第四十一話
「さて、なんとか近隣の村についたな」
思えばいろいろあるものだが、数ヶ月ほど前にこのアムネシアに勇者召喚されて(職業を考えれば召喚に巻き込まれたという方が正しいだろうが)、王国内で東奔西走して勇者たちの尻拭いをして、今度は帝国に行ってダンジョンに潜り込んでクリアして(ダンジョンに言っている間も、勇者、特に海道の『思えばこれは面倒なことを引き起こしている』ということがあったらしいが)、現在、竜族の第二王女の護衛を務めている訳だ。
目的はもうひとつあるけど。
ミチヤは胃のあたりを抑えながらそう言った。
胃潰瘍になりそうな感じで結構限界だった。
遠目からばっちり見ているのだが、もうほんと、竜族領土に入って暗殺者が多いのなんのって。
ミチヤは事前に、『威圧』『眼光』『殺意虚像』の三つのスキルの『合成進化スキル』である『覇気』を取得していたので、迫りくる暗殺者を片っ端から気絶させていき、縛って後部馬車に放りこむという作業を繰り返している。
ちなみに、あれからファセーラであるルークも、フルーセと同じような感じで、ミチヤに憑依可能になった。
ミチヤと言う人間から色素が消えて、真っ白い羽が出現。さらに、腕力が超絶強化された感じであった。
まあその話が後々するとして……。
ミチヤはすでに倒すことすら億劫になっていたのだ。
野郎が三十人くらいいたからな。なんて悲しい現実。
だが、村で待機していたのであろう竜人族のものがいた。
竜人族の特徴として、少々ヤギっぽい角があるのだが、その竜人族にも当然あった。
モデルとしてもやっていけそうな感じの美形だった。
まあ、燕尾服もにあっていたけど。
「……なあ、さっきからシュレイオ。時々こっちを見てるよな」
「おそらく、フルーセが信号を出しているのでしょう。シュレイオなら、それで判断出来るはずです」
「初対面でよくそんなに信用できるよなぁ」
イナーセルが呟く。
「セアルハーグの希少種を仲間にしているからだと思いますが……」
「そんなもんなのか?」
「そんなものです」
顔パス可能って楽でいいね。
しかし、今のままではどうにもならない。
シュレイオも近くにいることだし、しばらくは任せて大丈夫だろう。
ミチヤたちも降りて休むのだった。
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シュレイオは竜王アークヒルズの直属の執事である。
五億年もの間、アークヒルズ様。さらにはその家族に仕えてきたものだ。
今回、竜族の第二王女であるミリア様が人族領土内にいると言う情報があった時は驚きました。
冒険者ギルドグランドマスターであるハルカという少女と、頂上会議で顔見知りだったこともあり、即刻手紙を出して、ついでに懸念していた『エルドラド』という商業組織についての情報を渡して出しておいた。
今こうしてみることができて本当に安心しました。
アークヒルズ様は親バ……いえ、家族の安全と幸せのことを第一に考えられる方なので、かなり体調を崩されていたので、これでいつも通りになるでしょう。
ただ、少々予想外なことになっています。
ハルカからの書類では、人族をリーダーにして、様々な種族が混合したパーティー。正しくは人族以外は奴隷のようですが、まあそれは些細なことです。
さらには、セアルハーグの希少種、そして、三千万年ほど前に絶滅してしまった『ファセーラ』を連れているという、竜人族としては興味深い内容だったのですが、村に来たのが、よく見る馬と三人の勇者だったのです。
……奥の方に銀色の毛並みが見え、そして、見えたころにセアルハーグが信号を送ってきました。
意味するところは『本来なら自分たちだが、今は彼らが任務中である』とのこと。
さらには『戦力的に少々不安なところがあるので気を付けるように』とのこと。
戦力的に不安でここまで大丈夫だったのか気になりましたが、スキル『覇気』の使用痕跡が馬車の中から漂っていたのでそれで納得しておきましょう。
