第八話 VIPは…その2
+++VIPは…その2+++
VIPは…幸せ待遇だけど絶対人違いだよ!
「ひゃは、あはははは!!!か、かゆいです!」
「しかし、ミドリ様。これではお身体を洗えませんわ」
「いいです、大丈夫ですよテナさん。私こう見えても十六歳なんでお風呂は一人で入れちゃいますから!」
そりゃテナさんを始めとするお城の爆乳のお姉さま達と比べれば、私なんて冷やかし程度の胸しかないしチビだから小学生くらいに見えるかもだけど、ミドリさんはお風呂も一人で立派に入れる歳よ?
お家じゃ半身浴が好きで鼻歌ふんふん歌ってリラックスするのが日課さ♪
それにこうやって体洗ってもらうとか、逆にむず痒くて爆笑で、お風呂から出た時はぐったりだよ。
「しかし…」
「大丈夫ですよ。昨日もその前の日も無事にお風呂から出て来たの覚えてくれてますよ…ね?」
確かにこのお風呂、お風呂って言うには広すぎだし温泉みたいに石でできてるし植物まであるわで、ジャングルっていうかオアシス〜な雰囲気だけどさ。
そんなに深くないから溺れないし大丈夫だよ。
「……わかりました。では湯殿の外でお待ちしていますので、くれぐれもお気をつけてくださいませ」
「はーい!」
この話の流れ、そろそろ三日経つよ。テナさんは心配性なんだね。
はふー。お湯の中はいいね。
どれどれ。誰も居ないからちょっと、ミドリさんお得意の顔面を浮かせたままの平泳ぎしちゃうかな。
ふふふ。地味に楽しいよ。
あれから一週間。
私はモティ王子のおかげでなんとか野宿ライフを回避したかと思っていたら、すんごい広い部屋まで用意してもらちゃって、しかも私専属のメイド・テナさんが付いてくれているの。
何でか凄いゴージャスな生活をしているのであります!
どんな風にかと言うとねー。
まずテナさんなんだけど、本当のお仕事の名前はメイドさんじゃなくて、えっと…侍女?っていうやつらしいんだ。
ミドリさんはあえてこのお城の雰囲気に合わせてメイドさんと呼ぶよ!ふふん。
なんとそのテナさん、元々は何番目かの王子様に仕えている人らしいんだ。
でも、その王子様は十五歳の頃から自分のことは全部自分でする人なんだって。
だから今回その王子様がテナさんを私に付けてくれたんだよ、ってテナさんを紹介してもらった時にモティ王子が教えてくれたの。
今度会いに行ってありがとう言わなきゃね。
あ、言っとくけどテナさんすっごくデキるメイドさんだよ!
歳は二十四歳なんだって。性格は穏やかさんで落ち着いてる感じ。あと、私と違ってすっごくしっかりしてるよ!
お嬢様ってはじめは呼ばれたけど、遠くから呼ばれてもきっと自分のことだって分かんないからって名前で呼んでもらう事にしたの。
説得に一時間くらいかかったけど、ミドリさんは粘り勝ちしたよ!
テナさんには私の事情はグリーンシルさんからバッチリ伝えられているらしいの。
おはようからおやすみまでほぼテナさんがお世話してくれて、ミドリさんは服装も含めてまるでお伽話のお姫さまみたいな生活を送っているのだ。
お城自体もすっごいけどベットに天蓋付いてるとか凄くない?
マンガ以外で初めて見たよ。
ごはんは見た事無い料理ばっかりだけど、どれもクリスマスとかお正月レベルの豪華さですっごいおいしいの!!
もうワンダフルだよ!
で、気づいたんだけど。
これってさ、VIP待遇ってやつだと思うんだ。
ブイってとこをヴイって発音しちゃう感じのね!
