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真名解放の奴隷使い  作者: レルクス
責任の方位磁石編
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第五話

 戦闘手段と言うものはいろいろあるが、イナーセルは大剣、フルーセは蹴りだろう。

 というか、フルーセ。一回牛を蹴ったのだが、文字通り地平線までぶっ飛ばしたので、馬車を外して取りに行かせた。

 そして、魔力が極端に多いだけで戦闘力皆無のミチヤと、力が弱いヨシュアだが……、


「マスター」

「どうした?」


 馬車で移動中、ヨシュアが話しかけてきた。

 ちなみに、イナーセルは雄叫びを上げながらモンスターを虐殺中である。


「これを見てほしい」

「ん?」


 PCの画面を見る。

 あ、余談だが、充電に関しては、ヨシュアが魔力を微弱な電力に変換できる機械(一応は魔法具になる)を作ったので全く問題ない。

 で、画面に映っていたのは、銃の亜種だった。

 いや、元祖と言うべきだろうか、火縄銃に似ている。


「これがうまくいかない」

「まあ、もとよりないもんな。その技術」


 文明レベルが低いからな。

 魔法や、乗ることのできるモンスターなどが多く存在する世界だ。

 火をおこすには魔法を使えばいいと考えているし、物を長距離で運ぶには飛竜を使えばいいと考えているのがこの世界だ。

 油などの燃料を使う思考もなく、推力を物理的に生み出して飛ぼうとも考えない。

 まあミチヤ視点からすれば、ファンタジー要素があるからこそいいものになっているが、実質的な文明レベルはヨーロッパの中世中盤だろう。

 なにしろ、電気という概念がないからな。さすがに雷を見ただけで神の力を使っているとかを考えてるわけではないが、それでも、文明レベルが高いとは言えない。


「これかぁ……たしか……こんな感じだったかな」


 流石に本物の銃を持ったことはないが、BB弾くらいならある。

 が、真面目にやっていたわけではないので、要素を繋げただけといった感じの時代遅れな感じに仕上がったのだが。


「ふむ……うん。これを元にすれば」


 ヨシュアの手の中でパーツが作られ、出来上がっていく。


「出来た。魔砲銃」


 見たところは拳銃だ。

 名前からして、魔力で弾を作ってそれを打ち出す物だろう。


「魔力で弾を作って打ち出すのか?」

「そう、魔力を流し込んで弾を作れる」

「それなら、魔力を俺らが入れるんじゃなくて、勝手に消費されるような感じで作ってくれないか?」

「む、たしかにそれの方が扱いやすい。マスターは賢い」

「どうも」


 二秒後。


「出来た」

「速いな……」


 で、ためしうちをすることになった。


「お、マスターか。なんか牛の大群が攻めてきてるぜ!」

「「……」」


 ミチヤとヨシュアは呆れた。

 ミチヤは一発撃ってみる。

 ふむ、反動が全くない。物理的にではなく魔法的に飛ばしているようだ。

 牛の顔面に直撃し……一撃で倒した。


「あ……」

「む……」

「いや、さっきのなんだよ……」


 フルーセは馬車の中の会話が聞こえていたので問題はなかったのだが、イナーセルは分かっていなかった。


「ちょっとした発明だよ」

「いや、まあ、そうなんだろうが……」


 その間もズバズバ斬りながら牛を食料に変えていくイナーセル。


「はぁ、もう突っ込むのは止めようか」

「そうだな。お互いに胃薬が必要になる」


 変な気分だった。

 で、昼飯の時間になった。

 ちなみに冷蔵庫を作りました。魔力で動きます。

 飯の内容だが、イナーセルとヨシュアは、ミチヤ特性のタレにつけていた肉を焼いて出しておけば普通にばくばく食べている。

 あと、イナーセルは酒好きだった。ジョッキに限界までそそいでおけばいっき飲みである。

 ヨシュアも飲んだ。いや、飲んではいないな。一回舐めたらダウンした。

 フルーセは雑食なのでなんでも食うが、馬としての好みなのか、甘味があって固いものを好む。ニンジンやリンゴ、あと、角砂糖なども食べるのだ。

 ちなみに、全員が冷凍庫で冷やしておいたバニラアイスにははまったようである。


「狩りの最中にこんなにいいものが食えるとは思ってなかったな」

「このデザート美味しい」

「フルーセまでアイスを好むとは予想外だったがな……」


 馬ってデザート食べるんだな。まあ。材料はあるから問題はないが。

 でも野菜は食べさせる。そこは譲らない。


「ふう、いい感じに腹ごしらえが出来たぜ」


 食った量、12キロか。オーガってこんなもんか?

