エルフの隠れ里 アルファナ
ここからこの世界のセリフで進みます
日本語などは『』で表記していきます。
木と土で構成された空間、質素ではあるが気品のある部屋に十数人の男女が光る石のような物を囲っている。
「皆揃ったな、では始めるとしようか」
静寂を切ったのは一人の老人、長い髪に長い髭、とんがった耳、細い目の中には青と緑の瞳、そのエルフの老人を老若男女のエルフが注目する。
「皆も、既に耳に痛いほど入っているであろうが、確認させてもらうとしよう。
まず、エルクの村がヒュム等の奴隷狩りに襲撃された。現在、生き残ったのは十数名と先ほど保護した子供達だけ、
今エルクの里にウィーナーとトルが確認へ向かっておる。
今ある情報は生き延びた彼らが持ってきてくれた情報のみだ、皆に話してくれるか?」
老人の目の前にいる一人の少年に老人は口を開ける。
「カレル、すまぬな、お前も疲れているだろうに」
カレルと呼ばれた少年、奴隷狩りとの一件や
子供達をまとめ指揮していた本人、狼、バークウルフとの一戦を、ウィーナーやトルを入れたエルフの狩人たちは、エルクの村への偵察の移動中、運良く、カレル達集団の危機を救うことができたのだった。
おかげでバークウルフを一掃することができ、ユキト以外の怪我人を出すことなく、カレル達はこのエルクの隠れ里アルファナに無事到着することができたのであった。
「いえ、俺は大丈夫です。それよりも村の皆はまだ・・・」
「あぁ、村に残って戦ったという半数以上が不明だ、アグリの話から死者は十を超えているだろう。あのアデルも少なくともかなりの負傷しているようだ。エルクの住人達も未だに森を逃げている可能性もあるが、ウィーナー達をあてにするしかない」
「・・・そう・・・ですか」
「良く子供達をまとめここまで来てくれた。
むやみに戦わず、わざと捕まり機を待ったそうだな、よく出来たエルフだ」
「・・・そんなことありません、あの時は子供達が既に何人か捕まっていて、俺も何もできずに禁魔の手枷をされてしまいました。森の護符がこなければ、今頃・・・・」
「現にこうして子供達は全員無事ではないか、お前のおかげだ、カレル。
少し見ぬうちに驚くほど逞しくなった。よく頑張ったな。同じエルフとして誇りに思うぞ」
老人の言葉に俯くカレル、徐々に震えていく体、今まで気丈に振舞い、子供たちを引っ張ってきたカレル。今まで我慢ししていた感情が爆破し、涙が溢れ出す。凛していた表情がくしゃくしゃに歪む。
「・・・は・・っ・はい・・・」
次第に嗚咽が混じり、涙、鼻水を拭いながら、なんとか返事をするカレル、彼をこの集会に集まった皆が見守り、またある者は尊敬の眼差しを向け、またある者は共に涙を流す。そしてある者は、怒りを宿した表情で拳を震わせていた。
「ラテアです。ただいま戻りました。」
カレルが必死に涙を拭き取る中、部屋の扉の外から女性の声が部屋に聞こえた。
「いい所にきた。入ってくれ」
老人が答えると一人のエルフが扉を開け部屋に入る。部屋のエルフ達の視線が彼女に集まる中、彼女は部屋の中央へ進み、その場に腰を下ろした。
「子供たちの様子は?」
「ケガは擦り傷や軽い打撲程度ですが、それよりも疲労が激しいようです。食事を摂らせた後、睡眠を取らせています。問題は精神的なところですね。何人かは未だに怯えが無くならないようです。」
ラテアと呼ばれた短髪の女性、大人びた顔立ちの彼女、よく見ればその服の袖には血痕が所々に付いていた。
「ヒュムの子についてですが、顔に打撲、背中に奴隷の焼印が一つ、そして左腕の噛み傷が深く出血が多いいようでしたが、命に別状はありません。1日経ってまだ意識は戻っていませんが、安静にしていればいずれ回復するでしょう。」
彼女の報告を聞いた老人は頷く。そしてカレルに視線をやり口を開く
「カレル、そのヒュムの子について聞かせてくれるか?」
老人の言葉にカレルは涙を拭い、鼻をすする。目や鼻が赤くなってはいるが、流れていた涙を短時間に止めた彼の顔は凛々しい表情に戻っていた。
「・・・はい、長老」
カレルは今までの出来事を皆に聞かせるため、もう一度目を拭き、その口を開く。