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会議室では、既に会議が始められ、やはりというかなんというか、リリィは色々包み隠さず文句を言われいた。俺は、それをドア越しに聞きながら、息を整える。
『それで、本題に入ろうか?なにやら、重要なことだそうだが』
『はい。イヴのことなのですが、まず――』
リリィの説明を遮るようにドアをノックした。そして、返答は聞かず入った。
「君は?」
「イヴと同じクラスの学園順位665位のヴェルです」
「ヴェ、ヴェル君?なんで…」
「実は、イヴの能力が判明したため、今回の追放の件なかったことにしてもらいたく、ここに来ました」
「え…」
リリィが驚いて近づいてきて、周りに聞こえないように耳打ちをしてきた。
「能力って?」
「知るか。だが、少し心当たりがある」
「心当たり?」
「あぁ」
「話があるなら、ちゃんと言いなさい」
「失礼しました!」
「失礼ついでにもう1つ、少々五感を貸してもらおう」
その場にいた全員が目を見開く。そして、誰かが反応するよりも早く、能力を発動させる。
「しばしの間、目と耳を拝借」
見せるものは、簡単なもの。2人の男子生徒の能力を使っているところ。そして、イヴにビンタをされた後の能力を使ったところ。そこで、数人が息をのんだ。
そこで、能力をやめれば、学年1位が俺のことを見定めるように見ていた。これは、バレたな。
まぁ、いいか。五感だろうが、脳だろうが、そう変わりはないだろう。
「今のは?」
「イヴが干渉したせいで、能力が入れ替わった可能性があります」
「つまり、能力を入れ替える能力…ということ?」
「入れ替えるのか、剥奪するのかはわからないところだがな」
「…そう。で、検証は?」
俺の能力については一旦置いておいてくれるらしい。
「まだ。ただイヴを呼び出している。これから検証しに行ってみるか?」
「…」
めんどくさそうな管理者と理事。
「無論、俺は検証に立ち会う。だから、ここから出たくないなら俺の能力で検証を見ることはできるが、どうします?」
そういえば、1位以外はついてくる気もないらしい。
「じゃあ、その2人にも検証に付き合ってもらうかしらね。放送で至急呼び出して」
「は、はい!」
慌てて出ていった奴の後について、俺とリリィも部屋を出た。
部屋を出たところで、1位にはニヤリと笑いながら能力について言われた。
「どうして、能力を偽ってた?」
「あ…」
リリィが変な声をだしていた。そして、仲がいいのか、俺のかわりに説明をしていた。
「それがね!ヴェル君、偽ってたわけじゃなくて、聞かれなかっただけだ。なんて言ってるんだよ?」
「なら、仕方ないな。言う必要がないと、お前が判断したんだからな」
「えぇ!?それでいいの?」
「あぁ。別に665位が自分で判断した結果が、どれだけ世間的に間違っていようが、普通ならあぁ…さすが落ちこぼれの1人。くらいで済む話だし」
「…それって褒めてないよね」
「それはいい言いわけだな。今度から使わせてもらう」
「ははっ!そうでしょ?」
どうやら、リリィだけは納得がいっていないようだ。だが、木の下にいたイヴとマイク、それに走ってきた2人に手を振っていた。
「あ、あの…私は」
「君の能力の確証を得るための検証をさせたもらう」
「え…?でも、私」
マイクが俺の横に来て耳打ちしてくる。
「どういうことだよ?てか、なんであいつらいるんだよ?」
「簡単にいえば実験体だな」
「実験体?」
「まぁ、聞いてろ」
そういえば、マイクは文句ありげな顔でイヴの方を見た。
「というわけで、君がこの2人の能力を入れ替えた可能性がある。やり方が分からないなら…まぁ、同じことを繰り返すしかないが、出来れば怪我人が出ない方向で頼みたい」
案外あいつはずぼらな性格なのか、最悪あの時と同じようにビンタしていいといったぞ。ビンタされた方が引きつった顔になった。
とはいえ、学園1位は偉大だ。文句を言えるはずもない。もちろん、イヴもだ。
「…わかりました」




