04
放課後、第3会議室では学園長、理事長、他数名の教師。そして、この箱庭の管理者が数人がイヴの前に座っていた。サイドのテーブルに腰掛けているのは、学園ランク上位10名。
全員がイヴのことを見ていた。
「イヴ。君に事実確認をしておく」
言ったのは、担任の教師。
「君は能力者だね?」
「はい」
イヴが能力者であることは、検査でもハッキリしている。そんなものは資料を見ればわかる。
「だが、能力を使えない」
「…はい」
問題はそこだった。イヴには反論のしようもないし、この会議の開かれた理由すら知らない。
ただひたすらに、怯えながら答えるだけ。
「もちろん。能力をもっていても使いこなせない生徒はいる。そういった生徒は皆、それぞれ努力し、使えるようにしている。だが、君は1年が経った今でも使えない」
「…はい」
「待ってください」
そこで声を上げたのはリリィだ。
「彼女は能力を使えるよう努力をしています」
「1年でどうにもならない程度の努力か、それとも…」
「それに、彼女は記憶障害を持っています。能力の発端は今のところ、全てが学園に来る前の出来事です。ですが、現在、彼女はこの学園に来る前の記憶が欠落してしまっています。そのため、能力を引き出す術がないのだと――」
「だが、ここ数ヶ月、君がその処置を行おうとして尚、治ってはない。そうだな?」
「それは、そうですが…」
管理者が数人呆れたように首を振る。
「君たち学生は我々の希望だ。だからこそ、全ての生活費、医療費、授業料を国の予算の一部とし養っている。わかるかい?人1人分の高校3年間にかかる膨大の費用を」
「…」
「無論。卒業後の働きを差し引けば、そんなものちっぽけなものだ。だが、その将来の見込みがない人間を養ってやるほど、予算に余裕はない」
リリィはなにか反論しようと口を開きかけるが、隣に止められ何も言えなくなった。
もう決められているのだ。ここでは、ただ事実の確認を行い、執行猶予を与え、それをイヴに伝えるだけなのだ。
「もう察しがついているだろうが、イヴ。君は、ここから出ていってもらう」
「――っ!!」
「理由は先ほど言ったとおりだ。君の能力者判定が出たのは、機械の誤作動だろう。君のような生徒が現れないよう調整するように言っておくよ」
管理者は顔の前で手を組むと、イヴに微笑みかけながら
「そうだな…君は、隔離クラスだったか。それなら、それほど別れを惜しむ時間は必要ないかな?明日にでも…」
「あの…失礼ですが、それではあまりにも不憫です。機械の誤作動とはいえ…我々のミスなのですから…」
学園長がオドオドとしながらも意見をいえば、管理者はため息をつき
「では、3日でどうです?隔離クラスの生徒は彼女を含め3人。1人に対して1日。十分でしょう」
管理者は早くイヴを追い出したようだった。イヴももう頷くしかできなかった。
それと同時にため息が会議室の外で響いた。




