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react a time  作者: 廿楽 亜久
第2幕
15/18

14

説明を聞き終えたマイクは、驚きながらも


「つまり、イヴは、神ってことっすか…?え?いや、どういうことっすか…?」


俺たちですら、疑うレベルだが、確かにそう言ってしまえばすべての説明がつくのも事実だ。


「だーーッ!!よくわかんねぇけど!」


よくわからないのか…


「とにかく、イヴは俺の友達で、こっから追い出されるのはいやってところは変わらないんです!そのために俺が何かできるなら、やりますから!!」


おい。こいつ、ほとんど理解してないぞ…?

リリィもさすがに驚いてなんと答えればいいのか迷っていた。


「お前、今の話半分も理解してないだろ」


さすがに、俺がそうツッコミを入れれば、マイクは図星って顔をしながらも、無駄な熱血で言い返してきた。


「り、理解してるって!つまり、イヴがこっからでたら、世界が崩壊するからリリィ先輩が時間を戻して何度も繰り返してるってことだろ!?なら、イヴが追い出されないようにすればいいんだろ!?」

「…」

「ま、まぁ、やることは…合ってるよね…?」

「ほら!」

「ほらじゃない。なんだ。その数学の答えだけを当てて、証明なんかいらねぇ。結論さえ合ってればいいんだよ!ってノリは」


いや、以前にこの数学の証明を、計算したらその答えだから。見たら全員が平行四辺形だと思うから。などと書いたバカはこの男なのだが…


「それで問題ないだろ!?ね!先輩?」

「えぇ!?あ、う、うーん…まぁ、ヴェル君の例えはよくわかんないけど…まぁ、イヴちゃんの追放を止めるところはそれでいいんじゃないかな?」


どうだ!って顔で見てくるマイクに何も言わないでいれば、リリィは気づいたように俺の方を見た。


「今の仮説、先生たちに伝えてみない?もしかしたら――」

「ダメだ」

「え?」

「それはダメだ」

「…どうして?」

「なんだよ?珍しいな…」


マイクまで変な顔で見てきた。


「それを伝えて、もし仮に同じ結論に至ったとして、あいつらは何をする?」

「え…?あ…それは」

「イヴを今までのようにただの落ちこぼれの生徒として学校においておくか?」

「…」


そう。あいつらは、神だのなんだの崇めだし、あわよくば自分たちにも能力を…と集ってくるかもしれない。それは、イヴが望んでいない。

いつかの授業で言われた。


『こうして、みんなでのんびり過ごせるっていいよね』


俺は、そんなことには一切同意しないが、いつの時代も、人の願いを叶えてくれと言われ続け、誰も対等に接してはくれなかった。そして、人の姿で現れた時には化け物と罵られてきたイヴには、それが嬉しく、一番の願いなのだろう。

だからこそ、俺は助けられる可能性を捨ててでも、のんきにこうして繰り返す日々を選んだんだ。

それは、俺にとっても苦ではないしな。


「そう、だね…ごめん」


リリィは何となく察したのか、俺に謝った。マイクは俺とリリィを交互に見ては、頭に?を浮かべてる。

これ以上深く聞かれても面倒なので、話を逸らすことにした。


「それより、マイク。お前、なんでここにいるんだ?部活でも通らないだろう」

「え?あーそれは、ヴェルと先輩見つけたからだけどさ」

「見つけたって…寮とも校庭とも逆だろ」

「あー俺、ちょっと体育館に用があってさ」


マイクは陸上部だ。体育館に雨の日以外に用はないはずだが…以前に、運動部は放課後というものは案外テリトリーが発生していることが多く、体育館は特にそうだ。ただでさえ狭いせいか、区画には厳しい。


「ほら、前の…」


言葉を濁すが、それが前イヴにちょっかいを出してきたやつだとはわかった。そのマイクの握った拳が結構本気だ。何をしに行ったのかは、一旦置いておこう。あまり根に持つタイプではないが、噂で聞いてその時の怒りがまた再加熱された。なんてことは、こいつはよくある。


「って、違う!!絶対今ヴェルが思ったことはちげぇからな!?別に殴り込みに行ったわけじゃねぇよ!?」

「なんだ。違うのか」

「違う!!ただ、ちょっと能力がどうのこうのって…そういう話を聞いて…」

「殴り込みに行ったのか」

「だーかーらー!!!!ちげぇって!!!能力が変わったとか噂になってて、そんで部活の奴らとその噂が本当か調べに行っただけだって!!」

「で?」

「で?」

「だから、どうだったんだ?その噂は」

「あ…それがさ!マジだったんだよ!!」


その言葉に、リリィも俺も驚く。能力が変わるなど今まで聞いたこともない。マイクの興奮ぶりを見る限り嘘とは思えない。


「2人の能力が交換されててさ!あと1人はなんも変わってなかったんだけどな」

「そんなことあるの?」

「でも、みんな言ってましたよ?」

「あ、確かにそうなのかもしれないけど…」

「にわかに信じがたいな」

「ちょっとは信じろよ!?友達だろ!?」

「お前がバカじゃなければ信じるんだがな」

「バカって言う方がバカなんだよ!バーカ!」

「バカって言ってるよ…」


リリィが呆れているが、まぁ、そんなことは調べれば簡単にわかることではある。というか、マイクの言葉を信じていないわけではない。リリィもそうだ。マイクの言っていることを信じてはいるが、何故という部分が重要なのだ。


「2人して難しい顔して…そんなに俺信用ないっすか…?」

「え、あ、ううん!そういうことじゃなくて…」

「なら、体育館行ってみりゃいいじゃないっすか。まだいますよ。あの2人」

「そう?じゃあ、ちょっと聞きに行ってこようかなぁ…」


リリィとしては普通に返したつもりなのだろうが、それは遠まわしにマイクの言葉を信じていませんって言っているようなもので、さすがのマイクも引きつった表情をしていた。

じゃあね。といって、体育館に向かうリリィにマイクは先輩だからか、怒鳴ることもできずその場でただ見送っていた。


「なんだ…気にするな。ああいうやつだ」

「う゛…さすがに俺も傷つくぜ…」


肩をガックリ落としたマイクは、とぼとぼと本来の部活動の場所、校庭へ向かった。


「さて、俺も聞きに行くか」



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