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勇者殺害

アオトの剣が閃く。

四聖剣技一線

──流星閃光シューティングスター


閃光が走った。

星が流れるような軌跡を描きながら、音速の斬撃がアスラに迫る。


空気が焼け、平原の草が一瞬で焦げつく。

その速さは、もはや人間の反応を超えていた。

一瞬のうちに、空間がねじれ、風が悲鳴を上げる。


アスラは剣を逆手に持ち替え、地面を強く踏み込む。

重圧で地面が陥没し、砂が爆ぜた。

次の瞬間、彼の剣と光の斬撃が激突する。


音を超えた衝撃。

爆発のような轟音が空を裂き、大地がうねった。


衝撃波が平原を駆け抜け、砂煙が天へと昇る。

世界そのものが軋みを上げるほどの力の衝突だった。

熱と光が混じり合い、視界が一瞬、白く塗り潰される。


「女神アテナとは、どこまで繋がっている?」


「君に関係ない!」


アオトの声が怒りに震える。


次の瞬間、彼の体が風に溶けたように掻き消えた。

残ったのは、切り裂かれた空気と、地を抉る風の残響。


勇者アオトが連撃を仕掛ける。

風が刃と化し、無数の斬撃が襲いかかる。


四聖剣技五線

──疾風連斬ハリケーンスラッシュ


その姿は風そのもの。

五線を描くように移動し、残光が空を裂く。


音も、影も、すべてが斬撃に飲み込まれた。

百を超える斬撃が、流星の雨のように重なり降り注ぐ。


だが、アスラはすでにその先にいた。


「遅い。」


低く、静かな声が響いた瞬間、

すべての斬撃が弾かれた。


アスラの剣は、まるで時間を支配するように精密だった。

彼はすべての軌道を見切り、わずか指先の角度で打ち返す。


剣と剣がぶつかるたび、火花が夜空を照らし、風が悲鳴を上げる。

空気の摩擦だけで、岩が砕け、砂が宙に舞った。


「“全知全能”ってスキル、たいしたことないな」


「……何だと?」


アオトの瞳が燃え上がる。怒りと焦り、そして初めて感じた恐怖が混じり合っていた。額に汗が流れ、呼吸が荒くなる。アスラはその様子を見て、淡く笑った。


「どうした?その程度か?」


「四聖剣技──奥義を見せてやる!」


四聖剣技・奥義

──終天斬覇シュウテンザンハ!!


大地も空も、時間さえも緊張で引き裂かれる。勇者アオトの剣が、ゆっくりと、しかし破壊的な力を孕んで振り下ろされた!


