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監査令嬢

投獄された悪役令嬢は、ブチ切れながら監査する

作者: 涙目
掲載日:2026/07/25

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

「アメリア・フォン・ローゼンベルク!」


卒業パーティーの最中、王太子の声が響き渡った。


「お前との婚約を破棄する!」


会場がどよめく。


アメリアは静かに瞬きをした。


「理由をお聞きしても?」


「貴様は聖女エリナへの嫌がらせを繰り返した!」


「しておりませんが」


「証人はいる!」


「誰ですの?」


「エリナだ!」


「本人ですわね」


話にならなかった。


そのままアメリアは衛兵に連行された。


---


そして投獄された。


狭い牢屋。

冷たい石床。

硬いベッド。


アメリアはため息を吐く。


「最低ですわね……」


処刑だろうか。

追放だろうか。


どちらにせよ碌な未来ではない。


そんなことを考えていると翌日、牢の扉が開いた。

兵士が何人も入ってくる。


そして運ばれてきた。


机。

椅子。


帳簿。

書類。

帳簿。

書類。

帳簿。

帳簿。

帳簿。


「……」


アメリアは黙った。

兵士も黙った。


部屋の半分が帳簿で埋まった。


---


「何ですの、これは」


「監査資料だ」


「監査……?」


「王命だ」


わけがわからない。


兵士はさらに書類を積み上げながら言った。


「喜べ」


「喜べ?」


「これを終わらせる限り生かしてやる」


---


アメリアは人生で初めて思った。

処刑の方がマシではないかと。


---


数日後。


アメリアは机に向かっていた。


目の下には隈。

髪は少し乱れている。


そして。


「不正だらけですわね」


静かに呟いた。


---


王立騎士団。


消耗品費。


年間金貨三万枚。


---


「剣を何本購入したらこうなりますの?」


---


調査。


---


実際の購入数。


帳簿の半分。


---


「横領ですわね」


ポイ。


証拠箱行き。


---


次。


---


王宮厨房。


接待費。


年間金貨一万二千枚。


---


「どなたが毎日宴会してましたの?」


---


調査。


---


王太子派閥。


---


「横領ですわね」


ポイ。


証拠箱行き。


---


次。


---


魔導省。


---


研究費。


金貨五万枚。


---


「研究成果は?」


---


空白。


---


「横領ですわね」


ポイ。


---


一週間後。


証拠箱が十個になった。


---


二週間後。


二十個になった。


---


三週間後。


牢屋より証拠箱の方が広くなった。


---


「おい」


見張りの兵士が言う。


「また増えたのか」


「増えましたわ」


「不正か?」


「不正ですわ」


「毎日見つかるな」


「毎日ありますもの」


---


兵士は王国の未来に絶望した。


---


さらに一か月後。


アメリアはとある帳簿を発見した。


王太子直属特別会計。


閲覧禁止。


極秘。


そう書かれている。


---


「……あら?」


めくる。


---


「あらあら?」


めくる。


---


「まあ」


---


そして美しく微笑んだ。

挿絵(By みてみん)

---


兵士は震えた。


この一か月で理解していた。


アメリアが笑う時。


誰かが終わる。


---


「見つかりましたわ」


「何がだ?」


「私が無実である証拠ですわ」


---


兵士が固まる。


---


「それだけではありませんわ」


アメリアは帳簿を持ち上げる。


「王太子」


ドン。


「財務大臣」


ドン。


「騎士団長」


ドン。


「魔導大臣」


ドン。


「宰相補佐」


ドドドドドン。


---


「全員終わりですわ」


---


数日後。


王宮大法廷。


王太子は余裕の笑みを浮かべていた。


---


「罪人アメリア! 最後に言い残すことはあるか!」


---


アメリアは微笑む。


---


「ございますわ」


---


バン!


法廷の扉が開かれる。


---


兵士たちが入場。


---


帳簿。


---


帳簿。


---


帳簿。


---


帳簿。


---


帳簿。


---


帳簿。


---


帳簿。


---


「まだあります」


---


王太子の顔が引きつった。


---


財務大臣が青ざめた。


---


宰相補佐が倒れた。


---


アメリアは優雅に紅茶を飲む。

挿絵(By みてみん)

---


「それでは監査報告を始めます」


---


六時間後。


---


王太子、失脚。


財務大臣、逮捕。


騎士団長、逮捕。


魔導大臣、逮捕。


関係者百三十二名処分。


---


そして。


王はアメリアへ頭を下げた。


---


「本当に申し訳なかった」


---


アメリアは笑顔で答える。


---


「構いませんわ」


---


王は安堵した。


優しい人だ。


なんて心の広い女性だろう。


---


そう思った瞬間。


アメリアは一通の書類を差し出した。


---


「ところで陛下」


「うん?」


「監査したところ王家の予算管理にも問題がありました」


---


王の顔から血の気が引く。


---


「三年分ほど確認いたしましょう」


---


「アメリア?」


---


「逃がしませんわよ?」


---


その日。


王は初めて理解した。


悪役令嬢とは。


悪ではない。


---


帳簿で殴ってくる生物である、と。

お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
良く反乱祭りにならなかったな〈各大臣が失脚するレベルの横領だらけ
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