第四十四話
「さて、全員集まったことだし、色々報告するか」
覇竜城下町の宿屋にて、少々ひろめの部屋をとって八人と三匹が集まっていた。
……八人?
「なんでいるの?」
ミチヤは呟く。
そう、シュレイオがいたのだ。
「私も混ぜてもらおうと思いまして」
「ま、いいよ。いつか一緒にはなそうと思ってたし」
シュレイオの知識が必要になってくるのも必然である。
「……自己紹介は省いてさっさと話を進めようか。まず、エルドラドの店にいって分かったことだが、ポーションの原液にしても、魔法具の回路にしても、ひとつの『なにか』を手に入れたことで、あそこまで発展している感じだな。値段がやや高いのと、消耗品であることが重なって、中級~上級あてに売ってるからすさまじい数になっている。で、シュレイオあたりは、この何かが『クサい』って感じてるってことだろ」
「その素材はこれ」
ヨシュアが試験管を一本取り出す。
それには、白と赤の中間くらいの色で、ちょっと発光している液体が入っている。
「材料はまだ分からないけど、これがそのポーションたちに使われている原液」
「やっぱりもう分解し終わってたんだな」
ヨシュアはうなずいた。
「とりあえず、一本はシュレイオに渡しておくか」
「ありがとうございます」
一本渡した。
「じゃあ、次はイナーセル」
「俺か。俺は武器、防具屋に行ってきたぜ。三年くらい前に、この町出身の商人にあって話をしたことがあるんだが、その時と比べて、高ランクの武器や防具が増えていた。しかも、値段もかなり下がっている感じだったぜ」
「ふむ、まあ、エルドラドの出現によってダンジョンに挑みやすくなったから、供給量が上がって、結果的に価格競争になったんだろうな。状況はちょっと違うがよくある話だ」
価格競争なんていうのは、原因はたくさんあるだろうが、根本的に言えば供給量の増加である。
「次、タイダロス」
「うむ、私の嗅覚で捉えた植物は、全て今までに確認されていたものだった」
「なるほど、実はちょっと、本当にこれだけがクサい原因なのか確信できなかったが、これでもう迷う必要はないな」
これで他にもあったら誘導されまくって混乱するだけだからな。
「次、テラリア」
「私は今日とらえて騎士団に渡した盗賊や暗殺者について調べたが、これらは、『コマンディア』という組織が裏で率いていたらしい。暗殺関係のチームに多数のパイプがある組織だ」
「まあ、この町に来るまでに盗賊や暗殺者はたくさんいたが、目的が同じって言うだけで指揮系統がそれぞれ違っていたからな。所持していた魔法具から考えると、エルドラドも、コマンディアの運営組織である可能性も高いか」
エルドラド単体では無理だと思っていたが、そう言うことか。
「ミラルド」
今回はミラルドだけは特に指示をしていない。聴力に優れているミラルドは、その辺を歩かせておくだけで様々な情報を得ることができるからだ。
「うん。私はね。ミュージックホールにいってたんだよ」
……それでは本当の意味で自由行動じゃないか。
「色んな人がいたよ。食べ物も美味しかったし、無料だった。あと、ジャズって言うのかな?楽器で演奏しているのがすごく楽しそうだった」
「ほう……」
「確か、五年ほど前からそのような物がありましたね」
「なるほど」
「あとね。ホールのちょっと隅のほうに、水晶玉みたいなものをもって椅子に座っている占い師みたいな人がいて、お客さんが水晶に触れると、透明だったのが色が変わるんだよ。確か、赤、緑、黄色、青の四色になっていたように見えたけど、この色で、『カリュセア』『グリモーア』『テルアモア』『ギルガゾア』の四つのうち、誰からの加護があるのか分かるみたいだよ。占った人はアクセサリーをくれるんだ」
「アクセサリー?」
「うん。私は赤色で、珍しい色ではなかったんだけど、これをくれたよ」
ミラルドは細かく装飾が施された純銀のアクセサリーを手首に巻き付けていた。
見た感じ、かなり高額だろう。占っただけで渡すような、そんな品には見えないが。
「ところで、カリュセア、グリモーア、テルアモア、ギルガゾアってなんだ?」
「うーん……よくわかんない」
おいおい。
シュレイオが答えた。
「神はこの世界に住んでいますが、そうではない、この大地にいきる権利を持たない神のことですね、四人いるとされています。カリュセアという神は、確かに多くのものに加護を授けているとされています。宗教にも関連する話ですから、私の専門ではありませんが」
