出発
「 お前ら、やりたいことがないんならインドにいけ。」
ごみ箱みたいな汚い部屋で寝転びながらDVDを見てるとき、
脇役のニートのじいちゃんが、ニートの若者達にそう言ったのを聞いて、
なぜか画面に釘付けになった。
そのニートのじいちゃんは行ったことないくせに、
暇なうちにインドに行っとけって熱弁していた。
俺はそのじいちゃんの必死な様をみて、
ただの映画やってわかってながらも
なぜか強く思った。
( じいちゃん、おれ、インド行くわ。 )
前に仕事を辞めてからというもの
半年ぐらい引きこもってたから、
行動力が低下しまくってるのを自覚していた俺は、
とりあえず飛行機のチケットだけ取ってしまって
それから予定を決めることにした。
出発は二週間後。
それまでにできる限りのことを調べて、
できるだけ準備を整える!!!予定やったけど、
時間の使い方が下手すきぎて
パスポートとビザを取って
銀行のカードを作ることしか出来ずに
前日になってしまった。
ま、まあ、インドにも人が住んでるわけやし、
物価も安そうやし、要るもんはインドで買えばいっか。
なんとかなる。
シャーマンキ○グの主人公の言葉を思い出して、
そう思い込むことにした。
そして3日分の着替えと、i-podとイヤホン、歯ブラシセットを
高校のときに使ってたリュックにつめこんで出発した。
飛行機に乗って
しばらくして、CAが食事を配りだした。
俺の横まで来たCAが、慣れた感じで聞いてくる。
「 チキン オア カリー? 」
おおおー!早くも選択肢の中にカレーが入ってる!!
でもインドに着いたら、嫌でもカレーを食べるしかなさそうやし、
カレーはインドに着いてからでいいや
と思ってチキンを頼んだ。
ちゃちい器が何個か乗ってるおぼんを受け取る。
いかにもメインって感じの、アルミの包みをあけて一瞬、時が止まった。
こ、これは、チキンカレー?
そう、渡されたものは、どこからどうみてもチキンカレーやった。
もうインドは始まってる。
飛行機に乗ってから、到着まで12時間ぐらい、
時差のせいで、細かい時間は分からんけど、
とにかく長い時間、寝たり、寝たふりをしたりして時間をつぶした。
あの時こうしてたら今ごろこうなってたのになーとかの
妄想ごっこをしてる間に、
ついに飛行機はインドの首都、デリーの空港に着いた。
時計の針は、現地時間で夜の10時を指していた。
飛行機から降りて、空港に降り立った感想は、
くさ。
スパイスと汗の臭いが、
むわっとまとわりつくような感じがする。
預けていたリュックを受け取って、
一緒の飛行機に、何人か日本人の旅行者がいるのを見て、
ちょっとだけ安心してから、ゲートに向かう。
そして、自動ドアの向こう側に足を踏み入れた。