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ユキトとアルファナの森  作者: 利
一章 異世界転生
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シルフィー・ノゼグラフ

「・・・マジかよオイ!」


頭上や間近を光弾が通り抜ける。


少年たちが光弾や火の蛇、ミサイルのような光線を放ち、奴隷狩りの男たちが応戦する。


もう何人かは腕を失ったり足をなくしたり、絶命し、近くに寝ている死体は上半身を失っている。


非現実的な現状に恐怖を感じながら、必死にその場から逃げる方法を思考する。


少しでも頭を上げれば少年達の放つ光弾に被弾しそうだ。


そしてその死体を確認したときにあるものを見つける。腰のあたり、光弾の光に反射しその存在を主張していた。ーーー鍵の束だ


「おし、ラッキー」


数本ある鍵は、恐らくどれかが手錠の鍵だろう、そうであってくれと願う。


魔法を使っている少年たちの後ろで身を伏せている子ども達は恐らくまだ魔法が使えないのだろうか、


魔法を放つ何人かは手錠はしているようだが、鎖は途中で切れ両手は自由になっている。


恐らく魔法か、もしくは別の方法で切ったのだろうか。


だがまだ後ろで固まっている子供達は手枷は外れていないようだ。


なら、とりあえず、まず鍵を取りまだ外れていない少年少女達を解放する。


少しでも動きやすくなるはず、その後奴隷狩りを一掃して貰って、エルフ達と逃げる。それしかない



頭上を光弾が飛び交う中を這いつくばいながら、死体の方へと近づく、エルフの少年達のおかげで他の奴隷狩りはまだ近づけていない。体で体当たりするよう死体に近づく。背中が脈打つように痛みが走るが歯を食いしばり我慢しながらが、腰についてる鍵を口で噛み、乱暴に取る。が、鎖で腰のベルトと繋がれその場から取り外せない。


「くそ!用心がいいんだよくそ!」


流石に後手にに手錠されている状態で自分の手錠の開けるのは無理がある。


「おい!!こっちだ!!」


少年たちの方に大声で叫び、その後に口に鍵を加えその少年たちにアピールする。一番最初に魔法を出した少年がそれに気づき、他の少年に声をかける。そして集団から出てきたのは先程の毛布をかけてくれた少女だ。


幸いなことにその子の手錠は前で施錠されている。


走って駆け寄った少女に鍵を撮ってもらい、後ろ手の手錠を外してもらおうと、自分は後ろを向く。ちょうど奴隷狩り達の方向を振り向く形になり、その視界に矢を向ける男の姿が入る。


「やっば!!」


言い終わると同時に矢が放たれ、少女を押し倒すように倒れこむ、痛みなく、どうにか矢外して外れたと思ったが違った、向き直すと魔法陣が盾のように矢から俺たちを守っていた。


「ナイス少年!!」


少年を称賛しながら、すぐに上半身をおこし、少女に鍵を開けさせる。少女も鍵を焦りながらも鍵を鍵穴に当ててくが中々合う鍵が見つからない。周りを確認すれば近づいてくる奴隷狩りが一人、光弾を剣で弾き、ミサイル光線を避け、火の蛇をかき消しながら、距離を縮めてくる。恐らく

一番のやり手だろうか、動きが他のやつと違う気がする。


「ヤバいよヤバいよ、はよして!!」


男が近づいてくる、まだ、発動されているこの魔法陣は男の攻撃をは防げるだろうか、いや回り込まれたら終わりだ、ふと隣死体に目をやる。鍵が繋がれているベルト、それについているナイフに気付く、気づいた瞬間にガシャリと気持ちいい音がした。


