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イヴ視点
いきなり能力があるから、それを証明しろなんて言われても、困る。
というよりも、そんな能力を入れ替えるなんて能力、私にはないよ。
「…」
わかりました。とは言ってしまったけど、方法なんてわからない。
「ふむ…仕方ない。こいつも男だ。一発くらい、女に叩かれる経験もあってもいいだろう」
「えぇ!?」
主席の先輩は笑いながら、私が前に叩いた生徒を指さした。
「ま、例えその能力が発動しなくても、君はここから出ていくだけだし、この2人は…まぁ、能力変わっててもそう問題ないだろ。七不思議になれて楽しいんじゃないか?」
「「楽しくないです!!!」」
「だいたい!そんな能力を変えるなんて…んな能力あってたまるか!!」
「落ちこぼれの無能力者はとっとと消えろ!」
「てめぇら!まだそんなこと言ってんのか!?」
いつだったっけ?前にもこんなこと言われた事あったなぁ…
『ば、化け物…!』
『村から出てけ!!』
みんなが笑えるように、楽しく幸せに暮らせるようにいっぱい手伝ってあげた。そしたら、それを見た人が怯えた顔をして言って、怖い顔をした人が石を投げてきたんだ。
私がこんな力をもってるから…だったらこんな力いらない。
ううん。みんながこの力を持てば、きっとこんなことしない、よね?
石を投げられるのも、ひどい言葉言われるのも、みんな嫌だよ。
「どうして、喧嘩するの…?」
みんな力をもったのに、みんな変わらない平等にしたはずなのに…どうして?
「イヴ…」
「ねぇ、なんで?私がいなくなれば、こんなことにならないの?」
「いや、どっちにしてもなるときにはなる。マイクの奴は少し煽られただけで、本気でキレるかわいそうな奴だからな」
「…」
先輩達に止められている3人は今だににらみ合っている。
「今まで、こんなことはなかっただろ?」
頷けば、ヴェルは真剣な目で私を見た。
「変わったんだよ。イヴが箱庭から追放されようとしたり、あいつらの能力が変わったり、今までの均衡が崩れたんだ」
「…」
「今までが幸せだったと思うなら、その変わった全てを元に戻すしかないだろ」
「…戻す?どうやって?」
そういえば、ヴェルは呆れたようなただいつものような優しい笑みで
「イヴはマイクより頭が回ると思っていたが、相変わらず自分のこととなると鈍感だな」
「ぇ?」
「俺ができるのはお膳立てだけだ。俺は賽を投げた。あとは、成り行きに任せるしかない」
ヴェルはそれ以上何も言わなかった。
「あ゛ーもうっ!!それ以上喧嘩をするようなら、3人まとめて私が病院送りにするからな!」
「えぇぇえ!?それはさすがにダメだよ!?」
「問題ない!能力者の治療が得意な奴知ってるから」
「だ、だから!?病院送りの時点でダメだってば!?」
先輩たちの言葉に、さすがに3人が引きつった表情で離れた。主席の目が本気すぎる…
私は、不思議なことに足が勝手に2人に向かっていた。2人の前にある2つの光が手を伸ばせば届くくらいの距離になれば、さすがに2人も気がついた。
「おい。こっちくんじゃ――ヒッ…!」
「す、すみません」
「君らを呼び出したのは、この能力の実証のためだってこと忘れるなよ?」
「「は、はぃ…!!」」
私の目に映る2つの光を両手で掴んで、場所を入れ替える。前みたいに乱暴にじゃなくて、丁寧に入れ替えた。
「…」
気が付けば、目の前には光なんて無くなっていた。探そうと辺りを見渡したが、全員が全員驚いたまま動かない。
助けを求めるようにヴェルの方を見れば、気がついたように私の後ろにいた2人に目を向けた。
「で?能力はどうなったんだ?」
「え?あー…あれ?」
「あ…戻ってる…?」
何度も確認していた。その度に、驚いて私は何が起きたのか理解していなかったけど、肩を叩かれ振り返れば主席がいた。
「一緒に会議室に行こうか」
「あ、私もいく!」
「あぁ。そっちは?」
「いや、俺はいい。元から呼び出されてはいないしな」
「そうだな。乱入してきたんだもんな。というか、今の私は説明できる自信ないんだが…」
「イヴちゃんできる?」
「え…あの、私もなにがなんだか…」
本当に何が起きたのか、なぜできたのかわからなかった。
「俺の目を通してあいつらも見てたんだ。問題ないだろ。見たままが答えだ」
「確かにそうだな。じゃあ、君らはもう帰っていいぞ」
私は、先輩たちに連れられて会議室に向かった。
ヴェル視点
うまくいった。感じたのはそれだけだった。イヴたちがいなくなった後
「本当にオレらこれだけのために呼び出されたのかよ!?」
「まぁ、能力戻ったんだし、よかったじゃん」
「それはそうだけど、なんか納得いかねぇ…」
不憫なあいつらを尻目に、俺も会議室の外で待っていてやろうと思っていた時だ後ろから肩を組まれた。
「やったな!!これで、イヴ追い出されないよな?」
「あぁ。能力者…なら、追放する必要がないしな」
「よっしゃー!!!」
会議はすぐに終わった。イヴが出てきた時にマイクはすぐにイヴの元に行き、俺は窓辺に寄りかかってそれを見ていた。
「ヴェール君っ♪よかったね」
「あぁ。そうだな。問題なく能力者にしてもらえてよかったよ」
「え?どういうこと?」
「いや、イヴのあれは能力…というよりも、孤独な神が仲間が欲しくて自分の力を分け与えるための力に近い気がしてな」
「……」
リリィが驚いたような顔をした後、めんどくさそうに顔をしかめた。
「なんだ…」
「だって、ヴェル君、せっかくイヴちゃんが追放されなくてすんでよかったって時に、また面倒なこと考えてるもんだもん。いいじゃん。力は能力ってことで、イヴちゃんは能力者で、私たちの友達って、ただそれだけなのに、小難しいんだもん」
呆れたようにため息をつかれた。確かにリリィの言っていることはその通りだ。
会議室から出てきた最後の1人が鍵を閉めていた。
「あ…そういえば、前に友達が友達である定義はどこからかわからないーとか、めんどくさい事言ってた人いたなぁ…」
といいつつ、その鍵を閉めている学園順位1位の方を見ていた。それでは、誰が言ったのかバレバレだが…いいか。リリィらしい。
「おーい!せんぱーい!ヴェル!食堂で飯食って帰ろうぜ!」
「あ、いいね!鞄取ってきたらすぐいくね!」
「はーい」
イヴが一瞬恥ずかしそうにして、笑顔でこっちに手を振ってくる。
「ヴェル。ありがとう」
「いや。俺は、特に何かしたわけじゃないしな。それよりも、食堂とは…なんとも味気ないな」
「しょ、しょうがねーだろ!?店っていう店はないし、寮だと男女別だしよ」
「ヴェルはやだ?」
「いや。構わない」
「じゃあ、最初っから文句言うなよ」
「意見だ。文句ではない」
「そういうの屁理屈っていうんだぜ?」
「詭弁と言って欲しいものだな」
「ほんとにあーいえばこういうな…」
「どっちにしてもあんまり良くない意味だよね…?」
イヴが困ったように笑う。本当に変わらない、いつもの光景だった。
fin...
「react a time」これにて最終話になります。
ここまで読んでいただきありがとうございました。




