第二十九話
「いやいやちょっと待って多い多い多い!」
ミチヤは絶叫していた。
理由?それはだな。
現在進行形で、ドドドドドドドドドドド!というまさに地響きともいえる音と共に、大量のゴーレム(材質がまさかの筋肉)によって追いかけられていたからである。
現在、ダンジョン攻略開始から三日。
到達階層。六層。
ミチヤたちは、大量のゴーレムに追いかけられていた。
「な、何だあの数。しかもムキムキだなオイ!」
イナーセルも絶叫している。
いやもう、何でこうなったんだろうね。
第六層。ゴーレムエリアとも呼ばれるこのフロアでは、多種多様なゴーレムが一度に大量に来ることで有名だった。
それはもう、ちょっと理不尽な感じに。まあ情報はあったのだが……。
しかし、これはちょっと理不尽であった。
で、この状況に対する各々の状況。
ミチヤ 絶叫しながらも発砲。
イナーセル 大剣で斬っているがなんか変な感じに押され気味。
ヨシュア なんかいつも以上に無表情で撃ちまくってる。
ミーティア 特に変化はなくレイピアや火属性魔法で対応。
ミラルド 現在パニック中。戦力外通告確定。
タイダロス 左手で本読みながら右手で作業みたいに倒してる。
テラリア 風属性魔法で加速しながら斬っている(いつも通り)。
フルーセ 蹴り!
コハク ミチヤの左肩でプルプルしている。
結構余裕あったな。
で、十数分後に殲滅完了。
今現在。ミラルドが出したデフォルメされたコウモリが解体中である。
「この階層ってあんなのばっかりか」
「どうやらそうらしい」
イナーセルの呟きにタイダロスが静かに答える。
戦闘好きのイナーセルだが、少々きつかったようだ。
まあ、全身ムキムキの筋肉ゴーレムが二百体くらいいたからな。疲れるのも道理である。
しかし、ダンジョン舐めてたな。
入って二時間くらいで三層についたので、百層あっても四日くらいあればクリアは容易だと考えていたが、明らかに苦戦している。
いや、重傷を負っているわけではない。
しかし、一回に出てくるモンスターの数がかなり多いうえに、けっして弱くはないし、かなり嫌なタイミングで罠が起動してくる。
はっきり言うと、ストレスがたまっていた。
しかも、このダンジョンの広さも恐ろしい。
エルーサでのダンジョンは六層がアンデッドフロアで雰囲気ががらりと変わったので集中力の切り替えがうまくいったのだが、このダンジョンではそれが全くできない。
「む、これは精神的に体力がヤバい」
「私もです」
ヨシュアとミラルドも同じのようだ。
ミラルドに関しては耐性皆無だが。
「ふう、多いですね」
「事前に多いとは聞いていたが……」
ミーティアとテラリアもまだ慣れない。
フルーセは何も言わないが、時々ため息を吐いている。
少々イライラしているようだ。
コハクは……愛らしい目でプルプルしている。
全員の視線がたびたび集まるのも無理はないだろう。
ああ、可愛い。
「ふう、進むか……ん?」
なんか地響きが聞こえる。
またなんか来たな。
……うん。ゴーレムだった。
その材質。まさかのイソギンチャク!
