第二十二話
無事に町からは疫病は無くなり、すっかり戻ったわけだが……、
「なんか。釈然としないな」
「そうだな」
ミチヤの言葉にイナーセルが返答する。
あのままやりあっていたらどうなっていたのか、そんなことは考えなくてもわかる。
全員死んでいただろう。
そう思わせるほどのものが、カルカロスにはあった。
「強くなるべきだな」
だがしかし、問題はあった。
それは、カルカロスの言葉。
人族、それは召喚された勇者であっても、レベルの上限は変わらないということ。
簡単に言うなら、ミチヤのレベルも、255までしか上がらないということだ。
そして、ミチヤは、自分の真名を知ることができない。
奴隷四人。そしてフルーセを見て、意識すればそれぞれの真名が見えるのだが、自分の真名だけはいつまでたっても見えないのだ。
「俺もちょっといろいろ考えないとな」
まあいい、そこは後で考えることだ。
まだ200になったばかりである。まだ、まだ余裕はあるはずだ。
「マスター。次は何処に行くんだ?」
一応、東西南北、全てに行ったわけだが……。
「ラシェスタ情報だが、北の方で何かあったらしいな……」
「また尻拭いか……」
「そうなんです。いったいどうしてこうなるんだろうね」
はい、出発!
「あ、その前に、新しい奴隷を紹介するぞ」
「え?」
「入ってきてくれ」
ミチヤたちは馬車にいたのだが、入ってきたのは身長二メートル七十センチの熊と人間のハーフみたいな感じの男性だった。本当にハーフなのではないよ。
ものすごく天井が低そうである。
「というわけで一旦全員外にでようか。ヨシュア、天井の高さあげてくれ」
「……分かった」
流石に二メートル七十センチはド迫力である。
「さて、種族『ベアー』のタイダロスだ。パワーと、あとは嗅覚だな」
「パワーは俺にもわかるが、嗅覚なら犬なんじゃないか?」
「ところがどっこい。実は熊の方が嗅覚は凄まじい。野生の熊の場合は、認識のほとんどを嗅覚に頼っているんだ。タイダロスにもアレをやったんだが、一キロ先の屁の臭いだってかぎ分けれるらしいよ」
いいのか悪いのか、基準は不明だが、まあいいとしよう。
「はあ、で、なんでパワーを?」
「イナーセル、自分で気づいていないみたいだが、君は技術を求めた結果ちょっと筋力よりも技術よりになっているんだ。状況によってはイナーセルはいいかもしれないが、押しきる力も必要だと思った。あと高かった。あの店員、こっちが資金を持っているからってぼりやがって……」
「ミチヤ様。本音が漏れていますよ」
「ん、そうか。でまあそんなかんじでタイダロスを買った。武器に関しては、使用するのは俺が考えた結果ハルバード(槍斧)になりました。あとでヨシュアにつくってもらうがな」
「よろしく」
声は見た目通りにバリトンボイスであった。
「まあ、マスターがいいんなら問題はないけどよ」
「あと何気に本好きだった。偉人語録みたいな感じの本が好きらしい」
「変わった趣味だな」
「珍しくはないと思うけど……」
イナーセルオーガなので興味はないだろうが、吸血鬼であるミラルドはちょっと違うらしい。
「で、その本もちょっと高かった。ていうか、本と言う物体そのものが高いのかね。合計で金貨五枚分買った。ちなみにイナーセルを購入したときと同じ金額」
「なんだその比較」
知らんな。さて、ヨシュアも、槍斧を作り終わったようだし、早速行くとしよう。
ちなみにフルーセは『問題はないけどちょっと重くなったな』と感じていた。
ヨシュアは高くだけではなく、広くもしていたので窮屈な感じはない。
が、とてつもなく存在感を出している大男がハードカバーの本を持っていてもメモ帳を読んでいるようにしか見えないのと、なんか妙な感じがしていた。
問題はないのだが……。
「で、北の方でなにがあったんだ?」
