表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真名解放の奴隷使い  作者: レルクス
責任の方位磁石編
33/200

第三十三話

 ザナークル王国、ザウスフィード帝国、アミュレット法国。

 この三つの国の丁度真ん中、重要な関所がある。

 その地下には、ある重要な会議室があった。

 円卓で、椅子は四つ。

 一つには、ザウスフィード帝国皇帝、『クロノス・S・ザウスフィード』が座っている。

 右には老人が、左には眼鏡をかけた青年が座っていた。

 クロノスが、もうそろそろ定刻だな、と考えたときだった。

 ガチャリ。という音が聞こえて、少女が入ってくる。

 眠そうな顔で、青い髪をゆらす少女だ。その横を服をきた子豚が歩いている。

 少女は今にも眠りそうな顔で、席に座った。


「全員揃ったな」


 クロノスが言うと、全員がうなずいた。


「それでは、会議を始めようか」

「そうですね。この雰囲気だと、聖刻印も王国に渡ったようですし」


 眼鏡の青年が答える。

 身長はそこそこ高い。クロノスよりは低かったが。

 法衣を着ており、宗教、もしくは神官であることはよくわかる。

 名前は『アルス・ゼハードラム』

 アミュレット法国の教皇である。

 魔法、それも、『神聖魔法』においては並ぶものがいないほどの実力。本来、神聖魔法は天使族が得意なカテゴリーなのだが、その天使族の王を、僅差で上回る実力だ。

 ニコニコしているが、本心からなのかどうかよくわからない感じである。


「そうじゃのう。小さな体でよくやりよるわい」


 老人が小さく笑う。

 かなり高齢のようにも見えるが、ローブでおさえているだけでオーラはすさまじい。

 地味な感じだが、よくみると恐ろしいほど高ランクの装備だとわかる。

 名前は、『サベイジ・ロードル・ザナークル』

 ザナークル王国の現国王。

 現在は孫に国王代理を任せており、サベイジが本来の全権保持者である。まあ、任せている期間、ものすごく長いのだが。

 召喚魔法を権威であり、『騎士系統』にいたっては世界最高峰だ。

 一人で軍隊を形成できるほどの実力である。

 本人も、老人であることを捨てているかのように強い。

 が、体力は理不尽ではない。

 良くも悪くも変なじいさんだ。


「……む」


 少女は親指を立てて右手を出しながら返事をする。

 本心で何を言っているのか全く不明だ。

 名前は『ハルカ』。村人出身なので姓はない。

 十四歳にして、冒険者ギルドの最高責任者にして最高戦力である『グランドマスター』の座についている。

 十四歳であることを考えると異常なことだが、彼女が所有する銀色の長剣がまさしくチートアイテムなのだ。と言っておこう。


「さて、まずは近辺報告だな」


 クロノスが最初にいった。


「まず、ガベルスネーク三万トンの確保に成功した」

「ほう……」


 アルスは興味深そうな顔をして、サベイジは小さく笑う。

 ハルカは首を傾げる。変だな。結構重要なプロジェクトだった筈だが。

 まあ、本人は忙しい身だからな。仕方がないと言えば仕方がない……のか?


「と言うことは、あのプロジェクトを進めることができると言うことじゃのう」

「そうだ」


 まあ、ハルカは今は覚えてなくてもいいか。とクロノスは勝手に納得した。

 間違って覚えることはない代わりに忘れることがよくあるからな……。

 なぜかペットの子豚のほうが覚えている場合も多い。


「数十年規模で時間がかかると思っていましたが……まあいいでしょう」


 ガベルスネークを倒せないと言う意味ではなく、運搬における品質の問題である。


「それでは次は私から」


 次はアルスだ。


「ダルクオーム様から、『極宝聖銀(きょくほうせいぎん)』を十個。得ることが出来ました」


 極聖銀の最高ランクだ。

 ちなみに、十個とは言っても、一つで全身に纏うことができるプレートアーマー+武器+盾を作れるくらい大きいとされている。


「と言うことは、『霊王石』の魔力の完全供給に成功したのか?」


 霊王石。

 アムネシアには、『魔結晶』というアイテムがある。

 簡単に言えば、魔力が全くない魔石といった感じである。

 大きさによって許容量は異なるうえに、製造方法も面倒だが、魔石との大きな違いは、魔石と比べて魔力を抜き取る作業が格段に楽だということだ。

 魔法具を動かすための動力は無論魔力だが、形状の異なる魔石と違って形状も自由に設定できるため、カードリッジとして役に立つ。

 魔石には魔力を入れることはできないが、魔結晶は入れることが出来るのだ。

 帝国でも、魔法具を動かすための魔力を溜め込んでおく物質として生産されている。

 魔石は専用の機械を使わないと魔力を取り出しにくい上に魔力を入れることが出来ないので、使い勝手が悪い。

 専門的に修行すれば数ヵ月で子供でも作ることが出来るものだ。帝国にニートはいないが、それはそういう理由である。

 霊王石は、そんな魔結晶の最上級ランク。

 天恵神ダルクオームが作り出したもので、通常、一般的に使われる魔結晶の数億倍の許容量を誇る。

 ダルクオームは、スキルは強いが魔力の量は神のなかでは少ない。貢ぎ物はだすにはだすが、そのほとんどは魔力を渡すことになっている。


「ええ、実はとある人物を発見しましてね。その人物の魔力量が恐ろしいほどあったのですよ。かれの生活環境のなかに、強制的に魔力を抜き取れる魔結晶をあちこちにしかけたのです。丁度、一ヶ月ほど滞在していた町がありましたので」