「ギャアアアアアア」
ミチヤは二丁拳銃を撃ちまくる。
生理的に無理。そんな領域だった。
そして、そのまま道也が全部倒した。
コウモリが回収中である。
コウモリのうちの一匹に持たせているアイテムポーチに入れているのだが……あれってどう使うのだろうか。知りたくないが気になった。
「あんなのもいるんだな」
「そうらしいな」
その時、実はミチヤはあることに気付いていた。
そして、それを機に、焦っているような感覚になっていた。
その日の晩御飯はスタミナ優先の内容だった。
見張りに関してだが、起きているミチヤたちよりも、眠っているフルーセの方が危機感知能力が高いので任せている。
ミラルドの聴力を含めてもそうなのだ。しかたがない。
それでも、そもそもダンジョンの中だ。小部屋はあっても安全エリアなど存在しないので、うまく眠れないのは事実だった。
次の日もゴーレムを倒しまくっているが、ミチヤの表情がすぐれなかった。
「ミチヤ様。何かあったのですか?」
ミーティアが聞いて来る。
「昨日。レベルが255になった。今日も戦い続けているし、積極的に攻撃しているはずだが、一たりとも上がらない」
そう、ミチヤ本人の成長限界だった。
勇者であったとしても、レベルが255までしか上がらない。
いや、勇者じゃなくて『巻き込まれた青年』だけどさ。
それは確かに事実であったが、ミチヤのパーティーはミチヤのスキルによって上限か解放されている。
優秀な奴隷を持つことは確かにミチヤとしても嬉しいことではあるものの、自らに限界が生じているという現状を、ミチヤは焦っていた。
「そういや、マスターは召喚された勇者だったな」
「ああ、自分の真名が分からない。だから、レベル的な部分を言えば、俺はこれ以上強くはなれない」
危惧していたことだった。
その時考えればいいと思っていたが、ダンジョンの構造上、真正面から進める戦力であれば、レベルの上がり方は恐ろしい程に速いのだ。
モンスターも弱くはないので遠慮がない。
「予測していなかったわけではないが、こうして直面するとちょっと感じるものがあるな」
限界と言う文字は自分には訪れないと思っていた。
というより、限界に到達するまでに全てが終わると思っていたと考えるのが正しい。
そうではいられなくなった現状で、どこまで進めるのか……。
不安と言うより、虚無感が少し宿った。
「ま、次は技術だな」
前向きにやって行かないと話にならない。
そう思い直して、進むことにした。
が、地響きが聞こえる。
「む……この臭いはビーストゴーレムだ」
「数、百五十」
タイダロスが臭いで種族を特定して、ミラルドが数を報告する。
……ビーストゴーレムってなに?
その形は、ゴーレムに犬っぽい要素を加えた感じだった。
あ、尻尾がある。
「なんでさっきから百越えて出てくるんだろう……」
「不明」
ミラルドの呟きにヨシュアが一言で返した。
ビーストゴーレム。
なかなか高い機動力を持つモンスターである。
しかも連携も優れており、獣の直感もありかなり鋭いので、新米にはかなりきつい相手になるとのこと。
「なんでこんな群ればっかりなんだ!?」
「この六層の種族は、地上でも群れを作って行動する種族が集まっているらしい」
テラリアが教えてくれたが……。
「じゃあさっきの筋肉ゴーレムも地上では群れで活動してるのか?」
「俺は故郷で見たことがあるぜ」
イナーセルが教えてくれた。
「それはまたすさまじく暑苦しいもので……」
需要ゼロの光景が頭に浮かんだ。いや、昨日体験したけどさ。
しかし、なんというか、面倒になってきた。
多種多様である。
ビーストゴーレムは変に強かった。
筋力、俊敏、野生の勘、思えば何となく優秀な感じもかなりする。
が、戦えないわけではなかった。
というか、どちらにしてもこちらが全て上回ってしまうのである。
イナーセル、ミーティア、タイダロス、テラリアの四人とフルーセが、なんか異様に強いのだ。
まあ、ヨシュアとミラルドは戦闘力目的で買った訳じゃないけど。
コハク?癒し系です。戦闘目的ではありません。
「ふう、暴れた暴れた」
イナーセルたちが戻ってきた。
「わかってはいたことだが、すさまじい戦闘力だな……」
ミチヤはげんなりする。
まあ、従えている奴隷が強いことに不満は無論ないのだが……。
「そう言えば、もともとミーティアはレベルが高かったけど、今はいったいどれくらいなんだ?」
「ええと……『認識不可』となっています」
認識不可。少なくとも1000はあるようだな。
「レベルはそういうものなのか?」
「私にもわかりませんが……」
「む、主よ。フルーセのレベルも認識不可になっている。1000を越えるとそうなるのだろう」
タイダロスのいった通り、フルーセのレベルも認識不可だった。
そう言うものなのだろうか……。
まあ、今はいいとしよう。
「ふむ……そう言うものなのか……まあいいか。先に進もう」




