奴隷の焼印
若返った体、奴隷狩りにエルフ、ない頭で理解した。夢に見て何度も妄想したファンタジーの世界、自分はそこに来てしまったということに。
まだわからないことも、理解できてないことも沢山あるが・・・
毛布をもった少女、怯えた青と緑の瞳さに呆気をとられる。
おそらく全裸の自分に毛布を渡そうとしてくれたのか。俺と違って後手に手錠をされてないのが羨ましい。
とりあえず、受け取りたいけど受け取れないと後手の手錠を見せる。すると理解したのか、少女は恐る恐る近づき毛布をかけてくれる。
「優しいな、ありがとな」
俺の言葉に少女は首をかしげる
「€%×÷×」
あーそうか、多分言葉が通じないのか。
なんか知っている異世界系ラノベとは全然違うぞおい、
まあ普通に考えたらそれも当たり前かと納得する。世界、文化、種族が違うのに日本語が通じるわけがない。
大体さっきの人らとこの多分エルフの言葉も一緒ではないかもしれないのだ。
「来てみりゃこんなもんかよ、くそ」
身体はガキンチョ、特殊能力なし、・・・今の所、女神様的なのも出てきてない、エクスカリバー的なのも装備してない。
ゼロスタートってやつですかこれは。
毛布をくれた少女はそのまま素早く仲間たちの元へと戻る。改めて確認しても子供だらけ、他の子の子供達もおそらくエルフ?だろう。見た所大人はいないようだ。
住んでる所襲われたのか・・・それとも誘拐・・・可哀想に。
素直にそう思った、こんな子供たちが襲われ捕まる世界、平和ボケした俺が来たのは大変な所だと実感した。
そして考えるべき自分の現状、このまま売られるのか、それとも捨てられるか、最悪殺されるか・・・
これが本当の恐怖ってやつなのか。
心臓はバクバクと聞こえるように鼓動し、圧迫されたように口から内臓が出るような感覚に襲われ、気がつけば身体は強張り震えていた。
肩に冷たい感覚を感じた。
見れば先ほどの少女だった。俺の肩に触れ 、何か同じ言葉を繰り返す。
そのまま両手で俺の頭を引いて抱きしめられる。
子供をあやすように、優しい声でをかけながら、優しく頭をなでる。
大丈夫と、そう言っている気がした
ーーー安心した。すぐに震えがとまる。こんな少女に二十代中半の男が抱きしめられ励まされている。情けない状況ではあったが、この時は安心しきり彼女に身体を預けてしまっていた。
そして次第に瞼が重くなる。こんなにも乱暴に動く馬車で意識は次第と遠のいていった。
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鍵を外し扉を開ける音が聞こえた。
いつの間にか眠ってしまっていたのか。
気がつけば少女に膝枕をされている形で横になっていた。馬車は止まっているようだ。
気恥ずかしさを思う間もなく男が入ってくる。
乱暴に髪を掴まれ、少女と引き離され俺だけが外に連れだされた。
そのまま、引っ張れると焚き火の近くの台に数人の男に押さえつけられる。身動きが取れず、どうにか見える範囲の視界を確認する。
馬車以外にもたき火やテントのようなものがいくつか見える。野営地のようなものだろうか、とその現状に動揺しながら必死に思案する。そして、視界の隅の男がたき火に近づく。
焚き火の中、その中から男が取り出したのは鉄の棒、先端には丸い輪っかとその中に文字のようなものが真っ赤に熱せられ赤く光る。
嘘だろ――――焼印――――――
冷汗がどっと出る。
暴れる間もなく数人がかりで全身を強く押さえつけられ口に布を押し込められる。次の瞬間、右の肩甲骨のあたりに激痛が走りる。同時に肉を焼く音がなり、焼ける激痛で全身が硬直する。
「っがああああああああああ!!!」
硬直し少し遅れて無意識にでる叫び声、焼印が放されるが痛みが引くことはない、
「くそが!!いってぇええ!!ちくしょ、がぶ!」
叫びを言い終わる前に水をかけられた。
水が変なところに入ったせいで咳き込む。焼印の激痛は続き、肩が上下する程息が乱れる。
休む間もなく、腕を掴まれ再び馬車へ乗せられよう引きずられる。
馬車と近づいた時、馬車の中から緑色に光り出し次の瞬間、馬車が爆発した。
恐らく見張りで馬車に乗っていた男二人は爆発の火に巻き込まれながら吹き飛ばされ、俺と俺を拘束していた男も、その爆風に吹き飛ばされる。
「いっつぅぅ」
痛みを我慢し、爆発の方を向く。
燃える馬車、そして煙の中から出てきたのは、中にいたであろう一人の少年、その後から残りの少年少女達が姿を表した。
一緒に吹き飛ばされた男が起き上がり何か叫びながら腰の剣を抜く、それと同時に先頭の少年は手をかざす。すると手のひらに三つほどの光の輪が発現した。ーーー魔法陣、オタク知識から即座にそう理解した。
魔法陣を見た男は警戒し剣を構えた瞬間、魔法陣から無数の白く光る光弾が男に向け発射される。最初の一発を避け、二発目を剣ではじく、がその威力に押し負け体勢をくずした。
そこを先の二回の光弾よりも、大きさも早さも一回り上の光弾が、男に直撃する。
威力は凄まじく、直撃した爆風に自分も襲われる。吹き飛ばされるほどではなかったが。身体を押し倒れそうになり、身を低くし必死に踏ん張る。
反射的に瞑った目を開け男を確認する。
数メートル離れた位置、腹から上のない死体が転がっているのが見えた。
金髪の少年はそのまま魔法陣を増やし他の奴隷狩りへ標的を移す、先程の魔法陣から無数の白い光弾が奴隷狩りへ飛んでいき爆発する。
「すっげ」
他の少年達も攻撃に加わり数人の少年少女達が魔法陣をだし魔法で応戦する。奴隷狩りの数も減っていくが、数人はその光弾や魔法を避けて剣で弾く者もいて、徐々に俺たちを囲うように広がりがら近づいてくる。そしてそうはさせまいと、少年たちは光弾意外に、火の蛇や、ミサイルのように飛ぶ紫の光線を出しながら攻撃を仕掛けていた。
その場が戦場と化した。