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react a time  作者: 廿楽 亜久
第2幕
9/18

08

マイクはその日も寝坊していた。それは、珍しくはない。珍しくはないのだが…


「今日か…」


記憶によれば、今日がイヴが箱庭から出ていくように通告される日だ。

そんな日は決まってマイクは寝坊せずにくる。


「ヴェル君!!」


慌てて入ってきたリリィは、下駄箱のある方を指しながら言った。

マイクが喧嘩しているから止めてくれと。俺が止める道理はないが、イヴまで巻き込まれていると聞けば、いかないわけにもいかない。

だが、下駄箱で思っていた以上の光景が広がっていた。


「どういうことだ…?これは」

「別にオレらのせいじゃないからな!!こいつらが絡んできたのが問題なんだからな!!」


目の前には、生徒が2人倒れていた。1人は何が起こったのかわからない様子で、イヴのことを化け物のような目で見ていた。


「なぁ?ヴェル!?お前信じて…」

「今は、何があったのか聞いてるんだ」


とはいえ、実際口に出されなくてもわかる。リリィは一応イヴたちの話を聞いているようだが、一番話を聞かなくていいのはあいつだ。能力で見ればいい。


何かを思い出すように…先程まで何があったのか思い出すだけだ。

マイクはいつもの廊下へ向かおうとしたとき、リリィを見つけた。


「あ、マイク君」

「先輩?どうしたんすか?」

「イヴちゃん待ってるんだけど…」

「あれ?イヴまだ来てません?おかしいなぁ…いつも俺より早いのに」

「そうなの…?」


何となく向けた下駄箱の方で、イヴが3人に絡まれていた。

そこからはあっぱれというか、なんというか…一番イヴの近くにいた男を殴っていた。


「てめぇら!!いい加減にしろ!!」

「んだよ!!落ちこぼれが!!」


きっと、このタイミングで既にリリィはこっちに走ってきていたんだろう。毎度のことながら、殴り合いに発展しそうになり、イヴが止めに入るがあまり聞こえていないようだ。


「邪魔だ!!クソ女が!!」


男の一人が殴ろうとした時、イヴの華麗なるカウンター(ビンタ)が決まった。

いや、そこはいいんだ。驚いたが、まぁ…それよりも、驚きなのは、その男が倒れたまま動かないことだ。


そこで、能力をやめてもう一度そこを見れば


「なるほど…」


この状況にもやっと納得がいった。これの犯人がマイクであるなら、またマイクが呼び出しで住んだ話なのだが、そうはいかないらしい。


「お前たち!!なにしてるんだ!!」


担任が慌てた様子で階段を駆け下りてきて、イヴもマイクもまた同じ説明をすることになった。

もちろん、2人とも呼び出しだ。そこでやっと隣にいたリリィに声をかける。


「なんで、ここにいたんだ?」

「え?あ…イヴちゃんに用があったんだけど…」


リリィは俺の方を見ると


「私が過去を見て、何か特徴的なことがあればそれを伝えれば、芋づる式に思い出せるんじゃないかって…そう思ったんだけど」

「…」

「あ、も、もちろん!イヴちゃんの許可が必要だから、聞きに来たんだけど…」


そんなことをあの最後の日まで思いつかないはずだ…


「ヴェル君?」

「あ、いや、前までできなかったのにそれができるのか?」

「うん。あ、えっと、多分…私の一番長い間使ってる能力はそっちなの。今までイヴちゃんに対して使ってたのよりも、ずっと使い慣れてる能力だから」

「そうか」

「お昼休みって、教室?そしたら、私いくから」

「あぁ。教室だが…」

「じゃあ、お昼に行くね!」


リリィはチャイムに慌てて、それだけ言うと行ってしまった。

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