09
昼にリリィが来ると聞いていたマイクは、イヴが残るべきだとイヴの分の昼を買ってくると言い出した。普段ならイヴも断るのだが、今回ばかりはマイクの方が正しいことを言っていた。治療の話に関して、イヴがいなければ始まらない。少しだけ申し訳なさそうに、頼んだ。
「なら俺も残っておこう」
「おい!!お前は来いよ!」
「イヴは優柔不断なところがあるからな、俺が助言するべきこともあるだろ」
「…ヴェル。お前、荷物持ちたくないだけだろ」
「半々といったところだな」
「いいからお前は手伝え!!」
結局、毎度の通り購買にくればリリィが困ったように立っていた。
「あれ?先輩?」
「あ、マイク君…ごめんね!本当はすぐに行きたかったんだけど…」
すでに戦場と化している購買。割り込みにくかったのだろう。こういう場面で、マイクはすぐに代わりを申し出る。リリィも困ったようにしたが、イヴのところへ早く行きたいことは本当なので、頼むことにしたようだ。
教室に戻れば、リリィは先程俺に言ったことをそのままイヴに伝えた。
「どうかな…?」
「えっと…」
「私の持論なんだけどね。能力のきっかけになる出来事って、印象深く残ってるものだと思うの。だから、鮮明なイメージのある部分からそれらしいものを探そうと思うんだけど…それでも、見ることにはなるんだけど…」
イヴは俺の方を見る。
「イヴに何か秘密にしたいような過去があるとは思えないが」
「え!?あ、あるよ!?少しくらい…!」
「例えば?」
「え、えーっと…」
視線をさまよわせるイヴに、マイクまでニヤニヤと笑い出してからかい出した。
「思いつかないんすか?」
「そ、そんなことは…」
「それを言ったら、秘密じゃないと思うよ?」
リリィがやっと収拾をつけた。イヴも今のことがあってか、リリィの提案には頷いていた。
「じゃあ、放課後いつもの教室で」
「わかりました」
そういって、話がまとまった時だ。担任が部屋に入ってきた。
「リリィもいたのか…」
「え…あ、はい」
「イヴ。放課後、第3会議室に来なさい。リリィも後で連絡が行くはずだ」
それだけ言って、また教室を出ていこうとする担任にリリィは、慌てて立ち上がり追いかけた。教室をでる直前で、一度イヴに振り返ると
「明日の朝、また来るから」
そういって、教室を出ていった。