「それは魔力泥棒なのではないかのう……」

「いえ、一応、色々と隠れて支援はしておきましたので、その対価ですよ」

「その人物は……ミチヤなのではないか?奴隷をたくさんつれている」


 クロノスの言葉にアルスは頬をピクッと動かした。


「ご存じで?」

「ガベルスネーク収集の貢献者だ」

「お金、足りているのですか?」

「ラシェスタのほうの部下が色々とな。まあ結果的に白金貨六千枚分使わずにすんだ」

「貴方も人のことを言えないじゃないですか」

「ブラックカードを渡したからな。それでチャラだ」


 三人の心境としては『ゲスの極み(ですね)(じゃのう)』といった感じだったが。クロノス本人はどこふく風である。

 まあ、クロノスとしても、価値的に言えば、ラシェスタのブラックカードを渡した程度ではすまないことは理解している。が、商売人でもあるのだ。うまい話には乗っていくのは当然である。本人にとっては。


「次はワシじゃな。数々の周辺国家の雰囲気じゃが、特に気になる部分はなかったとおもうぞ。まあ、ワシの孫が随分と税金を高くしているようじゃがな」


 召喚魔法が得意。しかも、戦力においては騎士系統が凄まじいが、本人の魔力がつきない限り、召喚兵士の活動可能距離に限度もないため、暗殺者や情報屋など、幅広く出来る。

 王国ではわざと、魔石を重要視していないが、これは、無駄に消費量の多い召喚騎士の維持のためである。

 ただ、税金に関してだが……いいのか?それ。


「大丈夫なのですか?それは」

「一応、召喚した勇者がなんとかしたようじゃ。今は軌道にのっておる。あと数年はもつじゃろ」


 他人事のようによく言うなこの爺さんは。

 まあ、いざとなれば彼が戻ればいいだけの話なのである。

 老人をいたわる?老人だが体力年齢は二十代後半だ。ただし平均。


「そのミチヤという少年。恐らくじゃが、国にたいして貢献してくれておるようじゃしな。まあ、特に言うことはないわい」


 ミチヤは実質、人族最高峰の三つの国で大きく貢献していることになる。

 本人が知るところは王国だけだろう。ラシェスタが帝国皇帝直轄だとは知らないはずだ……しらないよね?

 ただ、ミチヤが連れているドワーフは優秀なはずだ。誰かが魔力を回収しているかもしれないことくらいは知っているかもしれない。

 まあ……別にバレてもいいんだけどな。コンタクト取りやすくなるのは悪い話ではないし。


「さて、次は冒険者ギルドの方だが……」


 クロノスはそう言ってハルカを見る。

 眠そうな顔……いや、目を閉じているから眠っているかもしれない。

 冒険者ギルドとはいうが、治療系統、鍛冶系統など、様々なギルドが混合しているうえに、他種族の領土にも支部があるほどなので、何かあれば話して欲しいのだが……。

 まあ、話さないのならそれはそれで厄介な部分はないということにもなるのだが……。

 クロノスはブラックコーヒーを口に含んだ。


「先日、聖刻印を所持した勇者たちの護衛をした」


 そうだったな。


「その時に、魔王軍のものが来た」


 ふむ……聖刻印だから少なくとも諜報部員の可能性も……、


「来たのはイーゼルーだった」


 クロノスはコーヒーを吹き出した。

 子豚に直撃。

 ちなみに、すさまじい腹筋のクロノスが吹き出した場合、劣化ウォータージェットである。

 子豚、確か、ハルカは『ポコちゃん』と読んでいたと思うが、ポコは劣化ウォータージェットを額で受けると、当たったすぐそばからすさまじい勢いで次々とコーヒーを弾いていく。第三者がいれば、首の残像がいくつも見えてさぞや気持ち悪かっただろう。クロノスは目で追える速度なのでそんなことはないが。


「あ、ちなみに、イーゼルーではなく、イーゼラーですよ」


 アルスがポソッと言った。


「しかし親衛隊が来るとはのう……グランドマスターである嬢ちゃんを護衛にして正解じゃったな」

「確かにな」


 親衛隊クラスとなれば、ここにいるメンバーでも警戒するレベルだ。

 四人が一緒にいれば、親衛隊全員が正面突破を仕掛けてきても止める自信はあるが、他のものに任せるとなるとかなり不安だ。

 まあ、イーゼラーは余程のことではない限り、最初から本気を出す性格ではない。

 スロースタートという意味でもないが。


「嬢ちゃんの雰囲気からすると、イーゼラーは最初は本気ではなかったようじゃし、嬢ちゃんも最初から起きていたわけではなさそうじゃな」

「ということは、聖刻印は、魔王にとっては『ちょっと気になる程度』と言うことなのでしょうね」


 親衛隊は魔王の指示なしで動くことはない。

 彼らは普段、人族が保有する七大ダンジョンを越える、『世界三極ダンジョン』のなかで、魔王軍の領土内に存在するひとつに挑んでいる。

 魔王は三日でクリアしたという噂もあるが。

 まあそもそも、魔王軍のものが、魔族領土圏外にいく場合、とんでもない量の魔力を消費する『次元結界』と呼ばれるものが必要になる。

 魔族は、魔族領域圏外には、摂理的に行くことができない。次元結界が適用されている者のみが行くことが出来る。

 親衛隊クラスにもなれば、必要な魔力も天文学的数字になるので、長時間は出来ないだろう。

 魔王本人が来た場合、人族がどうなるかは想像したくないが、それが発生するのは、魔王にとっても最終手段になるのだ。


「これは、プロジェクトを早く進めた方がいいですね」

「ワシもそう思う。やや動きが活発になっている節があるからの」

「頭がいたいな……」


 考えることが増えたな。

 クロノスはため息を吐いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