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夏の日
彼は、とても明るい人だった。
快活な性格で、よく笑うひとだった。黒い癖っ毛を気にして、髪は短く切り後ろへ撫でつけて、白いシャツをよく着ていた。小麦色に日焼けた彼の肌は、真夏の太陽の日差しがとても似合う。幼い頃から体が弱かった私は、家に引きこもりがちで、よく彼に手を引かれて遊びにでかけていた。
「ブラン…」
今彼は、純白のタキシードを真っ赤な血で染め上げて、私の膝の上に頭を乗せて横たわっている。肌は土気色で、薄く開いた瞳には光が感じられない。
「お可哀そうに」
「馬車に轢かれたそうだよ」
「式は取りやめだ」
太陽の日差しがじりじりと頭を照りつける。石で舗装された道は熱を帯びて、ドレスの布越しでも地面につけた膝を焼いてしまいそうだった。身体が煮えてしまいそうな暑さの中、地面に転がる彼の身体だけは冷たくて、その事実が私の心をじわじわと冷やしていった。