第五十八話
「ちょっとヤバくないか?あれ」
「僕もそう思う」
荒川と春瀬が呟いた。
ハルカが持つ剣『バルゼノン』の、『飛翔能力付与』の効果で一気に飛んできた五人だが、その大きさに愕然としていた。
「む、あそこまで大きいのは初めて見る」
「ていうか、火山帝竜アース自体、そんな見るような奴じゃないけどな」
「そもそも、あんなのがたくさん出てきたら勘弁ですけどね」
ハルカとクロノスとアルスも苦笑している。
いや、ハルカは苦笑している雰囲気だったが。
「確か倒す方法って……」
「顔面にうまく攻撃を当てるしかないんだよなぁ」
春瀬は確認して、風雅が答えるが、ちょっと無謀っぽいと考えている。
というか、自分たちが邪魔だと考えていた。
「というか、アースがこっち向いてる」
「あ、本当だ」
口を開けた。
そして、噴火!
しかも三連発!
「フッ!」
ハルカがバルゼノンを一閃する。
で、一回しか剣を振っていないのに、三つの斬撃が飛翔して、ブレスを押し返していく。
そして、三つとも爆発した。
「あ……あんなに巨大はレーザーを……」
「マジかよ……」
次元が違う。まさしくそれだった。
というか、二人とも、ここに立っているだけでもかなりの精神を使っている。
精神力を高めることが出来るスキルを持っているからこそ立っているのだが、そうでなければ逃げ出していてもおかしくはないのだ。
「なんか、僕達が必要なのかどうかって感じになってきているような……」
「瀬戸、それをいうな。俺も考えていたところだから」
というか、ここまで大きい生物は恐竜くらいにしてほしい。
まあそもそも、恐竜だってアースほど大きくはないが。
恐竜だって、山には勝てないのだ。
「背中に火山が見えるけど、あれが一日に三回は噴火するんだな」
「む、かなり規模は大きい」
「しかも、重量がすさまじいからな。動くだけで恐ろしいほど被害が出る」
「自然災害以上に厄介ですからね」
というか、一体何を食べて生きているのだろうか。そこから不思議。
「アースって一体何を食べて生きているんだ?」
「何も食べていない。というより、何かを食べることができない」
切ない。
「……どうして?」
「体内があまりにも熱いから、体内の液体成分をマグマ状態にしないと全て蒸発する。飲み込まれた瞬間。マグマに入って骨まで溶けるから、栄養素とか、カロリーとか、考える前に全部溶ける」
おっそろしい。
「俺達五人で倒せるのか?」
「それ自体は可能」
よかった。
「あと、私が予測したわけじゃなかったけど、援軍もいるみたい」
「「え?」」
「気づいてなかったのか……」
「クロノス。そう言うのはやめなさい。彼らは次元結界に触れることはほとんどないのですから」
次元結界……。
「魔族が来ているのか?」
「私たちに対して敵意は感じない」
次の瞬間。さっきよりも太いレーザーが飛んでくる。
そして、それはかまいたちによって切断された。
飛んできた方向を見ると、黒い鎧の騎士がいた。
その横には、完全に無表情で黒い鎧を着た女性……いや、やや少女か。
「カルカロスとハーメルだったのか」
クロノスが呟いた。
「む、初対面もいるな。私は魔王親衛隊兼暗黒騎士団団長、カルカロスだ」
「その秘書、及びサポートを務めています。ハーメルです」
ハーメルが礼儀作法の手本のようなお辞儀をした。
「召喚勇者の瀬戸春瀬です」
「同じく荒川風雅だ」
「ふむ……」
カルカロスが二人を見る。
「なるほど、なかなか強そうだな。とはいっても、数か月前に見たミチヤと言う少年よりも、少々甘い部分を感じるが……」
自覚はしているので反論ができない。
「団長。とにかく、今は火山帝竜アースを討伐することを優先するべきです。私は問題ないのですが、団長には時間制限がありますから」
「それもそうか」
「そして、今回の件は、魔王様から直接言い渡された命令。失敗は減給につながりますから、しっかりしてくださいね」
「やっぱり余裕あるよな……そこまで給料を気にする人、魔族にはそんなにいないはずだが……」
「そう言う問題ではありません」
「まあいいがな……」
魔族領土ってどういう雰囲気なのだろうか。
二人は気になったが、あえて追求しないことにした。
「しかし、あんなに巨大なモンスター。簡単には倒せないだろう」
風雅が呟く。
「風雅様。諦めがいいことに関して、得に言うことはありませんが、邪魔だけはしないようにしてくださいね」
「ハーメル。お前は少し、オブレートに包むことを覚えろ」
「……オブレートってなんですか?」
「すまん。間違えた」
どっちが上だかわからんな。
「とにかく、今は倒すことに集中する」
ハルカが剣を構えなおす。
「しかし、ここまで巨大なのか……ミチヤは大丈夫なのか?」
「そばに竜王がいるので問題はないでしょう。それと、あなた達もあったことがあると思いますが、イーゼラー様もいらっしゃいますから、特に問題はないはずです」
「あの魔竜か」
まあ、どのような形であれ、援軍がいるというのは心強い。
「ただ、なんていうか、海道がいなくてよかったな」
「……それには同感だ」
春瀬の呟きに風雅は苦笑するしかなかった。




