第四話
となりの町、『エルーサ』に到着。
門で兵士が確認しているのが分かる。
結構並んでいるな。
商人だったり、武器を持った冒険者だったり、馬車に乗った貴族だったり、様々だ。
「確認する。馬車の中を見せてもらおうか」
「どうぞ」
兵士が馬車の中をみたあと、こちらを見て呟いた。
「……君は料理人なのか?」
「いえ、決してそんなことはありません」
流石に食料を詰めすぎたか。
しかも、調味料や調理器具もかなり多い。
料理人と間違えられてもしかたがないだろう。
違うけどな。
「ふむ、特に怪しいものはないな。通っていいぞ」
入場料とかは無いようだ。
「む、よく見れば、素晴らしい馬竜だな」
「どうもです」
「馬竜は人族になつきにくいと聞いていたが……」
「まあ、全くというものでもないでしょう。それでは、通ります」
「うむ」
門を潜って町に入る。
ふむ、普通だ。レンガで作られた建物が多い。
「で、マスター。この町でどうするんだ?」
「そうだな……戦力も馬車もあるからこれといってほしいものはないが……」
「それもそうだがな……」
魔法をうまく使うことができるメンバーがいない。
まあ、最悪魔法具でもいいのだが、その技術を持っているものが今はいないのだ。
「奴隷商にでも行くか」
「今度はなんだ?」
「魔法具を扱うのに優れている人材を探す。まあ、奴隷になっているかは別だが、最悪、能力が低くても問題はないからな」
「そういう意味か」
「魔法具を使って、教会でしてくれるような付与が可能になるのなら、アンデッドも怖くないしな」
「相当難しいと思うけどな」
「まあ、他にも狙いはあるが……」
さて、裏路地探索。
お、よくわからないネオンサイン。発見。
「こんにちわー」
けっこう軽いノリで入った。
「いらっしゃいませ。む、大剣使いのオーガの奴隷。ミチヤ様ですね」
奴隷の登録の際に名前は教えたが……。
「俺らよりも早いんだな。情報」
「伝書鳩が優秀でして、それで、今日はどういったようで?」
「技術者といえばいいかな。金貨四枚で見繕ってくれ。事情は問わない」
「畏まりました」
店員は奥に消えていった。
「前もこんな感じだったのか?」
「ああ、そうなんだけど……」
「どうした?」
「店員の顔、同じのような気がするんだが……」
「そうだったか?」
あ、連れてきた。
少女だった。種族は……ドワーフかな。
顔は完全な無表情。整ってはいるのでなんか人形っぽいな。
一番の特徴は、右目が緑、左目が青のオッドアイだということだ。
人族基準で見れば12歳ほどだが、胸はそれなりにあった。
「こちらでどうでしょう」
「マスター、ドワーフは種族的に生産することに優れているぜ。ただ、オッドアイは才能が低いっていうのは世間の認識らしい」
イナーセルは色々と含んだ言い方だが、ミチヤならなんとかできると思っているのだろう。
「ふむ。彼女にしよう」
「それでは書類を、こちらになります」
とりあえず書き込んでおいて、契約完了。
書類では、名前は『ヨシュア』と書かれている。
金貨四枚を渡した。
「うん、あ、そうだ。ラシェスタの関係で、工具を扱っているところってあるか?」
「マスター、なんかはまったな」
「いいじゃん別に」
店員は素早く教えてくれた。
その時の情報料金はなかった。
ラシェスタは内部競争は存在しない組織のようだ。
そして、その店でも工具を買って、自由な感じの広場にいった。
「さて、まずはなんか食うか」
「あ、マスター。ドワーフはバリバリの肉食だぜ。しかも、食べても太らない体質だ」
「……」
まあ、いいとしよう。
料理なんぞパッと終わらせる。
今回は角煮である。
「俺は骨付き肉がよかったんだが……まあいいか」
イナーセルはばくばく食べ始める。
その様子を見たあと、ためらっているのがバカらしくなったのか、ヨシュアも角煮を頬張った。
次の瞬間、顔は無表情のままだったが、耳をピンッとたてて食べるスピードが上昇する。
ヨシュアは思ったより食う方だったな。
ちなみにフルーセはリンゴを食べている。
そして食事後。
「さて、で、ヨシュア。まず君にいっておくことかあるな」
「?」
「一言だけだがな、『ペルーカ』」
次の瞬間、ヨシュアのそばに魔方陣が出現し、それらがすべて砕け散った。
ヨシュアは何が起こったのか分からないようだが、まあ今はいいとしよう。
「さて、ヨシュア。君は、どこまでできるんだ?」
「む……今までは武器はほとんど直せてた」
普通だ。
「まあ、今はそんなもんでもいいけどな」
「確かに」
イナーセルは武器がなくても強いし、フルーセがいるのでどうにかなると思うが、拳が武器でもないのに両手が空いているというのは少々やりにくい部分はある。
「さて、要らないものを換金するか」
「食料以外じゃね?」
