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react a time  作者: 廿楽 亜久
第1幕
2/18

02

授業が終わり、放課後になるとマイクは早々に部活へ向かう。


「それじゃあ、イヴとヴェル!また明日!」

「じゃあね」

「あぁ。また」


それぞれ帰り支度を終えると


「それじゃあ行くか」

「ヴェル…いつも来てくれるけど、大丈夫なの?」


イヴが心配そうに見上げるが、特に気にした様子もなく


「あぁ。どうせ帰っても、本を読むだけだしな」

「そっか」


安心したようにイヴは笑って、教室のドアを開けた。向かう先は、生徒相談室。

元からあまり使われていないが、この時間はいつも使用禁止にされている。その使用禁止の札を気にせず、イヴがドアを開ければ中から、いらっしゃいとの声がする。


「すみません。遅れました」

「全然。そっちの方が遠いんだから、大変でしょ?」


そう笑って返すのは、1つ先輩のリリィだ。能力でいえば、必ずトップ10位以内に入っている。

ここ最近、イヴは毎日ここで治療を受ける。治療といっても、効果的なことが起きたことはない。


「じゃあ、とりあえず、座って」


治療は簡単なもので、このリリィの能力を使う。

リリィの能力は『対象の過去を視る。そして、過去の記憶を思い起こさせる』

治療は後者の能力が見つかってから行われ始めた。


「人の過去を勝手に見るもんじゃないもんね」


そういう持論を持っているかららしい。

イヴはこの学校に入る前の記憶が一切ない。思い出せないらしい。

そのせいで、能力が使えないのだろうと推測されてはいたものの、脳に異常はなく、精神的なものだろうと今までもメンタルの治療を受けてきたが、効果はなかった。そして、現在このような処置に移った。

欠点はリリィが多少の記憶を知ってしまうということだが、できる限りみないように努力はしているらしい。

イヴの目の前に手をかざすと、うっすらと緑に光る。


「…」


時間にして10分だろうか。それくらいの時間が過ぎた頃、リリィは手を下ろす。

そして、何度も見た難しい顔。


「やっぱりうまくいかないわねぇ…ほかの子だとすぐにうまくいくんだけど…」

「すみません…」

「あ、ごめん。謝らなくていいのよ?私の力不足なわけだし…大変でしょ?記憶ないのって。それに、能力も引き出せないとなると…」

「いえ!そんなことは…能力が無くても、別に楽しいですから」

「…そっか。それはいいことなんだけどね…」

「?」

「…ううん!今日はこのへんにしてもいい?あんまり脳に負担かけるわけにもいかないし」

「あ、はい!ありがとうございました!」


結局、イヴは今日も成果は無かった。


「あ、ねぇ。ヴェル君」

「?」

「ちょっといい?」


リリィに呼び止められ、イヴが先に下駄箱に行ってるね。といって、外に出た。部屋には2人だけになった。


「どうせ、上がイヴを追放しようとでもしているんだろう?」

「!知ってたの…?」

「おおかた想像がつく」

「…うん。まだ、議題の1つってところだけど」

「偉い人間ってものは、自分の汚名には敏感だからな。いつまでも議題の1つってわけでもないだろうな」


リリィは困った表情をしたが、すぐに


「能力者であることは検査結果にでてるんだから、大丈夫だよ」

「…それは、そっちの勝手な意見だろう」

「なんでそんなにわかってるように言うの?ヴェル君は」

「わかってるようなものだからな」


少しだけ怒ったように口を尖らせると


「案外、想定通りって少ないんだよ?それに、そんなことになるなら、私が止めるし。これでも10位以内の成績保持者って重宝されてるし、意見も結構通るんだから」

「…その言葉、最後まで言ってほしいものだな」

「当たり前でしょ!」


リリィは胸を張って答えた。自分ならある程度の発言権があると。イヴが箱庭から追い出されそうになっても止められると。

そして、できるなら、そうしてくれと答えた。

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