右手が軽くなる。右手から手錠が外れた。だが、その時にはもう男との距離はあと一・二歩程になっている。後ろから飛んできた光弾を男が弾きそのまま魔法陣の盾に攻撃する。


魔法陣の盾に剣を振る男。そして魔法陣が砕けると同時に男の剣も砕け、飛び散った。


が、そのまま男は剣と反対の方の腕を振り上げると、俺の顔にむかって拳が飛んでくる。どうにか腕で防御するが腕越しに顔面を殴られ地面に叩きつけられる。


「ぐっ!いってぇ!」


今度は身構えていたおかげでダメージはかなり貰ったが、痛みはある程度我慢できた。男はそんな俺をから少女に視点を移し少女の髪を掴む、それを盾にするように持ち上げた。


少女は泣き叫び髪が抜けるそうな痛みを緩和させようと男の手を力一杯掴む。



捕まった少女を盾にされ、少年達の魔法が止まる。好機と奴隷狩り達が雄叫びをあげ一気に駆け寄る。万事休す、その瞬間、少女を掴んでいた男ががくんと体制を崩した。


男は痛みの原因、足元へ目を下す。膝裏にナイフが深々と刺さっていた。刺したのは勿論俺だ。


「ッうらぁあ!!」


次の瞬間、少年がミサイル光線を放ち男の持っている折れた剣を弾く。膝裏に刺したナイフを逆手で抜く。


抜いたと同時に倒れこむ男の頭を後ろから掴み掛かり、左腕をまわし固定する。そして、そのまま首にナイフを突き刺した。


生々しい感触がナイフ越しに伝わる。初めての感覚、そして初めて人を刺したいう嫌悪感、罪悪感か、恐怖か、鳥肌が立ったように全身が冷えた気がした。


が戸惑う時間はなく男は俺を掴み引きはがそうとする。が、力が入らないのか、引きはがせないまま膝を崩す。

そのまま抉るように抜くと、赤い切れ目から血が溢れ出るのが見えたーーー


少女は掴んでた手は解放され、地面に着地すると同時にその場にへたり込む。俺は男の下敷きになる形で倒れると首からでる大量の血を顔や身体に浴びる。慌てて蹴るように男の重い身体をどかす。

呆然とその場に座り込み、ビクビクと痙攣する死体を凝視する。人を殺した、そうだ人を殺したのだ、恐怖、罪悪感、後悔どれとも違う感情、心臓を掴まれたような感覚、肩で息をし足りない酸素を口いっぱい吸い込む。

そして胃が押し上げられるように嘔吐感が襲い嘔吐する。

胃には何も入ってないようで出たのは胃液だけだが、ナイフを刺した感触を思い出しさらに嘔吐感が増す。

そんな俺に少女が駆け寄る、一瞬全身に浴びた血に驚きはしたが、勇気を振り絞ったようにらわからない言葉で俺を呼びかける。その声に今の状況を思い出し周り確認する。


魔法は再発動され頭上を飛び交っていて、奴隷狩りも、もう片手で数えるほどになり、もう逃げ出しているところだった。逃げている途中に二人ほど直撃し絶命する。


少年達が追おうとするが、一番の年長であろう少年がそれを静止し、また訳のわからない言葉で皆に話し出す。

我に戻った俺も、鍵を探しそれを拾う、改めて半分になった死体を見て、先程はなかったのに、落ち着いたせいかまた嘔吐感が湧いてくる。

視線を逸らし鍵を取ろうとし、右手に持っているナイフに気付いた。指が硬直し、震えている。殺した実感がまた襲ってきて息が乱れそうになり、胸を叩き、落ち着こうと深呼吸する。硬直した指を一本一本外し、どうにかナイフを手から外した。


「ふぅ、とりあえず手錠外さねーとな」


よく見ればベルトと鍵を繋いでる鎖はベルトから取り外せるようになっていて、どれだけ焦っていたんだろうと思うが、あの状態ではしょうがないだろうと自己解決する俺


鍵を拾い、まず隣にいた少女の手錠をはずしてやろうと彼女の手を取る。そういえばどの鍵がわからないし、暗さで見にくいがどうにか燃えてる馬車や周りの火の光のおかげで鍵穴を見つけられ、凝視するように似たようなのを何本か当てる。


「お、これか」


三本目で当たりをだし、少女の両手を解放し、その後に自分の左手の手錠も解放する。


「ふぅ・・・災難だったマジで、ほんとマジで、あ、そういや髪大丈夫か??」


男に掴まれた髪、もしくは頭に怪我をしていないか、確認するが言葉は通じない。


ジェスチャーを駆使して、どうにか彼女にハゲも怪我もないことを確認して安堵する。


他の子ども達のも外さなければと少年たちの方を見ると、ちょうど年長の少年がこちらに歩み寄ってきた。険しい顔で近づいてくる少年、襲らくこの中のリーダー的な立ち位置に来るならこの少年だろうと思うくらいの雰囲気がある。いや実際にそうなのだろう。

少年はあと数歩のところまで近づくと俺に向けて手をかざす。

すると先程の戦闘の時よりは小振りではあるが魔法陣が手のひらに発生する。


「は!?ちょいまち!」


手を広げ攻撃の意思がないことを主張しようとすると、少年と俺を挟む形で少女が割り込む。


「÷+÷>>=<=#!!」


「♪→!!$|^÷×>=!!」


相変わらず理解できない言語で二人は言い争う。雰囲気で少年は俺を攻撃しようと、少女は庇ってくれているのだろう。とりあえず情けないが、少女の後ろで口論が終わるのを待つ。

そして少女が言葉を発した後に口論が止まる。少年は歯切りが悪そうに俺を睨む。その敵意の目線に唾を飲み込む。10代前後の少女に庇われ、それまた10代前半くらいの少年にビビる俺、本当に情けない、だってしょうがないじゃん、魔法使えるんだもんこの子と心の中で言い訳をする。