庶民なミドリさんはちびっと落ち着かないんだなー、これが。
だからこうしてお風呂で一人の時間は大切な時間になり始めていたりするのよね。
あとトイレも。
でもそろそろ出ないと、のぼせそうだ。よっこいしょ。
+++
「ミドリ様、お茶の準備ができております。何をお飲みになられますか?」
おぉ!お風呂上がりの一杯ってやつだね♪
さすがテナさん、今日も絶好調だね。
「じゃ、クメル茶でおねがいしまーす!」
一週間の間に色々な味のお茶飲んだけど、やっぱりこのクメル茶が一番おいしいんだっ♡
「かしこまりました。本日のお茶請けはミドリ様のお好きなピモですよ」
「わーい!」
ピモとクメル茶の最高コンボでミドリさんは超ハッピーだよ!
ルンルン気分で今ならこの大っきいガラス窓を十分ぐらいで拭けちゃいそう!
…お?ここから見える遠くのあのカラフルな布の付いてる建物の群れって…
「テナさん、テナさん」
「はい、ミドリ様。何でございましょう?」
「あの賑やかそうな所って、えっと商店街の…サール?ってトコですか?」
ここからだとすっごく小ちゃくて点みたいだけど、人がいっぱい集まってて、やいのやいのしてるのがわかるよ。
おぉ〜、なんか楽しそうだねー♪
「そうでございます。よくご存知でいらっしゃいますね」
「ピースケさんに連れられて来た時に通ったのですよ」
街中で見たあのサール商店街に行ってみたいのよ。
いい匂いがしてた例のお肉とか買い食いしたいのだ。
でもモティ王子に、安全面とか色々あって(言葉がいっぱい流れたのでミドリさん自主的に省略!)、まだお城は出ちゃダメだよって言われてるからまだ行けそうにないんだけどねー。
「ピースケさん…あぁ、ミドリ様を城へ案内された方でございますね」
「はい。ピースケさんはキラッキラしててモティ王子やグリーンシルさんと、いい顔勝負できますよ!」
「まぁ、キラッキラでございますか?」
お、珍しくテナさんが食い付いて来たぞ。
イケメンはどこでも正義みたいだね!
「そうですよ。私絵が下手だからどんな人かは上手く伝えられないけど、今度会ったらテナさんに紹介しちゃいますね!」
「はい、楽しみにしております。私の元の主様(あるじさま)もお若いですがとても素敵な方なので、機会がありましたら是非」
テナさんの付いてる王子もイケメンってことだね!
楽しみだ♪
「紹介しあいっこできたらいいですね」
「そうでございますね」
「ピースケさんってばまた明日ねって(私が)言ったのにあれから一度も会えてないんです」
私を放置してそのままだよ。
拾い主?としてちょっとくらい顔出してくれてもいいと思うんだ。
「まあ…」
ありゃ?!テナさんそんな悲しそうな顔しなくても大丈夫だよ?!
「きっとピースケさんは照れ屋で面倒くさがりなんですよ。だから私から会いに行こうと思うんです!」
別れた時の態度からして、照れが一でもの凄く面倒が九くらいの比率だと思うけどね。
それでもミドリさんはめげないよ!
お城から出れたら速攻ピースケさん探しちゃうんだから!
「会いに…でございますか?」
「はい、そうですよ!きっとすぐにピースケさん捕まえられると踏んでます!」
名探偵なミドリさんがすぐに取っ捕まえちゃうんだからっ。ふふん!
待ってろよ、ピースケさん!!
「なんだか意気込んでいるねー」
ん?このふんわりヴォイスは…
「モティ王子!」
「やぁ。どうだい、不便は無いかな?お邪魔するよ」
「不便なんて無いよ!みんな優しくしてくれるし、むしろ幸せ待遇だよ〜。ささ、ここ座って!」
「ありがとう」
モティ王子は大体二日おきぐらいの間隔で会いに来てくれるんだ。
忙しいみたいで、僕の休憩時間なんだって言ってこっそりお仕事抜けて来てくれるの。
王子がグリーンシルさんに見つかって回収されるまでの大体三分とか十分くらいしか話せないけど、優しさはぽわぽわって伝わって来るよ。
でも今日はグリーンシルさんも来てくれているね。
「ほら、グリーンシルさんも立ってないで座ってくださいっ」
王子の側に立ってるだけじゃ疲れちゃうよ?
