第一話
「さて、どうしようか」
茅宮ミチヤは呟く。
顔は悪くはない。
身長は174センチと少々高いか。
黒い髪に、病的なまでに白いはだを持った少年だ。
現在、黒いロングコートを羽織っている。
「一応、それなりの資金はもらったけどな……」
ミチヤは少々予想外の展開に直面していた。
簡単にまとめよう。
まず、今いる世界、『アムネシア』と呼ばれる世界の、『勇者を召喚する儀式』みたいなもので、ミチヤの所属していたクラスが転移したのだ。
四時間目の終了直後で、購買で何を買うか考えていたときに転移したのである。
はっきり言って、ミチヤは勇者としての活動は無理だった。
それはステータスにある。
分かりやすく言うなら、天職が『巻き込まれた青年』だったのだ。
まあ、ミチヤにもよく分からないが、簡単に言えば、そう言うことなのだ。
ただ、巻き込まれたとは言っても、ミチヤには、スキルに『真名鑑定』というスキルがあった。
なんかステータスを見るためのプレートを渡されたが、それらには記載されていたのに、確認した兵士が見れていなかったようで、どうするか、という話になった。
ステータスも、見事に低い。
はっきり言って、ミチヤはいてもいなくても変わらない。
と言うわけなので、自ら厄介払いとしても片づけられるように、生活費をもらって(結構多めに)城から出てきたと言うわけだ。
ただ、そもそも王が説明する状況と、城の雰囲気があっていない。
話では、魔王軍は今かなり侵攻してきているらしい。
しかし、王はでっぷりと太っていたし、指輪も宝石まみれだった。
王妃や王子、姫も、さすがに太ってはいなかったが、身に付けている物は似たようなものだった。
まあ、見た感じ、召喚した三十人の生徒を魔王軍を相手に戦える勇者に育てようとする計画は遂行されそうな感じだったので、景気はいいのだろうと判断して資金は多めにもらった。
ただ、それでも『こういった国』はあまり正義ではないもので、王はかなり税金をとっているらしい。
物価はそれなりに安かったので、近年豊作でもあったのだろうと判断する。
しかし、それに反して住国税(言葉通りの税金)が少々高いと思った。
そのうち反対運動でも起こりそうだがな。
日本でも、明治維新で地租改正かなんかでいろいろと反感があったのだ。
この世界は、日本以上に、武器、というか、戦闘する手段を入手しやすい。
まあ、ミチヤが考えることではないが。
「少なくとも、一人で冒険はできないか」
もともとこの町で住むためには役所で登録する必要があり、さらに言うなら半年間は最低でも住んでいなければならないというわけのわからないかつ目的丸わかりの法律がある。
ただし、召喚されたミチヤであれば、ここでもし一泊でもしようと思えば登録が必要だが、今日中に出ていくのであれば問題ないだろう。
ちなみに、一々外に出る冒険者に関してはこの規制は適用されない。
適用はされないが、もともとこの町周辺の魔物は強いようで、このまちを拠点にせざるをえない状況は多いようだ。
冒険者が町に入らない可能性も否定はできないが、この町がかなり交通に良い場所に建設されているようなので、まあ、使うことを全面的に拒否する理由はないのだ。
まあ、そんな国に関することはいいとして、今日、ミチヤがすることは一つ。
『他の街に移動できる戦力を確保する』
ということだ。
まあ、なんとなく分かるだろう。そのあたりは。
ただ、傭兵や冒険者では料金が安定しないだろうし……、
「あ、奴隷があるな。そっちで行こう」
早速、現代人から離れた思考回路を発揮するのだった。