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撮影会

 駅に着くと、僕は、座ろうと駅のベンチに近づく。今の時間の一時間後には 恐らくこの席には座れないであろう。5分後に特急の電車、10分後の鈍行の電車がくるのを確認してこのベンチに座ると、優越間を噛み締めて寛ぐ。朝寛ぐというのは、短時間だけにしろ 嬉しい物であった。 ホームをざっとみると 僕の他に6名そこにいた。この時間帯、このホームはいつも僕一人だけなのだが、今日は違うようだ。いつも一人でホームで電車を待つ事をなんとなく誇りに思っていたので、癇に障る。苛つきながら,他の人をざっと見ると坊主頭の男子学生、茶色のブラウスが印象的な女子高生、20代であろうと思われる女性、歳を重ねた立派なサラリーマン風な男、赤いランドセルを背負っている小学生、それとさえないフリーター風の男という構成であった。皆、それぞれの目的地に向かうための乗り物を待っている。最近梅雨のせいか みな憂鬱な顔に見えた。特筆すべき人はフリーターの男だ。 彼は黄色い線の上を棒のように突っ立っている。彼の顔をこっそり伺うと、驚くほど蒼白で、死を連想させるといっても過言ではなかった。僕はこのホームの誰よりも死に詳しいから言える事である。とにかく肌は蒼白で目は電車のレールに向かわれている 彼の右手は震え、左手で爪をギシギシと噛んでいる。とてもお行儀がいいとは思えない。


彼を観察しているうちに、踏切が鳴り、電車がやってくる。すると、彼は、黄色い線をひょいと軽くジャンプし、ホームの一番端まで足を寄せる。落ちる寸前だ。彼は口を大きく開け、


『ナンバー117 行きます!!!』


と言い残し、電車が来る寸前に線路に身を投げ出した。


ホームは一瞬に日常とはかけ離れた光景へ変わっていた。 赤い液体、鮮血が一面にホームのあらゆる場所に舞っていた。 僕がやられ多時もこうだったんだろう。今は匂いがかげないが、生臭いつんとする匂いが駅内に充満するであろう。特に湿気が強良い間の時期は。


現場にいた人々はこんな現場に遭遇したら正気でないだろう。しかしそこにいた4名は、皆颯爽に携帯電話を取り出し、轢かれたフリーター、いや死体を撮影しだしたのである。 僕は開いた口が塞がらなかった。 あの噂はホントだったのかと。 この人たちこそ正気ではない。男子高校生ははぁはぁ言いながら、死体を眺めている。興奮しているのだろうか。 女子高生は笑いを一生懸命こらえながら、OL風の女性はにんまりしながら、サラリーマン風の男は無表情に、小学生はおもちゃを見ているかのように目輝かせながら 各々撮影している。皆無言で駅の中は踏切の音しか聞こえない。 これが今の時代、自殺がを目の当たりにした人の反応なのだろうか。 そのように僕は信じられなかった。


写真撮影会の最中、駅員が

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