のエリアのすべてから、光の柱が出現する。
その副作用だろう。すさまじいほどの風があたりに発生している。
やがて、光は収まった。
そしてそこにあったのは……山脈であった。
「な……何だあれは」
道也が呟く。
アークヒルズが呟いた。
「文献通りなのであれば……『噴火山脈竜アース』だろう」
噴火山脈竜アース。
プレッシャーは、三体しか集まってないのに、三倍以上、いや、数百倍と言っても過言ではない。
とにかく、大きすぎるのだ。
顔がこちらの方向にある。
だが、距離と大きさからすると……その大きさだけでも、都市を語るくらいは容易いだろう。
「なあ、倒し方わかる?」
ミチヤはアークヒルズに聞いた。
「倒すというより……活動を停止させるという言葉の方が正しいだろう」
「?」
「噴火山脈竜アースは、その大きさゆえに、動くことができん」
うわ……ものすごく悲しいデメリットである。
「火山内部には、とても貴重な鉱石が盛りだくさんだと言われているが、逆に、持ち帰ったものもいないのだそうだ」
「……え、歴史上では存在してんの?」
「うむ。存在している。その時の対応だが……」
全員が耳を傾けた。
「完全放置だそうだ」
そりゃそうでしょうね。
「今回はそれはできるのか?」
「無理でしょうね」
シュレイオが言った。
「理由を聞いても?」
「アースの存在地点の問題です。あのままあのエリアが使えないとなると、竜族領土に、月に白金貨4000万枚の損失が出ますので」
「どんだけ重要な場所なんだよ!」
「……いえ、まあ、私が交通網をしっかりとさせすぎたせいもあるのですがね。あの場所、かなり重要なのですよ」
要するに、放っておいても、根本的には問題ないが、何度も何度も迂回ルートを用いて物資を流通させる必要があるので、結果的には損失が出るとのこと。
「その放置していたところはどうなったんだ?」
ミチヤは再度アークヒルズに聞いた。
「滅んだな」
「容赦ないな。もうちょっとオブラートに包めよ」
「いや、アースの体内はダンジョンになっているのだが、そのダンジョンの中から勝手にモンスターが地上にわいて来るのだ。しかも、かなりレベルの高いモンスターがかなり出てくる」
「それを先に言え!」
最悪、この領土を捨てる必要が出てくるぞ。
「ダンジョンから湧いて出てくるモンスターのレベルはアベレージマックスだな」
「救いようがねえな!」
全部レベルカンストって意味じゃねえか。
「……ん?でも、やっぱり生物なんだから、生きる上で重要な部分もあるはずだよな」
「心臓の位置、私も知らんぞ」
なんか……キリがないな。
むしろ……その心臓って何でできているんだ?筋肉じゃねえよな。多分。筋肉的な何かだと思う。
だって、人間と同じ心臓で、マグマをポンプ式で動かせるわけないじゃん。
「結果的にどうするんだ?」
「ミチヤはどうすればいいと思うのだ?」
判断するの俺!?
「とにかく、やる前から諦めてたら話が進まないからな。どうにかする方針で話すけど……でも、あれはやっぱり生物ではあっても、モンスターだよな。だから、モンスターが生きることが出来ない条件を満たせば、倒す必要はないし、勝手に昇天するんだろ?」
「理論上はな」
「そうか……ん?なんか口の中に赤いものが見えるけど……」
ミチヤの呟きに、全員が振り向いた。
口の中に、確かに赤いものが……。
あ、これはアカン。
次の瞬間。今までとは比べ物にならない規模(当たり前だけど)の噴火レーザーが放出される。
ハルカが剣を構えなおした。
「バルゼノン。ステージ4に移行」
ハルカが持つ剣から膨大な魔力が放出される。
そして、それを真横に一閃した。
レーザーを一瞬分断しかけたが、あまり意味はないように見える。
あ、ヤバい!
「『アルカナスロット』……これだな」
春瀬は14番のカードを逆位置で置いた。
「『エラー・テンパランス』!」
タロットが一瞬光ったと思ったら、レーザーの規模が小さくなり、さらに、息切れしたかのように、アースが噴火をやめた。
「あの威力なら……『破壊神シヴァ』契約開始」
膨大な魔力を身にまとった風雅が、白く光る三つ又の槍を生み出して、それを構える。
「本来なら詠唱アリの方がいいけどな。行くぜ。『トリシューラ』!」
風雅が投げた槍は、手を離れた瞬間に三本に分裂すると、ちょうど三本の交差点とレーザーが交わるように直撃する。
その衝撃で、レーザーのすべてが消滅した。
「すごいな……おい、大丈夫か!」
二人ともすごい汗である。
どちらも、魔力と体力を大量に使うのだろう。
ミチヤの推測だが、アルカナの14番『節制』の逆位置の意味の中で、浪費と消耗の効果を起動することで、レーザーの威力が減少、アース本体が消耗と浪費がかけられたことで、噴火を続けることができなくなったと言ったところか。
風雅の破壊神シヴァ。これは、三つの都を破壊した槍『トリシューラ』を使う、ヒンドゥー神話に登場する存在である。この力を一時的に使うことが出来るのだろう。
「だが、もうアルカナの効果は続いて無いっぽいな……まずは耐えるか。話はそれからだ。まだ俺達は、アイツの敵対範囲にいるってことらしい」
ミチヤは刀を抜いた。
「さて、風雅、春瀬、大丈夫か?」
「まあなんとかな」
「自分の身を守れる程度にはね」
援護はするが……さて、これはじり貧になりそうだな。
どうすればいいのか、本気で考える必要がある。
とにかく、死んではどうにもならないので、防ぐことは最低限するか。




