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真名解放の奴隷使い  作者: レルクス
責任の方位磁石編
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第二話

 まあ、どんなに景気がいいとは言っても、魔物との戦闘は被害が発生するし、人間同士も仲良くない場合は多いので、その分、親や保護者を失ったり、戦闘における必需品とかにお金を使って薬にまわせず、病によって奴隷になってしまうということは珍しくはない。

 ちなみに、ミチヤは奴隷ハーレムとか知らん。

 まあいいとして、ミチヤは裏路地を歩く。

 表に奴隷を扱う店があるとは思えない。

 なにせ、この町は勇者召喚を行うのだ。

 召喚される勇者が奴隷制度に猛烈に反対するような奴だったら国としても面倒だろう。

 まあ、今から買いに行くミチヤとしても面倒なのだが。


「ん、ここかな」


 地理とか知らんからな。もうほとんど適当になってしまう。

 が、あたりのようだった。

 ネオンサインが変に輝く店に入って行く。


「いらっしゃい。む、ここは子供が来るような場所じゃないよ」


 入ると同時に、店員が値踏みするように見てきた。


「予算金貨五枚で、目的は戦闘用だ。戦闘力重視で、種族とか本人の事情とかは関係ない。あと、今日中にこの町を出る気だから、お得意様になることはない。こんな感じで見繕ってもらえないか?」


 あまりにも事務的に話すミチヤに店員は唖然としたが、すぐに表情をもとに戻した。


「お客さん。主導権を握るのがうまいですな」

「商人を相手にするからな。先に要望を言っておいた方がいいとおもっただけ」

「こちらが、曰く付き物件を掲示しないと、考えなかったわけではないでしょう」

「店の外装にマークを刻んでいるのに、周りにコネがないとは思えない。評判を悪くすればいいだけのことだ。噂の恐ろしさくらい、商人なら知っているだろう」

「全く持ってその通りで、金貨五枚ですか。最近は景気がいいので、奴隷の値段も少々安くなっているのですよ」

「奴隷商人にとって景気がいいと言うことがどういうことなのかは今は考えないようにしよう。よろしく」

「畏まりました」


 商人は奥に引っ込んで、数分後、一人の奴隷を連れて来た。

 ものすごく大きい男だ。身長は二メートルくらいはあるな。肌の色は赤く、見えている腕や足は隆起した筋肉をまとっている。頭には角があり、種族は『オーガ』だ。要するに鬼である。真顔だけど結構怖いな。


「金貨五枚ですと、このあたりが妥当かと」

「ふむ、レベルは?」


 この世界にはレベルが存在する。

 最高レベルは知らないが、国のトップは140だと聞いた。

 そして、人族やエルフでは255で、それ以外の亜人などは100になると成長限界が発生するらしい。

 人もモンスターも同じだ。


「彼のレベルは87ですよ」


 本人の技術にもよるが、やり方次第ではかなりいい戦力になるだろう。


「で、事情は?」

「筋力が低下する+声が出せなくなる呪いにかかってしまったのです。彼は闘技場出身。スポンサーがいなくなり、さらに病気で勝利数があがらなくなり、しかも、それでいて、生きているだけで食料の消費量が多いので……」