「そうか……なんか、占い師が的中させているとは思えないんだよなぁ。だって、普通に考えて宗教国家が黙っていないだろ」
「追放された人かもしれませんね」
「まあいいけどな」
「あとね。このアクセサリーを持っているとはいることの出来る部屋があるんだよ」
「入ったのか?」
「うん。楽しそうなホールとは違って静かな感じで、中心に注目する感じで円形になるように座席があったんだ。途中で眠くなっちゃって寝たんだけど。でも、席ごとについてるテーブルに運ばれてきた料理も結句美味しかったよ。ご主人様の血ほどじゃなかったけど」
「それはどういう基準なんだ?」
しかし、アクセサリーを持っていると入ることの出来る部屋か……。
「関係があるかどうかは別として、その水晶で、アクセサリーを渡して目印にしている可能性も考えられる」
「その可能性はありますね」
テラリアの呟きにミーティアが頷く。
「起きたときにちょっと立ちくらみがしたけど、でも、なんかスッキリしたかな」
「そうか」
「でも、あのあと、ちょっと疲れやすかったかな。今はもう問題ないけど」
「ふむ……」
まあ、そこはあとで考えるとしよう。
「シュレイオは何かあるか?」
「これはまだアークヒルズ様にも報告していない事なのですが……」
シュレイオは様々な問題を水面下で解決することも多いため、竜王であるアークヒルズも知らないこともあるのだそうだ。
「実は四年ほど前から、竜族領土内で、私にもよくわからないことがおきているのです」
「よくわからないこと?」
「はい、外傷も毒の形跡もない、なんと言いますか、『綺麗な死体』が発見されるようになったのです」
「綺麗な死体ねぇ」
確かに、明らかに普通ではない。
モンスターと戦った場合なら、何か傷はあるだろうし、毒でも、何かしら形跡は残る。
「しかも、その被害者も、種族、職業ともに統一性がないのです」
「統一性がない。無差別なのか?」
「無差別とも言えますね」
「たしかによくわからんな」
いったいどういうことなのだろうか。
「さすがによくわからないな。これは」
「マスターでもわからないことがあるんだな」
「イナーセル。君は俺をなんだと思っているんだ?」
「探偵」
「ワケわからん」
探偵は趣味ではない。
「そう言えば、シュレイオはグランドマスターのハルカのクエスト内容はしっかり理解しているのか?」
「勿論です。今回の件は、判明次第、グランドマスターに報告することになっています」
「竜人族としてはそれで大丈夫なのか?」
「はい。そもそもこの問題は、竜族領土だけの話ではないのです」
「人族領土にいたときは気付かなかったが、いろんな種族でこの問題があるのか?」
「厳密に言いますと、エルドラドの商売範囲の話ですね」
竜族領土ではここ数年で様々な変化があったが、少なからずあるようである。
「エルドラドの本部が竜族領土に存在するという状況なので、今はこの場所にきてもらっている感じです」
「なるほど。判断を冒険者ギルドに委ねているのは、他種族の領土にも明確な権力をグランドマスターが持っているからだな」
「そういうことです」
しかし、何をもとにしているのか知らないが、この液体。かなり万能と言うことになる。
「ただ、ポーションだけで世界営業しているみたいなもんだろ?そんなことが可能なのか?」
「多分、ポーションの味が原因だと思う」
ヨシュアが呟く。
「ポーションって不味いのか?」
「そうだな。良薬は口に苦しとはよくいったものだ」
タイダロスの呟きに全員が頷く。
「飲むのに抵抗がなくなると言うことだから、それでも中級、上級が客層になるけど、需要そのものはあると思う」
「種族ごとに需要は違うと思うが……ああなるほど、そもそも、これは『原液』だから、実質何にでも出来るのか」
「そういうことになる」
種族ごとに違うらしい。
竜族では、魔力量回復。
オーガでは筋力強化。
ドワーフでは集中力強化。
天使では美容効果など。
吸血鬼では筋力強化(しっかり噛みつく、飛翔目的)。
ベアーでは筋力増加。
エルフでは魔力量増加。
ミチヤは思う。
シンプル・イズ・ベストというか、脳筋というか、何なんだろうね。あと、美容効果のあるポーションってあるんだ。




