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react a time  作者: 廿楽 亜久
第1幕
3/18

03

いつものように駆け足でマイクが教室のドアを開き、時計を確認。


「よっし!5分前!」


そう喜んでいると、意外にも1人しかいないクラスメイトに、首をかしげる。


「あれ?イヴは?」


イヴの席にはイヴどころか、カバンすらない。


「まだ来ていない」

「ん?風邪でも引いたんすかねぇ?」


マイクが首をかしげていると、ゆっくりとドアが開きイヴが入ってきた。


「おはよう」

「あ、遅かったな!寝坊とか?」


マイクはいつものようにそう聞けば、イヴは言いづらそうに頷いた。


「?寝坊は俺もよくするし、気にしなくていいって!」


そうやって背中を叩きながら、机に連れてくると、2人は座った。

だが、1人だけ察したようにイヴに挨拶のかわりに言った。


「あんな戯言まともに聞かなくていい」

「!!」

「え?」


マイクもその言葉に、驚き納得した。


「また嫌がらせか!ったく…なんなんだよ。ホント…」


そう。落ちこぼれ3人衆と呼ばれるこのクラスのイヴ、マイク、ヴェルの3人は、時折他のクラスメイトから嫌がらせを受けることがある。特に、学園667位、つまり最下位のイヴはよく受ける。

他の2人も受けることはあるが、気にしないか、その場でやり返すと、それぞれの対処法を持っている。やり返すマイクは、その度、職員室に呼ばれることになるが。


「何された?とっ捕まえて、殴ってくる!」

「あ、いや!大丈夫だから…!」

「いやいや!こういう時にやっとかないと、あいつら調子に乗って――」

「本当に、大丈夫だから。落ち着いて。先生ももうくるからさ」


午前の授業中、イヴはずっと暗かった。いままで、嫌がらせを受けても、昼には治っていることが多かったため、これは異常だった。マイクももちろん気づいていた。


「…よし。ここは男だ!今日の昼飯は、俺が購買まで買ってくる!」


昼の購買は戦場のようだ。食べたい物があるなら、素早く行動しなければいけない。そこに関して、マイクは人一倍得意だ。


「俺はコロッケパンとメロンパンで頼む。あと緑茶」


当たり前のようにそういえば、マイクはなぁぁ!?と驚いたあと


「ヴェル!お前は飲み物持てよ!?男だろ!?」

「なんだ。運動部に入っているっていうのに、3人分の飲み物とパンが重いっていうのか?」

「物理的に持てねぇよ!!パンのかさばり具合知らねぇのか!?」

「あ、じゃあ、私が――」

「イヴは女だからダメ!ここは男が」

「そこに男女の差は必要か?差別は好まないが」

「差別なくして、女にめんどうごと押し付けようとするとか、いい度胸だな!お前!!」


結局、マイクに負けイヴから注文と金を受け取り購買に出かける。

購買は、案の定、戦場と化していた。あの人ごみの中パンを取り、確保したあとおばさんの所に持っていく。


「俺は苦手なんだが」

「任せろって!声のでかさは誰にも負けない!」

「頼もしいな。なら、飲み物は俺が確保しておこう」

「サンキュー!」


マイクが後ろで人気のあるパンを欲しいと大声で言えば、気を利かせたおばさんが「はいはい。」と呆れながらも確保してくれている。そこまでして、欲しいかと時折感じてしまうが、言ってしまった者勝ちとはこのことだ。

無事にパンを買い終え、教室に戻る廊下で、マイクは突然切り出した。


「イヴ、マジどうしたんだろうな。ただの嫌がらせなら、あそこまでならないだろ?」

「そうだな。何かあったのだろうということしかわからないが」

「はぁ~…どうにか、元気づけてぇけど…」

「…」


それ以上何も言わずに教室に入った。


「――放課後、第3会議室に来なさい」


教師のその言葉はイヴに向けられていた。

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