「ふーん……」


 呪いか。

 まあ、よくわからない領域である。そもそも分かった方がすごいか。

 加護は神が与える物、呪いは悪魔が与える物だということらしいが、知らんな。

 ただ、病気にもなっているのか。そこはまあ薬を与えれば問題はないだろう。


「幸いにも、呪いそのものは強力なものではありませんよ。この町周辺の魔物でも問題はありません」

「じゃあなんで職を失うんだ?」

「そこは国レベルで面倒なものでして……」

「呪いって移るのか?」

「悪魔が個人に対して与えるだけのものに伝染力があると思いますか?」

「皆無だと思う。いや、全部がそうでもなさそうだが、まあいいか」


 さて、まあ、ぶっちゃけた話、問題はない。


「ふーむ、うん。買うよ」

「おお、いいのですか?」

「事情は関係ないって言ったしな」


 まあ、いろいろと手続きはあるもので。

 奴隷紋というものがあって、奴隷の胸の中央にあるものだが、まあ要するに制御装置だ。

 それらがあることで、奴隷は奴隷として活用されているとのこと。


「それはそうとお客様。他の町で奴隷を買われることは……」

「たぶんあると思うよ」

「そうですか。実はあなたが見抜いた通り、私、コネがたくさんあるのですよ。奴隷以外にもね。きっとあなたはいいお客様になりますよ」

「そうか」

「世界の裏にいる世界的商業組織『ラシェスタ』のご利用。お待ちしています」

「もう何も言わんよ」


 ミチヤは奴隷を連れて外に出た。


「さて、まあまずは、君は戦闘のために買った。と言うわけだからな。いや、その前に自己紹介か。俺はミチヤだ。それだけ覚えておけばいい」


 奴隷がうなずく。


「声がでないって不便だな。まあいい。兎に角武器を買いにいくか」


 次は武器屋に入った。

 見た感じ、地球で言う西洋の武器が多いな。

 刀とかもないわけではないが、かなり数が少ない。

 まあ、それはそれで仕方がないし、ミチヤに関係があるわけでもないが。

 すでに何人か先客がいた。

 店の外見的にも大きなものだったので、客も多いようだった。

 ミチヤは棚に方にいって武器を見ていく。

 ……全然わからん。


「……好きなものを選んでいいぞ。金貨二枚までだが」


 奴隷はうなずいて武器を見ている。

 しかし、回りの視線が妙だな。

 亜人というのはそれほど面倒なものなのだろうか……まあ、人族至上主義とかそんな感じだろう。

 こういった世界では珍しいものではないはずだ。


「ん、選んだか」


 持ってきたのは、彼の身に迫るほどの大きさの大剣だった。

 素材的にもシンプルなものだ。鉄ではないようだ。

 まあ、ものにおける景気はいいらしいので、それなりの素材なのだろう。


「闘技場出身だったな。そこでも大剣を使っていたのか?」


 頷いてきた。


「それならいい」


 購入したが、金額は金貨一枚と銀貨八十枚だった。


「さて、次は薬か。呪いに関しては後回しだ」


 自分で作ったほうが早いかもしれないな。

 というか、こういった世界では、科学は軽視されやすいし、薬学も進んでいるのかどうか不明だ。


「ポーションでなおる病気なら本人が治しているだろうし、ていうか呪いもそもそもの話面倒だな。一変に解決できないものかな……って言うかまだ名前聞いてないし、前途多難だな」


 裏路地を歩きながらぼやいた。

 さて、どう呼ぼうか……。

 そう言えば、真名鑑定があるんだったな。

 見てみる。

 表示されているのは『カリス』だった。


「カリスか……」


 その次の瞬間だった。

 彼の体の内側から魔方陣が多数出現し、そして、そのすべてが砕け散ったのだ。


「いったい何が……え?」


 今まで呪いの影響か、全く喋らなかった彼が口を開いて喋ったのだ。

 どう言うことなのだろうか。

 いや、それプラス、元より隆起していた筋肉にさらに追加された筋肉があり、少々悪かった血行も良くなっているように感じる。


「……何が起こったのかわからんな」

「な、何でだ、今までしゃべろうと思っても何も話せなかったし、それに、なんか体も軽い。力も以前に戻ってる」


 ふむ、見た目通りのことが実際に発生したようだ。

 というか、声、若いな。


「まあ、何が起こったのかは今はいいとして、とにかく、君の名前を教えてくれるかな?」

「俺の名前はイナーセルだ」


 ふむ、まあそれはそれでこれからは呼ぶことにしよう。

 しかし、真名。これは恐らく、何かしらの意味で『開放する』というものなのだ。

 呪いが解けたのは、恐らくだが、真名を知ったことで、自分の中でなにか次のステージになったことで、呪いを解除出来たのだろうか。まあこの部分は不明だが、病気が治ったのは、多分免疫力が急激に上昇したからだと思う。

 つじつま会わせだが、まあ、わかれば問題ない。


「まあ、細かいことはいいか。とにかく、この町は住むだけで税金がでかいからな。武器も買ったし、食料は次の町で揃えるとして、今はこの町から出ることを考えるぞ」

「分かったぜ、マスター」


 イナーセルとともに町を出るのだった。

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