「テリリアルよりももっと向こうにある村だ。というか、ザナークル王国は北にはそこまで進まないやり方なのかな。まあそんな感じで『ヤナモ』っていう村がある。行ってみればわかると言われた。あと、除草剤を多く作って持っていくべきといっていたな」
「除草剤ねぇ……」
まあたぶん、食料難とかで変な種を見つけて植えたら取り返しのつかないことになったとかそんな感じか。
このパターンは……海道だな。
「パターン的には海道ってやつか?」
「私もそう思います」
「?」
イナーセルの言葉にミーティアが賛成する。ミラルドはまだよくわかっていないようだ。
ヨシュアは天井裏で除草剤作りである。
タイダロスは本を黙って読んでいる。
「ああ、変に正義感が強いと言うか、思い込みが激しいからな。食糧難で、なんかすごそうな種を発見したから植えさせたとかそんな感じだろう」
「よく調べもせずに出せるよな……」
「海道のことだからな。絶対何かの封印を解いた感じだ」
「封印を解いて古の種をてにいれた的な感じ?」
ミラルドが首をかしげるが、ミチヤもそんな感じだと推測している。
どのような雰囲気であれ、封印されていると言うことは、あとの人間にもしものために残す為、もしくは単純にヤバイから封印されているのだ。
海道の自分勝手さを考えると、前者にとりそうな感じではある。
あいつもゲームを全くやらないわけではないからな。食糧難の村→近くに封印されている種がある→その封印を解けば村が救える。と考えると思う。
「あの天国頭。どっかで頭うって直らないかな……」
「たぶん死ぬまでそうだと思う」
「ミラルド。君、結構容赦ないよね」
ミラルドは時々こうなる。
「む、『ご都合主義の思い込みは一時の信用と永久の恨みをうむ』か。タイムリーな内容だな」
「そうだな。ていうか、タイダロス話聞いてたんだ……」
むしろそっちの方が驚きである。
「これでも人の話はしっかり聞いている」
「それなら問題はないが……」
タイダロスの場合、本に全神経を注いでいるようにしか見えないんだよね。
「で、ヤナモってどんな村なんだ?」
イナーセルが言った。
「ヤナモは農業が盛んだと聞いている」
答えたのはタイダロスだった。
「知っているのか?」
「ああ、なかなかか効率のいい方法で行っているらしくてな。そのため、自給自足が可能になっているらしいぞ」
「災害が来たら終わるんじゃないか?」
「余分に作っているからな。麦の生産量はかなりのものらしい」
「ザナークルで、米の値段が高かったのにパンとか麺類の値段が安かったのはそう言う理由か」
麺類って言ってもスパゲティしかなかったけど。西洋フェチかと思ったな。うん、
「輸出にも力を入れているらしくてな」
「思えばちょっと値上がりしてたな。まあ、俺らは自分で作るからあまり気にしなかったけど」
村なのだから、その分周りの物資はかなり必要になって来るはずである。輸出と言うより交易じゃね?と思ったがまあいいとしよう。
しかし、まあ確かに、食糧難の村があって、種を発見したら植えたくなるのが人のさがと言うものなのだろうか。経験したくはないが、分からないものである。
さて、そんなことを話していると夜になった。
フルーセが全速力で走っていないのもあるが、さすがに東西南北を渡っていると時間がかかる。
「さて、食え」
タレにしっかりとつけておいた肉を焼いて、即席栽培させた野菜を切って特製ドレッシングをかけてサラダにして、隙を見てミラルドが首筋に噛みついて来るのを回避しながら、次々と料理を作っていく。
団らんには鍋料理?量がどうしても少なくなるから、大食いには合わないんだよ。
「ふむ、主の料理はうまいものだな」
タイダロスの道也の呼び方は主である。
うーん。よくわからんな。
タイダロス。イナーセルとヨシュアが滝食いをしているのを見て遠慮は不要と思ったのか、自分も滝食いし始めた。
……こいつら容赦ねえな。
さて、ヤナモは一体どうなっているのやら。