……大食いが多数いるということで、もてなすものを大量にアイテムポーチに入れてきたのですが、今回は必要ないようです。
今は勇者たちについてですね。
まず、聖剣を持つ、職業『勇者』の少年。海道正哉。
なかなか正義感の強い性格ですね。悪く言えばまだまだ子供ですが。
ただ、『臨界覚醒』と『限界突破』を使えるようですね。
しかも、限界突破に関しては、その最終派生スキルである『縛鎖崩壊』すらも取得している。確か、ステータス十倍だったはずですね。
彼らのゴールが何なのかは私も知りませんが、たいていのことは困らないでしょう。
人柄もいいですしね。
……影の苦労人がいることは否定できませんが。
次に、黒川零士。
暗殺者のような恰好をした勇者で、ダガーを持っている。
スキル的には気配を隠すのに適していますが、本人の欲望が強すぎて気配を消せるとは思えません。
自分を低く見ることはオススメしない主義の私ですが、彼の場合が自分を高く見すぎているように見えます。確かに、ステータスだけを見れば、優秀な部分が無いわけではありません。
しかし、他人に威張れるほどではないでしょう。
……結論。今後に期待。
最後に、西塔桃香。
火属性魔法が得意という話ですね。赤い宝石のついた杖を持っています。
ただ、私は鑑定眼を使えますので、別に触れなくてもアイテムの鑑定ができるのですが、彼女が自分を評価しているその強さは、ほとんどが杖の効果に頼っているといえます。残念ですが。
性格は……かなり自分勝手な部分が多そうです。
これはよくあるタイプですね。
結論を言います。
三人とも、夢を見ている子供です。
まあ確かに、ミリア様が笑顔になっているのでそれは私としては最高のことです。
しかし。これからのことについてはいろいろと不安です。
「さて、もうそろそろ覇竜城に向けて出発しましょう」
午後になって、もう彼らとは十分話しました。
遠くの方で、フルーセが飛ぶ準備をしているのが分かります。
さて、移動中、話を聞いていると、魔王を倒し、元の世界に帰ることが出来るということで、彼らは頑張っているようなのです。
まあそもそも、遠くで何かが動く気配があることすら感知できないのでは、魔王バスタードを倒せませんし、たどり着くこともできませんが。
思えば、二年前にエルフで召喚された少女は強かった。
その強さが、恋から来ていることは分かります。
まあ、勝てなかったようですが、バスタードのやり方を考えれば今も生きているでしょう。
まあそんなことはいいのですが、彼らは知らないようですね。異世界との扉が開いているのは、魔王が存在しているときだけなのだということを。
まあ、今言っても話が進みません。出発しましょう。
「そう言えば、シュレイオは何年、竜王に仕えているんだ?」
零士さんが聞いてきました。
「そうですね。五億年ほどだと思います」
「ご……五億年……」
そう言えば、人族の平均寿命は、100歳を超えないのでしたね。
「竜族や竜人族は寿命が長いのです。まあ、それでも私は長い方だと思いますが」
一万年もすればベテランと言う場合もなかったわけでもないですしね。
「大切なんですね」
「ええ、とても」
それに、命の恩人でもあります。一生をかけても返せないほど……と思っているのは私だけでしょうが。
「竜族の領土ってどんな場所なの?」
「そうですね……ダンジョンはありますし、娯楽も無いわけではありませんが、楽しいと思うかどうかは人によって違うでしょう。生活レベルは低くありませんが、文明レベルはそこまで高くもないと言った感じでしょうか。一応、昔に勇者召喚で渡ってきた『二ホン』と言う国の文明を用いていますから、皆さんも住みにくいということはないと思いますよ」
「ふーん」
そんな感じで話していますが……さてどうなるのやら。
などと考えていて、あっさりと覇竜城に到着したのですから妙なものです。
顔も知らぬ少年。ミチヤには感謝ですね。
……ただ、一々『覇気』を全力で使うのはやめていただきたい。
私、気配とか殺気とか、そう言うのに敏感なので。