まあとりあえず、手元にある鍵を少年に見せ投げ渡す。少年は魔法陣は解かずに空いた片方の手でキャッチすると年下であろう別の少年に渡し、皆の手錠を外させる。


その間も、少年の魔法陣は消えず、少女も両手を広げ俺を庇いつづけ、二人はずっとにら睨み合う。

全員が手錠を外し終えたあと、少女が睨み合う少年にはなしかける。


すると、少年は魔法陣を解いたと同時に手を下げ、深いため息をついた。


「€$%>>°|^〆×÷」


何か言うと背を向けて、手錠が解けた皆を集める。少女もため息をつくと俺を振り返り、近くの毛布を手に取ると俺に手渡す。

この時また全裸だったことを思い出し、顔が熱くなる。貰った毛布で急いでマントのように全身を隠す。

その間に少女は落ちているナイフを拾い自分スカートを破り小さな布を作り、血で汚れた俺の顔を拭き始めようした。


「あーすまん、自分で拭くよ、ありがと」


身体中血を浴びたせいで顔から身体まで血な生臭い。多少ではあるが嘔吐感が続いている。少女から布を受け取り、顔を拭きながら周りを確認する。


子供達の何人かは奴隷狩りが残した武器や、無事な荷物を物色し、リーダー少年もそれに加わりながら指示をだす。

この場から逃げる準備をしているのだろう、逃げた奴隷狩りが仲間を連れてこないとも限らない。俺も周りを見渡し他に着れる物を探す。毛布のマントの下は全裸、とんだ変態だ。いや、毛も生えていないこの体ならまだセーフか?と今の状況ではどうでもいいことを考える。

先程殺した奴隷狩りの服を剥ぎ取る、革の付いたハーフパンツ、ウエストはブカブカだし身丈の小さい俺が着ればロングパンツになる上に、血も付着しているが、ないよりはマシだ。そこらか剥ぎ取った紐で腰をハーフパンツごと縛りウエスト問題を解消する。上着を剥ぎ取ろうとおもったが、ほとんどの面積が血わ浴びたため上着はやめて毛布マントや他の布を体に巻く程度で我慢する。

そして、後ろから声がして振り向くと少女が手渡そうとナイフを俺に差し出していた。


まだこびりついた血、刺した瞬間の感触を思い出す。ないよりはあったほうがいい。

はっきり言ってこの体じゃ剣はかなり無理があるだろうし、とナイフを受け取り、毛布で血糊を拭き、半分の死体から鞘を剥ぎ取る。


腰にナイフをセットすると、丁度いいタイミングでリーダー少年が皆を集める。俺も少女に手を引かれその集団に集まる。リーダー少年の言葉に皆、真剣に聞きながらも、皆の視線が俺に集まっていくのがわかった。暫くして、リーダー少年の合図で、彼を先頭に皆が歩き始めた。


「ついていきゃいいのか?」


と独り言をいうと、少女が俺の手を引っ張り集団についていく。後ろにナンバー2と3的な少年二人が明らかに俺を警戒したように俺と少女の後を歩く。


まだエルフとは決め付けてはいけないが、俺の中でエルフと呼ばせてもらう。

エルフと人間にはやはり種族の壁があるようだ、どの話でもそうか、多分人間が悪い、いや、人間が悪い。

いくら子供の見た目だろうと人間を警戒するのは当たり前か。しかもナイフまで持ってる。待たせてくれるだけでもかなりマシな方だとは思うが。戦闘の時に鍵を見つけたり、男を殺ったおかげで少しは味方と見てくれてるのかもしれない。


一時間はたっただろうか、満月の下、森の中をエルフの集団と歩く。今思えば靴を手に入れるべきだったと後悔している。暗くほとんど何も見えない。月明かりのおかげでどうにか足元を確認している。それでもやはり小さい小石や枝を踏んでは痛みと戦いどうにか集団についていく。


この子供達の集団、落ち着いて気づいたことがある。特にリーダー少年、見た目は十前後エルフは長寿だというのは良く聞くからもしかしたら俺より年上かもしれない。あんな状況で見事奴隷狩りの手から逃れ、皆をまとめている。

むしろ年上の方が合点がいくかもしれない。集団の一部は泣いているものもいるが、むしろそちらのほうが当然なのかもしれない。


と、考えていると、手を今だに引いてくれる少女が俺の横にくると、空いてる手で俺の肩をつつき、それに反応して少女を向く。

少女は自分を指差し、


「÷=¥\」


「え?」


そしてもう一度自分を指差し


「シルフィー」


「シル、シルフィー??」


言ったことを繰り返すと彼女は強く頷き俺を指差す、あーそういうことかと理解し自分を指差して答える


「ユキト」


「ユィクト?」


ちょっと違うなと首を振り、今度はゆっくりはっきりと


「ユ!」


「ユ?」


「キ!」


「キ?」


「ト!」


「トォ?」


「ユキト」


「ユキト?」


まあ上出来と頷くと、少女は嬉しそうに、俺を指差しユキト、自分を指差しシルフィー、俺も同じように自分指差しユキト、少女を指差して、シルフィーとこの世界に来て初めて自己紹介をしたのだった。

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