第六話 ミドリさま?
「わー、大っきいねー。これがお城?」
洋風とか和風とかじゃないけど、っていうか何風かさっぱり分かんないと言うか見たこと無いけど、品良くカラフルでとにかく凄いよ!
世界遺産っぽい古さがあるお城だー。わー。
手前に見えるお庭も綺麗なお花がいっぱい咲いてるのが柵越しに見えるよ。
「そうだ。ウィフル国が建国された遥か昔からこの地にある」
「へー」
あ。あそこ入り口かな?
長い槍みたいなの持った人が立ってる。
「ヘイワード様!」
「ああ、ヤンか。久しぶりだな」
ピースケさんの知り合いみたいだね。爽やかな笑顔のお兄さんだ。
なんか先輩と後輩っぽい会話に聞こえちゃうけど。
「お待ちしておりました。ルーンの門からヘイワード様が入られるのは半年ぶりでございますね」
「こちらにはあまり用がないからな。待っていたとはここへ私が来る事を知っていたのか」
およ?ピースケさんが片眉上げて不思議そうな顔してる。
「はい。ご指示を承っておりましたので」
「誰の指示だ」
「私ですよ。ヘイワード様」
門の向こう側から声が聞こえると、そこから誰かが出て来た。
「グリーンシル」
「はい」
微笑んで返事をする、ぐ、グリーンシルさんって人もピースケさんと同じくイケメンさんだよ…!
髪の緑色が濃くって長くて艶艶だぁ。それに眼鏡かけてて頭良さそう。
「私がここを通るとなぜ分かったのだ」
「ヘイワード様が少々変わった召し物のお嬢様を馬に乗せてこちらに向かっているという噂が城にまで届きましたので。モンティ王子に御用かと推測致しまてお待ちしておりました」
街で会ったおばちゃんの言ってたこと、本当だったんだー。
っていうかピースケさんどれだけ人気者なのかね!?
んー、イケメンもここまで来ると大変だね。
「相変わらずの優秀ぶりだな宰相殿は」
「いいえ。このグリーンシル、六人の王子と二人の姫をお支えするにはまだまだ力及びません」
さいしょうってのはよく分からないけど、王子と姫を支えるって事はグリーンシルさんはセバスチャン的なお仕事してるのかな。
こんなキラキラのセバスチャンが隣にいたら王子様とか霞んじゃいそうだよ。
それからグリーンシルさんってば八人もお世話してるの?!スーパーマンかね?!
「謙遜もここまでくると嘘に聞こえるな…」
ピースケさんもため息ものなんだね。
うんうん、私もなんかわかるよその気持ち。グリーンシルさんのこと全然知らないけどね!
「そちらの方が噂のお嬢様ですね」
およ?私ってばお嬢様とか呼ばれたの初めてだ。
ちょっとむず痒いね。
とりあえず、あいさつあいさつ。
「初めまして」
おお、瞳の色も髪と同じで濃い緑してるね。
そりゃ名前にグリーンって入っちゃうよね。
「初めまして。私、このウィフル城で王子と姫の宰相を勤めておりますグリーンシルと申します。以後お見知り置きを」
わー!手の甲にチュウだよチュウ!
初めてだよこんな待遇!!
「は、はい。お見知り置きます」
「お名前をお聞きしても?」
「ミドリです」
「…………ミドリ様…ですか?」
「はい、ミドリですよ?」
あれ?このキョトンな反応ピースケさんと同じ気がする。
「ヘイワード様!」
「ああ。用はこの事だ。ついでに最古参のご老人方を呼んでくれ」
「かしこまりました。では私急ぎますので一時失礼いたします。ヘイワード様方はカナルの間でお待ちください」
あらら?なんか慌ただしい感じ?
グリーンシルさんってば走ってっちゃったよ。
「行くぞ」
「はーい」
でもピースケさん落ち着いてるし、大した事じゃ無さそうだね。
「ピースケさん、お城っておいしいものあるかな?」
「ああ。出してくれるかもな」
「わーい!」
+++
「んー♪なにこれおいしいね、ピースケさん」
ピースケさんに連れられて来たのはすっごい広いお部屋。
お部屋もだけど、ここに来るまでのお城の中もすっっっごい広かったし道がいっぱいあったの。
ピースケさんよく迷わずにここに辿り着いたね。
通い慣れてても私なら迷子常習犯で指名手配だよきっと。
で、このお部屋は日当りが良くってハンモックとかその辺の大木っぽい柱に引っ掛けてお昼寝したいかも…じゃ、なくて。
お部屋の真ん中にあるテーブルに座ったらメイドさんがお茶とお菓子を出してくれたの。
メイド喫茶じゃないのにメイドだよメイド!しかも本物!
で、このお茶がなんと飲んだこと無い味だったけど、すっごいおいしいの!
さすがお城なだけあるよね!
「クメルという果物の葉から取った茶だ」
「へー。この焼き菓子も最高だし、お城って私初めて来たけどすっごいね!」
もう大興奮だよ!!
「そうか」
あれ、ピースケさんはこういうのエンジョイしない人?