 腹ごしらえでこんなに食われたら普通ならやっていられないが、まあ問題はない。

 フルーセの食事量が思ったより謙虚なものだったが、まあ、問題がないのならいいとしよう。

 午後もイナーセルが斬りまくってミチヤが撃ちまくって集めまくった。

 ヨシュアの銃は高性能なのだが、どんなに削っても魔力の消費量が桁違いなので、ミチヤにしか使えなかったのだが、まあ問題はない。


「そういやマスター。エルーサには、ダンジョンがあるって聞いたことがあるぜ」

「ダンジョン?」


 雰囲気はなかったが……。


「なんか25階層に別れている洞窟っぽい場所らしい。ただ、6層にアンデッド系のモンスターが出るらしいから、一気に突っ切る戦力がない場合は五層を広く狩りを続けているって話だ」

「アンデッドってそこまで厄介なのか……」


 なんかなめていたな。

 異世界に来てゲーム感覚でいることは間違っているとミチヤも思うが、多くのゲームでは、弱点属性にめっぽう弱いのが死霊系のモンスターだった。

 それがゲームではなく、実際のモンスターとなると話は変わってくるのだろう。

 まあ、仕方のないことだ。

 しかも、死霊系。スケルトンは別として、ゾンビの場合、人間のように生存本能(リミッター)が存在しないので、いつでも全力で動いて来る。これは面倒だ。


「アンデッドって思った以上に厄介なんだな……」

「多くの人間は、弱点として神聖属性が必要だって考えているからな。大怪我するもとになる」

「経験則なのか?」

「オーガは頑丈だから大怪我はしなかった」


 経験則なんだな。

 さて、そう考えるとどうしようか。


「ただ、倒せるようになれば結構稼げるらしいぜ」


 それはそうだろうな。神聖属性がないとたおせないのだ。いくらなんでも素材の供給が少ないだろう。


「例えば?」

「俺は手に入れたことはないが、ゾンビから手に入れた腐食液が、瓶一本(約100ミリリットル)で金貨1枚らしいな。質にもよるが」


 高いな。


「金貨一枚って……高すぎないか?」

「神聖属性は教会の最大の武器だ。なんか、回復魔法もゾンビに効くんじゃないかってだれかが試したらしいが、ゾンビもスケルトンもウィスプ(火の玉)も全部回復してしまうらしい」


 この世界では僧侶職も死霊系相手に無双できないのか。かなり残念だな。


「さらに言うなら、質のいい腐食液は即効性が高いからな。鉄だろうが皮膚だろうが、全部溶かせるらしいからな。あ、死霊系を神聖属性で倒した場合、ドロップアイテムをおとしてあとは消滅する感じだ」

「なるほど……ん?腐食液って、ゾンビのドロップアイテムなんだよな」

「そうだな」

「ていうことは、ゾンビはもともと、体内に持っている訳だよな」

「そうだな」

「てことは、武器でゾンビを斬った場合……」

「最悪は武器ロストだな」


 めんどくさいな……。


「なんか、銀で作られた武器とかってアンデッドに効いたりするって……」

「いや、あれは毒には強いんだ。でも、腐食液には弱いんだよ」


 何その分け方……。


「結局、教会に頼るしかないってことか」

「まあな」

「神聖属性ってどんな感じで付与してくれるんだ?」

「モンスターを10回程度斬るくらいの持続力で金貨20枚だったかな」


 割に合わねぇ。


「イナーセルってそのあたり詳しいんだな」

「これでも結構経験はあるからな」


 変に悲しい現実だ。


「マスター」

「ん?どうしたんだ。ヨシュア」

「これ」


 ヨシュアが見せてきたのはスタンプだった。

 いや、スタンプというのはヨシュアの中での認識方法だな。実質的に言えばハンコ程度の大きさである。


「魔力を入れて押せば神聖属性が付与される」

「厳密に効果を聞いても?」

「一回押せば一日は持続する。普通、神聖属性を付与すると武器に負担がかかるけど、そのデメリットは消しておいた。武器でなくても、手に甲に押しておけば、魔法を使うときに自動的に神聖属性がプラスされる。例を言うと、火属性を使うとき『聖火属性』になる」

「それじゃあ、この魔砲銃もか?」

「もち」


 ……教会の連中、泣くんじゃないか?


「正しデメリットがある」

「なんだ?」


 まあ、これだけ鬼畜なのだ。デメリットくらいはあるだろう。


「押す時にものすごく魔力を使う」

「問題ないな」


 即答した。

 なにせ、ミチヤの魔力生成量はすさまじいのだ。

 さて、教会泣かせで行ってみますか。ダンジョン。

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