序章 いつもと変わらない日々
まだはじめたばかりですが、何かあったらコメントお願いします
暗い部屋に少年が一人、夏のものすごい熱気でベットの上で唸っている。
カーテンは舞い上がることも無く、外の光も入ってこない。寝る前に窓を開けるのを忘れていたらしく、どこかにある昼間の砂漠と化していた。
さっきまで、暗かった部屋に一つの長方形をした光が輝きだす。その光は周りを照らし、
自分がベットの置きスペースに置かれている携帯電話だということを示しているようだった。そのあとに、光を放っている携帯電話から目覚し時計のアラームが鳴り響いた。
それに気付いた少年は手を伸ばし、携帯電話を探し始めた。
手はとどいているはずだが、本体を見ていないためどこにあるのか分からないでいた。
あちこち手を伸ばしながらも、携帯電話を掴み取り、顔に近づけ指で目を擦りながらじっと画面を見つめると、デジタルで六時三十分指していた。
それを見た少年は、手でぼさぼさの頭を掻きながらゆっくりベットから体を起こした。
額にはかなり汗を浮かべていて、髪自体にも水分がしっかりと染み込んでいる。
一つ、大きな口を開け、あくびをしながらベットを降りた少年は、正方形の部屋に一つしかない窓へと歩いていく。
まず、カーテンに手を伸ばすと、勢いよくその場にあるものを退けるように動かした。それとともに、レールが動く音が密封された部屋に、大きく響く。
さっきまで暗かった部屋に、日の光がいっきに流れ込む。暗かった部屋がいきなり明るくなったせいか、少年は腕で顔を隠した。そんなこともすぐになれ、次に窓の鍵を外し、窓を開けると少しだが、風が少年に程よく当たり、水分をしっかりと染み込んだ髪がなびいている。
「はあ、涼しいな。」
少年は一言呟いた。
そのあと、シンプルな学習机に置かれたバックに手を伸ばし、その隣にある本棚から教科書をどんどん詰め込み、チャックをゆっくり閉めた。
壁にかけられたシワだらけの制服を、ハンガーから外したあと床に置き、着替え始めた。
着替える動作は遅く、まだなんども、目を閉じたり開いたりする動作を何度も繰り返している。
ようやく、数分かかって着替え終わり、机の置かれたバックを手で掴み、部屋を出ようとしたとき、制服から名刺サイズのカードが落ちる。
そのカードには、『生徒証明書』と明記されていて、名前の欄には『佐藤 塔矢』、学校名には『新東京都 第一中学校』、学年には『三年』、と書かれている。
それをつかさず拾った佐藤塔矢は、ドアノブに手を伸ばし部屋を後にした。
部屋を出ると、廊下が左右に広がっており、左に一つ、右に二つ部屋がある。
左にある部屋を一つ通り過ぎたところに階段があり、塔矢は半分寝ている寝ている足で一段、一段ゆっくり降りて行った。
降りた先にはリビングがあり、塔矢の母の趣味でかなりの洋風に仕上がっている。花柄のじゅうたんや花柄のカーテン、白く見えるがまたもや花柄の花瓶。
塔矢の母は、洋風=花の印象が大きいらしく、リビングが全世界から花を集めたような一つのお花と化していて、
今にも花粉が、部屋の空気中に浮かんでいるかのようだった。
花柄の木彫りが沢山ついている棚の前に立った塔矢は、戸を開け、食パンを取り出した。その食パンを潰れてしまいそうな勢いでテーブルに置いた塔矢は、冷蔵庫に入っていた牛乳をコップに注いだあと、一緒に胃の中へ流し込んだ。
「何だこの花畑みたいな部屋は・・・・こんなんじゃ、友達も呼べやしないじゃないかよ。」
愚痴を言っている塔矢だったが、この部屋、この家自体1人の少年しかいなかった。
塔矢の母というのは、大手会社の社長で茶髪のロングへヤーが目立つ、キャリアウーマンだ。何かしら、いろんなことで忙しいらしく、いつも塔矢が朝、起きている頃にはいつもいなくなっていた。そして、夜も遅く時々出張や、外国への会議に行ったりして、塔矢は最近、会話というものをしていなかった。
じゃあ逆に父のほうはということになるが、塔矢の父は母とあまりうまくいかなかった。塔矢が小学5年のときにいなくなっていた。
牛乳の入ったコップを、キッチンの流し台に置いたとき、近くにある1つの紙に気がつき、目を通すと、
『三日間、アメリカのほうに行くので、家には帰ってきません。ご飯は残ったもので済ませてください。 母より、』
と書かれていた。
塔矢は、いつもいないくせのよ、と言いながら手で丸め、花柄のゴミ箱に投げ捨てた。
塔矢がため息を一つつくと、それと同時に玄関からチャイムが一つ鳴り響く。それを聞いた塔矢は、急いで玄関に走り、ドアをゆっくりと開けた。
そこにはいつもと変わらない日の光が、塔矢を包み込み、いつもと変わらない、七月 十五日 金曜日が始まった。