another story
気の根元に座り、俺は待つ。それが間に合うことを。
いや、間に合うのは当たり前か。
なんてことのない。いつもの結末だ。
愚かな人間は、愚かな行為に気づく。
それは、全てが手遅れになった後に。
だが、まぁ…人間全てが愚かというわけではない。
そら、来たぞ。青い顔をした。
手遅れになる前に気づいてしまった気の毒な女が。
「…気づいてたの…?貴方は」
泣きそうな顔で、俺に質問した。
「最後のその時まで、イヴを救おうとしたお前の気持ちは、きっとこの箱庭にいる誰よりも強かったんだろうな」
「答えて!!」
だからこそ、手遅れになる前に気がついた。
「俺はこの説明を何度するのだろうな…」
ため息混じりに、俺は質問を返す。
「俺の能力を知っているか?」
「え…?確か、五感を共有する能力よね?」
「いや、それは表面的な能力だ」
「どういうこと?」
「俺の能力は、自分の脳と他の人間の脳を共有させることができる」
それに目を見開き、質問は止まる。
「だからこそ、毎回すぐに知ってしまう…」
「…なら、どうしてそれで彼女を守ろうとしないの」
「どうやって止めろと言うんだ?誰が信じる?イヴのことを」
「っそれは、そう、だけど…言わなきゃ始まらない!!」
そう。俺が言わない理由はたった一つだ。
「言ってしまえば、世界は変わる。俺は、この平和な世界が好きだ。だから、言わなかった」
どう転がろうとも、変わるのは明白だ。だからこそ、俺は現状維持を望んだ。
「イヴが直に箱庭から出ていく。そうすれば、ここは崩れて消える」
「!!」
「リリィ。お前が、本当にイヴのことを心配してくれたからこそ、一つだけ選択肢ができた」
リリィの能力は記憶を掘り起こすだけじゃない。
もう1つ、これは大きく作用するおかげで、自身にもかかるし、一生で1度しか恐らく使えないだろう。
「どうする?」
我ながらひどいものだと思う。
リリィの返答はいつだって…
「やるわよ…過去に戻って、イヴを助けられるまで…そうしなきゃ、ここは…」
全くいい人だよ。リリィは。