「やあ、待たせてごめんね」
ほわほわほわーっ!
来たよ、またイケメン来たよーー!
たれ目でほんわかした顔のイケメンさんだ。
「いいえ。モンティ王子」
あ、ピースケさんが頭下げてるからこの人が王子様かー。
実物は絵本の王子様よりイケメンで癒し系なんだね。
今居ないけどグリーンシルさんが隣に居ても全然大丈夫だよ。きっとダブルで輝いてるから目が幸せだよ!
もちろんピースケさんも負けずにキラキラだけどね。
「大体の話はグリーンシルから聞いたよ。ヘイワードは二か月ぶりかな」
「はい。お久しぶりです」
「そうだね。僕直属の騎士団員なのだからたまにはふらっと顔を見せに来てくれてもいいのだけど…」
へー、ピースケさんってばこの王子様の部下ってことか。
「何をおしゃいますか。総指揮官であられるあなたの指示で私たちはつい先日まで国境付近まで出向いていたというのに」
「ああ、そうだったね」
あら、あっさりそこは認めるんだね王子様。
「君がミドリ様かな?」
「はい、ミドリですすっ」
痛たたっ、緊張しすぎて舌噛んじゃったよ。恥ずかしーっ。
あ、この人も髪と目が緑色だ。
「くくっ、そんなに緊張しないで。僕はただ生まれたのが一番早いから第一王子というだけだから。名前はモンティだよ」
なんかいっぱい言葉が出てきたぞ。
えっと、言ってる事をつなげると…
「ただのモンティ第一王子様?」
「おい!」
「へ?なに?」
ピースケさんなんでそんな怒ってるの?
「くっ…はははっ!うん。君は面白い人なんだね。ミドリ様の好きに呼んでくれていいよ」
はれ?なぜに面白い人認定してくれちゃったのかな?
んー、考えても分かんないしいっか。
それより好きに呼んでいいって言ったよね。
イケメンフェイスに優しいこの喋りがプラスされて女の子にモテそうだよ、この王子様。
よし、決めた!
「じゃあ、モティ王子って呼びますね」
本当はモテモテ王子って言いたいけど、ピースケさんがさっきあだ名は名前と遠いのは動物に付けるって言ってたから、モテ一個取って小ちゃいイを付けてみたよ。
ミドリさんは学習するのです。えっへん。
「うん。あ、ヘイワードもそう呼んでいいからね」
「冗談はやめてください。それからあっさりとこの者の付けた名を受け入れないでください」
「くくっ、相変わらずつれないねー」
モティ王子ってあっさりしてる割に意外と人で遊ぶの好きなのかな。
「ねえねえ、ピースケさん」
「なんだ」
「ピースケ?ヘイワードがピースケなのかい?」
モティ王子ってば声が裏返ってるよ?!
ピースケさんって呼ぶのはやっぱり変なのかな…。
でもピースケさんは私の中でピースケさんだから、ここは開き直ってミドリさんは突き進むよ。
「そうですよモティ王子。さっき私が勝手に付けちゃったんですけどね」
「それでヘイワードは受け入れがたいって訳なんだね。くくっ…」
ピースケさんの眉間の皺が深くなっちゃったよ、笑っちゃっていいの?モティ王子。
ああ、そう言ってる間に皺がアイロンでもかけないと取れなさそうなくらい深くなっちゃってる!
よし。ここはミドリさんが一役買っちゃうぞ。
「まーまぁ、ピースケさん落ち着いて」
「…誰のせいだと思ってるんだ」
「ふぇ?!」
ちょ、片手で両方のほっぺをむぎゅ!って反則だよピースケさん!
これじゃ喋れないよ。
でもモティ王子笑ってるしピースケさんの皺が薄くなったから、いっか。
ミドリさんは大人しくむぎゅ!を受け入れておくよ。
「これっ!ヘイワード坊、ミドリ様に向かって何をしでかしておるんじゃ!」
「…すみません」
おお!ピースケさんが坊呼びされてタジタジになってる。突然やって来たおじいちゃん凄い。
でもそこまで怒らなくてもいいよ?
そして誰…?!
「こちらはウィフル国王城古代史・史官長のイバ老師です」
おじいちゃんの後ろからやって来たちょっと髪が乱れちゃってるグリーンシルさんが教えてくれた。
かなり急いだのかも…ぅをっと?!
「初めましてじゃの。よく来てくださった!」
「はい、どうも」
ちょちょちょ!おじいちゃん大興奮?!
そんなに握手で手をぶんぶん振っちゃったら私どっちが上か下かわかんなくなるよ。
「老師、それくらいにしなよ。君の会いたかったミドリ様はかわいいお嬢さんなんだから」
「おお、こりゃ失礼」
はぁ、脳みそシェイクされたかと思ったよ…。
モティ王子止めてくれてありがとー。
「会いたかったミドリ様に会えてつい興奮してしもうたわ」
「おじいちゃんは私に会いたかったんですか?」
なぜに?私はおじいちゃんのことさっきまで知らなかったよ?
「そうじゃ。王城古代史を担当しておる者と王家の者は、遥か昔からミドリ様をずっと待っておったんじゃ!」
遥か昔?ずっと???