せっかく座るとこいっぱいあるんだから使えばいいのに。
「しかしミドリ様、」
「しかしもおかしもありませんよ。私に会いに来てくれたんですよね?」
「もちろんそうでございますが…」
おお、グリーンシルさんってば意外と粘るな…。
さては眼鏡キャラなだけあって堅物属性があるね?!
でもミドリさんもネバネバに粘るよ!
「だったら私におもてなしさせてください!」
「ほら、グリーンシル。ミドリさんがこう言ってくれている事だし、部屋の主には従っておいたらどうかな?」
モティ王子分かってるね!
そうそ。この部屋ではミドリさんが法律だよっ!
「…わかりました。では、失礼致します」
よし。なんだか一仕事こなした気分だよ。
テナさんが空かさずお茶を出してくれているから私って言うよりテナさんがもてなしてくれてるね。
しかしこの景色良いもんですな〜。
モティ王子とグリーンシルさん隣に並んで座ってると絵になる感じだよね。キラッキラの♪
あぁ、でも…
「ここにピースケさん居てくれたらキラッキラな感じが増すんだけどなー…」
「おや?ミドリさんにまだ会いに来てないのかい?」
「うん。お城に連れて来てくれてから会えてないよ」
「そうか…。明後日会う予定があるから、ミドリさんが会いたがっていたと伝えておくね」
「わーい!お願いするね!」
モティ王子はほんわか笑って頷いた。
「さて、ミドリさん。今日ここに来たのはね、君に報せを一つ持って来たんだ」
「しらせ?」
なんだろう?
「うん。この間、君にどうやってこの世界で暮らしてもらうかを”ミドリ様”の伝承を知る者達と話し合っていて、とりあえず護衛を付けて街へ行く事も可能なんだけど君の身分に疑問を抱く者が現れて誘拐なんてことが起こったら大変だから、申し訳ないけどもう少しの間外へ出るのは我慢して欲しいって話したの覚えているかな?」
「うん、覚えてるよ」
そうそう。省略したとこは、モティ王子こんなこと言ってたね。
「その”もう少し”の期限が決まって、君が城の外へ行ける日が決まったんだ」
おお!外ってことは…
「それって、ピースケさんにも私から会いに行けるってことだよね?!」
「そうだよ」
わー!よっしゃ。待ってろよ、ピースケさん。
会いに来てくれなかった分抱きついちゃうからね!
「いつ?!」
「五日後だよ」
「わーい!」
早く来い来い!五日後〜♪
「で、その前日に第一王女の成人の儀があるんだ」
第一王女さんかー。
きっと美人でキラキラなんだろうね!私も会ってみたいよ。
「それはおめでたいね!どんなことするの?」
「城の大階段を使って国民の前で戴冠式とスピーチをするんだよ」
「ほぅほぅ」
きっと豪華なんだろうね、そのお式。
こう、紙吹雪とか舞ってさ。ファンファーレ的なのが響いて…うん。素敵だね!
お城でやるってことみたいだから私もこっそり見れるかな?
っていうかもう見たくて仕方が無いよ!!
「ミドリさんの席も用意してあるからね」
「え?!お式近くで見れちゃったりする?」
「うん。確か僕らの近くに席が設けられるはずだよ。そうだったよね?グリーンシル」
それって超特等席じゃないかね?!
「はい。ミドリ様は緊張なさるかも知れませんが、私も近くに居りますのでご安心ください」
「緊張…?」
なぜに?私ってば見るだけだよね?
「あ、その時にミドリ様のお披露目式もするから、よろしくねー」
ん?今なんかサラッと…
MI・DO・RI・SA・MA・NO…O・HI・RO・ME?
ミドリ様?あぁ、ミドリ様ね。…………ミドリ様?!
「ミドリ様って……わ、わ、わ…」
いや、まさか。そんな…ね?
