魔女の森B
お聞きになりたい?
それではお話いたしましょう。
街の人々の続きの話を。
それから時が流れました。
どれくらいでしょう?
はっきりとはいえないのですが年端のいかぬ少年が青年になり、親となるくらいには時が流れました。
しかし魔女は現れません。
人々はもう魔女に頼らず生きていました。
生きていく手段を得ていました。
しかし魔女のことは忘れていませんでした。
生きていくために必要な術を魔女は与えてくれていました。
街の薬師でも作れる、今までよりも効果のある薬。
病気にならないための術。
森で気をつけねばならない草花。
そう、魔女は惜しげもなく教えてくれていたのです。
そうして人々はなんとか生きてきました。
助け合って生きて、生きて
人々はそれらを自分たちのものとなるくらいにまでしました。
親となって数十年後、すでに老人となった男は言いました。
石碑を建てよう、と。
謝罪と感謝をこめて。
月日が経っても忘れてしまわぬように戒めとして。
魔女がいつか見てくれることを信じて。
そうして魔女の家には石碑が建てられました。
そこには
『
』
人々は石碑に事あるごとに花束を捧げました。
決して忘れませんでした。
長い長いときが流れましたが、子供たちにも伝えていきました。
老人が子供へ、そして子供は親となり、さらに子供へ。
魔女の話を事あるごとにいたしました。
何年も何十年も月日が過ぎ、魔女を覚えている人は居なくなりました。
しかしみな魔女を知っていました。
その街の人々はいまでも魔女に感謝をしています。
今日も花束が一つ。
石碑の言葉?
あれはこの話では出てこないのが一般的です。
だから何かしらの言葉を埋めて話すこともあります。
想像にお任せすることもありますよ。