「私十六歳なので人違いじゃ…?」
「いいや、我々の国ではその様な衣は存在せん。あなた様で間違いなかろう」
この普通のセーラー服が?
私ってば不審者っぽい立ち位置にいる??
「老師。理解していないですよ、この表情」
ピースケさんってば私の表情まで読める様になっちゃったのかね?
仲良しポイントがまた上がった気がするよ!ふふふ。
「そうか…いきなりでは分からぬかもしれぬな。少しばかり昔話を聞いてくれるかの?ミドリ様」
「は、はい」
「ウィフルの国にはな、建国に携わった三人の賢者がおったんじゃ」
「はあ」
賢者?ってよく分かんないけど、とりあえず凄い人ってことだよね。
「その内の一人にな、先見の力を持った者がおったんじゃ」
「さきみ?の力ってなんですか?」
ささみなら鶏肉って分かるんだけどな。
「うむ。分かりやすく言うと未来を見る力じゃ」
「未来…」
ちょ、凄過ぎだよ!それってエスパーって事だよね!?
「その先見の力でな様々な戦を勝ってきたとも言い伝えられておる」
「ほへ〜」
そりゃ便利だね。
あれ?でもちょっとズルっぽい気もするよ。いいの?!
んー、みんな頷いてるからいいのか…?
「その賢者がの、建国後の平和なある日、今までで一番の先見をしたと言ったんじゃ」
「ほうほう」
なになに?どんな事言ったのかね、そのエスパーさんは。
「その内容がこの石盤に残っておるんじゃ」
おじいちゃんが指さしたのは古い石の塊。
なんか歴史の授業で見たことあるような、でもそれとは違うような、宇宙語的なカタチのまるっとした文字っぽいのが彫ってある。
カタチはなかなか私の好みだけどね。
「へー。これってなんて書いてあるんですか?」
れれれ?なんかみんなざわめいてる??
ぎゃ!?ピースケさん、そんな驚いた顔しなくてもいいんじゃない?
せっかくのキラッキラフェイスが台無しだよ。
「この文字分からないのかい?」
もももモティ王子ぃ〜!
王子様だけは普通に聞いてくれるんだね。ミドリ嬉しいよぉー。
その笑顔壁紙にしてもいいですかー?
癒し系はどんな時も癒し系なんだね。ホッとするよー。
「はい。こんなヘンテコな文字わかんないです」
それはもうさっぱり。
「そうかー。やっぱり君は伝承のミドリ様なんだね」
「え?!」
モティ王子なに一人でうんうんって納得してるの?
電照?
私ってばライトじゃないよ?!
「やはりその様ですね」
グリーンシルさん、それに他のみんなまで?!
なになに?!
私はミドリだけど、ミドリ様って何?!
色んな意味で明るいの?
「ピースケさんどどど、どういうこと?」
もう最後に頼れるのはピースケさんだよ。およよ。
他の人よりほんのちょっとお友達歴長いもんね。
お願い、ヘルプミー!
「この文字はな、遥か昔にウィフルの地で発祥した言葉で今では他の大陸でも一般的な文字として使用されている、言わば共通語だ」
「へー」
道理で私が読めないはずだよ。
みんな私を焦らせるつもりだったんだね。まったくまったくー。
「つまりこの文字が読めないと言う事はこの世界の者ではないということだ」
ほうほう、なるほどね。
あり?!ピースケさんなぜにそんなに私をジッと見るのかい?
んー、あの目はなんか”分かるだろ”って言ってる様な…。
えーっと
文字が読めない=この世界の人じゃないってピースケさん言ったよね。
私も読めないよ。
あれれ??
ってことは…
「え…私、この世界の人じゃない?!」
うぇ?!まままマジ?!
でも私喋ってるの日本語だよ?!なんで通じてるの?どういうことかね??
「今気付いたのか…」
ピースケさん鼻からため息ってまさか、知ってたのかい?
…なんか悔しいぞ。
「き、気付いていたよ?ピースケさんニホンもチキュウも知らないって言ってたし、ここ見た事無い物もあるもんね」
どうだ、ミドリさんの秘技”知ったかぶり”!!
「それでな」
あ、流した?!
さらっとしれっと私のどや顔を流しちゃったとかピースケさんやるな…。
「この昔に彫られた石盤には[彼方の世界より訪れたるミドリ、ウィフルに新たな風を運ぶ]と書いてあるんだ」
「ほぅ」
丸っとした文字はそんなことが書いてあるのね。
「でな、この賢者の予言が代々伝承…言い伝えられているというわけだ」
デンショウってライトの方じゃなかったのか。
なるほど、なるほどー。
さすがピースケさん、分かりやすいよ。
「私の名前とおんなじミドリって言葉があるんだね」
「それは君のことだよ、ミドリ様」
「私?」
モティ王子何言ってるの?
今、私のことだって言った?!
「そうじゃ。ミドリ様、あなたがそのミドリ様じゃ!」
「………ええっ?!」
な、なななななな?!
なんだすとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ?!