「うん。君だよ、ミドリさん。いや、ミドリ様」
「うぇーーーーーーーっ?!」
「ははは、豪快に驚いたね。と、言うことだから____」
ま、待って………………今何を言われても………
+++
【冷静担当(現実での出現率八パーセント)】:「えー、本体がフリーズしたので脳内会議始めまーす。ミドリ様お披露目式について意見のある人ー」
【無邪気担当(出現率七十パーセント)】:「はいはい!王女様キレイかな?それともかわいいかな?」
【かわいい担当(出現率十パーセント)】:「かわいい方が好き〜!」
【お怒り担当(出現率二パーセント)】:「”脳みそが”無邪気とかわいいは黙ってろっ」
【不運担当(出現率十パーセント)】:「なんで私なんかが…あぁ、不運…」
【お怒り】:「お披露目って必要ないだろ」
【冷静】:「確かに必要性が分かりませんねー」
【不運】:「なんででしょうね…はぁ、城の大階段って言ってましたよねあそこテナさんに案内されて一回行きましたよね?高いじゃないですか…高いとこ苦手なのに…不運だ…」
【かわいい】:「不運ちゃん落ち込んじゃった〜!かわいいものあげよっか?」
【お怒り】:「うるっせ!かわいい黙ってろ!」
【かわいい】:「お怒りちゃん怖〜い…かわいくなぃ…」
【無邪気】:「ねーねー、私ちんぷんかんぷん!ミドリ様ってだぁれ?」
【お怒り】:「あ?無邪気通り越してバカかよ。んなもの……そうだ。誰だよミドリ”様”って!」
【冷静】:「ウィフルの伝説の人物ですね。モティ王子のお話によればミドリがミドリ様だと…」
【無邪気】:「ミドリはミドリ様?」
【かわいい】:「ミドリ様はミドリ?」
【不運】:「穴に落ちたばっかりに……不運………」
【お怒り】:「そうだよ、穴に落ちただけでミドリがミドリ様だって?!違うだろう!」
【無邪気】:「でもふかふかベッドにおいしいご飯にー」
【かわいい】:「かわいいドレスがいっぱいで〜」
【無邪気&かわいい】:「幸せ待遇〜♪」
【お怒り】:「おい、忘れるな!本来のミドリは電車の扉に面白可笑しく挟まれて周りの人間に失笑される様なヤツだぞ!」
【不運】:「そうです。でも今はなぜかお披露目式の話まで…私、もうすぐ消えるのか?…」
【冷静】:「落ち着いてください、不運。この国に来た時点であなたのフィールドですからー。しかしモティ王子の話を聞く限り、ミドリがミドリ様だという揺るぎない確かな証拠が何一つないですよねー。元は伝承ですしー」
【無邪気】:「ミドリ様はミドリじゃない?」
【かわいい】:「ミドリはミドリ様じゃない?」
【お怒り】:「それだ!それだ!」
【冷静】:「なるほどー。と、言うことは____」
+++
「_____さま、ミドリ様!?」
「は、はひ?!」
あら?テナさん。
「第一王子様がミドリ様のお披露目式をなさると仰られたところから、ミドリ様がずっと固まっていらっしゃったので第一王子様と宰相様のお見送りを私がさせていただきました」
「あ、ありがとうございます…」
さすがしっかり者さんだ…。
っていうかモティ王子とグリーンシルさん帰っちゃったのね。……いつの間に?
「では私、さっそくお披露目式の準備に取りかからせていただきますので御用がございましたら鈴を鳴らしてくださいませ」
「はひ…」
あぁ、そんな楽しそうに準備してくれるんだねテナさん……
でもでもさ。
ま、まずいよ…
「怖い、この幸せ待遇やっぱり絶対人違いだよ…」
そうだよ。私ってば不運癖のくせに良い事ばっかり起きてるってさ…おかしいよね?!
うん。
その上お披露目式だって?!
わたしゃそんな凄い人じゃないよ!
単なる女子高生じゃ!
絶対、絶対、ぜーったい変だよ!!
きっともうすぐ『人違いでしたー、ごめんねー』ってなっちゃって、宿代とごはん代もろもろを出せって言われちゃったりしたら…
「…私ってばお金無いよ?!」
まずいんじゃない?!
あ、あわわわ。
千円で足りるかな?!
………うん、わかってる。
絶対無理だよね!!泣
どうしよう?!……ごくり…。
ゔ、ヴィアイピーって…コワイモノだったんだ!!!
んぎゃーっっっ!




