第五十三話
次に出現した時にどうするかを考えていた時だった。
竜族の第一王女、第二王女。二人がさらわれたと聞いたのは。
「なんで……こう……面倒なことになるのかな……」
ミチヤは頭を抱えていた。
現状はすさまじくヤバい。竜王の精神状態もだが、そんなことはどうでもいいとしてヤバイ。
完全に想定外だった。
で、現在現場に来ているのだが……。
「この石像がバリアを生み出していたのか」
「そうみたい。今はもう機能を失っているけど、この石像が生み出しているバリアそのものはとっても強力。しかも、この石像からバリアが生成されているということを隠すことに関してもすさまじい性能」
ヨシュアが絶賛するほどの機能を持ったものだということは分かった。
「石像そのものの強度は?」
「かなり固いといえる。普通では傷つかないレベルのものだと思う。しかも、切断面もかなりきれいだから、多分。一撃で、傷口から察するに、神聖属性の技で斬られたものだと思う」
よく石像を見ただけで分かるよなぁ……。
感心している場合ではない。
「この石像。多分作ったのは竜王本人。それの隠蔽効果を全てかいくぐって、しかも、この石像を斬れる威力を生み出すとなると、出来る人は限られると思う。でも、理由がない」
「ということは……犯人はコマンディアか……」
「確定」
ヨシュアとミーティアだけをこの石像付近に連れてきているわけだが……さて、どうするかね。
「そう言えば、第二王女は神との交信が可能と言っていたな。第一王女……たしか、名前はシフルだったと思うが、どんな人なんだ?」
「会ったことがありますが……とにかく、魔法に関しては優れています」
竜人族であると言う事実が存在するいう時点で、『竜魔法』というカテゴリの魔法しか使えないはずなのだが、それでもすさまじいということなのか……よくわからん。
「体内で生成することが出来る魔力もかなり多く、戦場に立つことはないのですが、それでも、噂だけでも相当の実力者だったはずです。コマンディアとは言っても、彼女を捕らえることが出来るとは、私にも考えられませんが……」
「魔法抜きだとどうだ?」
「油断していると、首と体が永久の別れを告げることになります」
「よくわかった」
近接戦闘においても弱くはないようだ。
「……もしも、第二王女……たしかミリアだったと思うが、その子を人質に取られたりしたら?」
「……無力でしょうね……あの子は戦闘力があるとは言えませんから……まだ四歳ですし」
そんなもんだよなぁ。親があれだからな。遺伝子レベルで何かあってもおかしくはない。
「ミリアに関しては強引に納得できないわけではないが、シフルを捕らえたということは、魔力を必要としているということか?」
「かなり特殊な魔力になりますが……」
「確か、魔力が特殊であるがゆえに、竜魔法を使うことができて、逆に竜魔法以外を使えないんだったか……」
即時に発動できる魔法は限られてくるだろう。
どのみち、対策はしていくはずなので、警備が薄い時点で、捕らえられたのはある意味必然だ。
……悲しい話だが。
「まあ、とにかく、ここで調べられることは調べておくか」
中に入ることはできなかった。
竜王直下の調査隊が中でごちゃごちゃしているからである。
「……なぜ竜人族、しかも、王女を狙ったのか……それを考える必要はあると思うか?」
「……必要だとは思いますが、判断材料が少ないと思います」
ミーティアの言う通りである。
その時、ヨシュアが何かに気付いた。
「む、この魔力波の残り方は……アーティファクトの聖剣を使っている」
「そう言うのって残るものなのか?」
「あまり知られていないけど、残る。でも、本来なら残るほど魔力の扱いが雑だと、魔力を無駄に使うだけだし、技の発動にも時間がかかる。だから、残っていても少ないはず」
要するに……。
「この石像を斬った犯人は、『聖剣を所持している』ということと、『技の使用や魔力操作になれていない者』と言うことになる。と言うことか……うわ……心あたりになるやつっていうか、該当者が一人しかいない……」
しかも、都合よくこの町にいる必要がある。
確かに、コマンディアにもそう言った人材はいたかもしれないが、そうであるなら、某けんぢゃギルドのグランドマスターが街にいる状況でするなんてことはしないだろう。
要するに、普段は覇竜城にはいない人間なのだ。
「海道だな。そもそも、聖剣なんてめったに見つからないんだろ?」
「うん。アーティファクトはいろいろあるけど、その中でも聖剣は特に貴重な物。しかも、使用する条件もかなり多いから、誰にでも使えるものじゃない。あと、聖剣の所有資格は、召喚された勇者であることも含まれているという説がある」
聖剣そのものに意思が宿っていると考えていいだろう。
……ん?
「じゃあ……俺は『巻き込まれた青年』だから、聖剣は装備できないのか……」
「できなかった前例があるから、たぶんマスターでも無理」
ちょっとショックだ。
まあ、直剣よりも刀の方が好きだし、振りやすいしなれているので、使えないのはそれでどうでもいいのだが。
「これは面倒なことになったな……まさか、この石像を斬った犯人が海道とは……」
これは救いようがないぞ。
まあ、あのアホのことだ。誰かに騙されて斬ったとかそんな感じだろう。
かなり素晴らしい思考回路を持っているからな。もう面倒見切れん。でも見ないといけないのが異世界と言う世界だ。はっきり言って無謀である。いろんな意味で。
責任問題になったらどうするんだこれ。ハルカの首が普通に跳ぶぞ。
「いつまであのアホについて考えなきゃならん。荒川は最初の方で軌道修正できたけど、アイツの方はもう分からんぞ。王国でもさんざんやって、悪かったところちゃんと言ったのに……」
まあ、悩んでいても仕方ないのも事実。
さて、どうするべきなのか。
決まっているな。何かが起こる前に、全部解決する。
それしかないのだ。で、どうすればそれに行きつくのかさっぱりわからないのだからなおさらタチが悪いのである。
「やっぱり、海道はこの世界でも迷惑坊主なんだなぁ……少しは人の言うことを疑うとか、そう言ったことはせんのかアイツ」
できないわけではないだろう。だって人間なのだから。
いや、もう考えるのやめよう。
「コマンディアの行動の一番厄介なところは、まず、向こうが動かないとこちらが対応できないってところか……」
拠点の場所は分からないし、エルドラドはもうほぼ捨てているようなものだろう。
金稼ぎの方法だけは向こうも持っているみたいなので、その場所を変更すればいいだけの話だ。
しかも、ただでさえ面倒なのに、そこに魔族まで絡んでいるという……いい加減にしろ。
「とにかく、何が起こるかわからん。が、全てに対応しようとすると多分全部失敗するからな。何が起きても、被害は採取源にするように努めるしかない」
一体何を狙っているのだろうか……。全然わからん。
アーティファクトの作成。竜族の王女の誘拐。
これの先は……一体なんだ?
そして、コマンディアのトップは、一体……。