「そう……なのか?」
まあとにかく商店街にいった。
なかなか色々とあるな。
あと、ヨシュアがソワソワしている。
「どうかしたのか?」
「不思議な感じがする。今までは全然分からなかったのに、武器、防具、道具の詳しい構造がよくわかる。魔法具も、見ただけで構造と使い方がわかる」
真名をしることが何かしらの『解放』だとするなら、おそらく、これが本来のヨシュアなのだろう。
もとよりそういう種族なのもあるとおもうが、まあ、悪い話ではない。
食料と魔石以外のほとんどのものを売る。
ヨシュアがいうには、いくら素材があっても、魔石がなければ魔法具は作れないらしい。
とまあ、そんな感じで。売った。
金額は銀貨84枚だった。
ちなみにだが、銅貨、銀貨、金貨、白金貨の順であり、それぞれが百枚ずつでひとつ上のものになると考えればいい。
「あとはガラクタでも集めておこうぜ」
「そうだな」
魔法具を作るにしても、魔石以外に素材は必要だ。
「フルーセは多少重くても問題はないから集めることに反対はないが、一々荷車を作るのはなぁ」
「それなら私が万全の状態にする」
「ああ、そうだな。任せる」
どんな風に作ってくれるのだろうか。
まあいいのだが。
----------------------------------
次の日。
フルーセにひかせていた馬車の後ろに荷車があった。
しかし、後ろ側に魔方陣があったのだ。
「ヨシュア。これは何だ?」
「魔力を流し込むことで荷車の数を変更できるようにした」
訳分からねぇ。
まあ、すごくなったのは分かるのだが、しかしなぁ。
「こりゃすごいな」
イナーセルも唖然としている。
引っ張っているフルーセも、なかなかいいものを得たような顔つきだった。よくわからないが。
しかし、いろんな意味で面倒な部分は減ったし、荷車を置いておくこともあったりした際の料金とかも完全になくなったも同然だ。
そういう意味ではかなり節約につながる。多少多くてもフルーセなら引っ張れると思うが、長かったらひかせるのに何となく抵抗があるし、襲われた時に壊されたらまたはらうことになるからな。
あとは……、
「ヨシュア。いい仕事をしたぞ」
「なぜかよくわかりやすくなっている。しかもマスターは料理がうまい。最高」
「まぁ……いいことなんだろうが、すさまじいなこれは」
とにかく、魔方陣そのものは隠しておこうか。こんなものを堂々と見せていたらやっていられない。
さて、どうするか。
「さて、これからどうするか」
「マスターって結構ノープランだよな」
「二手先三手先は予測しているから問題ない」
「一手先は?」
「あんまり考えていないな」
行き当たりばったりと変わらないじゃないか。とイナーセルは思ったが、あえて言わなかった。
「そういや、ドワーフは能力には優れているが、紙とペンがあった方がいいって聞いたことがあるが……」
「そうなのか、と言うか何で知ってる?」
「俺の故郷には武器を作ったり修理したりってことでドワーフがよくいたんだよ。オーガとドワーフは互いのデメリットを消しあえる最高の組み合わせだって親父も言ってたぜ」
なるほど、確かに武器を振り回すオーガと、武器や防具を生み出すドワーフ。相性としては抜群だろう。
「紙とペンね……そう言えば、今のヨシュアは、見た道具の構造や使い方が分かるんだよな」
「わかる」
「それなら、これはどうだ?」
ミチヤが取り出したのは、ノートPCだった。
異世界の科学の産物だが、もしかしたらと思って昨日の夜に作っておいたのである。
作れるミチヤもたいがいだが、父親がPC&スマホのパーツの制作会社の開発課長であり、母親がプログラマーなので、こういったことは強いのだ。
ミチヤ自身もそう言ったことに関する適性があったというか、両親のスキルを脅威的なスピードで習得していったので、自宅勤務である母親の仕事を手伝ったり、いろいろ分解したりしてスキルを磨いていた。
PCを作れるからと言うわけではないが、携帯ゲーム機やスマホなどの電子機器、高性能の家電、本気を出せば人工衛星のパーツも作れる。
ただし、プログラムを組むことはできるが、それを活用する思考回路が乏しいので、宝の持ち腐れとよく言われるのが現状であった。というか両親によく言われる。
「これはすごい」
ヨシュアは早速はまったようで、PCに飛びついて、製画ソフトや計算ソフトなどのプログラムを立ち上げて操作し始めた。
「なんていうか、すごいんだな。マスターって」
「今更だな」
フルーセももはやあきれている。
「ふむ、これはいい。境地に達することができそう。マスター。感謝する」
「別にもうひとつ作れるからそれは自由に使っていい。まあ、面白いものができたら言ってくれ」
「わかった」
とまあこんな感じで、新しい仲間が出来たのである。