斬撃は空間を裂き、時の流れをねじ曲げ、世界そのものが音を立てて切断されていく。大気が悲鳴を上げ、光が逆流し、色彩までもが吸い取られるかのように消えた。


一瞬にしてあらゆる存在を押し潰す力──それが奥義の本質だった。


だが、アスラは微動だにしない。


右手の剣が、圧倒的な破壊力を受け止め、衝突点から火花が迸る。


世界が軋み、剣と剣の衝撃波が大地と空を引き裂く。

まるで、世界そのものが二人の戦いのあまりの力に、悲鳴を上げているかのようだった。


「なぜ……斬れない!?」


アオトの声は焦燥に震え、足元の大地が砕け散る。

彼の剣には、神の加護と呼ばれる光が宿っていた。だが、その光すらアスラの闘気に飲み込まれていく。


アスラは一歩前に出て、静かに言った。


「その程度では、“理”は超えられない。」


その瞬間、アスラの姿が掻き消える。

空気が裂け、地平が歪む。

風より速く、光より鋭く――一閃。


アスラの剣が、勇者アオトの剣を断ち切った。

金属の悲鳴が夜空を貫き、砕けた刃が散る。

一拍遅れて、アオトの左太ももに深々と斬撃が走った。


「ぐっ……ぁあッ!」


血が舞う。

赤い飛沫が宙を描き、夜気に溶けて消える。

それでも、アオトの瞳は死んでいなかった。


「……くっ……でも、まだ!」


彼は残る力を振り絞り、全神経を研ぎ澄ませる。

呼吸を止め、心を静め、魂の底から叫ぶように剣を振り上げた。

その瞳には、もはや希望ではない――執念だけが燃えていた。


だが、その瞬間──首が、飛んだ。


アスラの剣は、時間よりも早く振るわれていた。

風も、音も、残らない。


ただ、静寂だけが世界を支配し、夜空の月が、冷たく二人を照らしていた。


アスラは微かに剣を振り払い、血の雫を夜に散らした。

そして、冷たい眼差しで倒れゆく勇者を見下ろす。


「女神アテナ、待ってろよ」


静かにそう呟いた声だけが、夜風に溶けて消えた。


――――


アスラはゼロの様子を見に行くことにした。


予想以上にゼロは苦戦していた。相手の連携に翻弄され、全力で防ぎながら攻撃を返している。

だが、その表情には不思議なほどの余裕と楽しさも含まれていた。


戦いを心から楽しんでいるのか、あるいは何か別の理由があるのか――アスラには測りきれなかった。


「いくらゼロでも五人相手はキツいか」


アスラは低く呟きながら、一歩一歩慎重に距離を詰める。


「やっと体が温まったところだ!少し待っておれ」


ゼロの声には、いつもの軽口ではなく、戦士としての確かな自信が滲んでいた。


相手は勇者パーティー――剣士、槍士、弓士、魔道士、治癒士、総勢五名。


ゼロは大きく息を吸い込み、胸の奥で炎の熱を全身に巡らせる。そして口を開き、声なき咆哮を放った。


──龍炎吐ドラゴンブレス


その劫火は猛り狂う火柱となり、勇者パーティーを一瞬で怯ませる。魔道士が即座に魔法を発動するも、炎に飲み込まれ、全ては無に帰した。


ゼロは両手を合わせ、魔力を極限まで集中し、掌を開くと、黒と赤の光が渦を巻き、魔剣エクスが姿を現した。


全身の筋肉を引き締め、ゼロは大きくジャンプし、勇者パーティーの後方に着地後、瞬時に治癒士の胴を薙ぎ払い、隣にいた魔導士を一刀両断する。


動きはまるで死神の舞踏そのものだった。


「お、お前たち誰なんだ?なんでこんなことをする!」


剣士は怒声をあげ、鋭い眼光でゼロを睨む。


「今から死ぬお前たちに教えてどうなる?」


ゼロの声には珍しく悲しみが滲む。


剣士と槍士は瞬時に連携を組み、左右から斬撃を放つ。だがゼロは一切の動揺を見せず、全てを打ち返す。


「我は剣技も得意だ。ただ暴れ回るだけのドラゴンと一緒にするなよ」


剣士が宙を舞い、斬撃を叩きつけると同時に、槍士は低い姿勢で腹部を三段突きに仕掛けた。


──龍鎧壁ドラゴニックガード


ゼロの筋肉が膨れ上がり、硬化する。剣士の剣撃も、槍士の三連突きも、全て弾かれた。


さらに弓士が二本の矢を同時に放つ。狙いはゼロの両目。ゼロはゆっくりと目を閉じ、矢は軽く弾かれる。


ゼロは一気に前に踏み込み、剣士の首を掴む。地面に叩きつける衝撃で全身から血が吹き出す。体勢を低くしたまま槍士に突進し、脇腹から肩にかけて斬り上げた。


再び矢が三本飛んでくるが、全て空を切る。


左手を弓士の方向に向け、魔力を極限まで集中する。


──龍帝光ドラゴニックレイ


高圧の光線が一直線に放たれ、弓士を直撃。爆風と熱気が巻き起こり、彼はあっという間に黒焦げとなった。


勇者パーティーはついに全滅する。


にこやかに笑い、ゼロはアスラに近づく。


「あれは苦戦じゃないぞ!準備運動だ」


「それにしても、長い準備運動だったな」


アスラは微かに笑みを浮かべた。


「ルア!ちゃんと見てたか?」


アスラが尋ねると、ルアは草むらの影から顔を出し、目を輝かせて答えた。


「すごい!二人ともすごい!あんな動き、絶対無理!」


ルアには、この戦いが非常に良い勉強になったようだった。


その時、空に亀裂が走る。圧で割れるかのような、不気味なヒビ。暗雲が渦巻き、静寂を切り裂く。


(最初に勇者を倒した時も、この感じがした気がする……関係があるのか?)


ゼロとルアが声を上げる。アスラは急ぎ足で二人に駆け寄った。


――――


──二日後


第二の勇者殺害の報は世界を駆け巡った。悲しみと怒りが、各地に広がる。アスラは気分が沈み、部屋に篭もり、情報を整理する日々を送った。


犯人は賞金首となり、世界中に似顔絵がばら撒かれていた。中央神聖教会からの指名手配だ。


似顔絵には仮面が描かれているが、確かにアスラに酷似していた。


十日後、アスラは家を歩き回れるようになり、落ちていて情報を全て目を通す。


「指名手配かー。じゃあ、俺が仮面を外せば解決だよな?」


アスラはゼロに問う。


「完璧に解決だ!」


ゼロが親指を立てて答える。


「ルアはどう思う?」


「んー、八十パーセントくらい大丈夫!」


「なら、大丈夫……か?」


アスラは心配そうに呟く。これで世間の憎悪は自分に向かうだろう。


(嫌だな、嫌われるの、心が持たなくなる。自分で選んだ道だから受け入れるしかないが、やっぱりキツい)


アスラは仮面を捨て、深く息を吐き、再びベッドに潜り込んだ。


――――


三ヶ月後――

また新たに勇者が召喚された。今回は女性だという。


勇者ロゼリア・グレイブ。


強く、聡明で、美しい女性らしい。情報屋の報告では、彼女の性格は冷静かつ理知的で、判断力に優れているとのことだ。


今回のパーティー編成は、以前よりも遥かに手強い。

勇者、剣士、戦士、剣闘士、忍者、魔法剣士、魔道士、白魔道士、白魔道士――総勢九名の精鋭が揃っていた。


正直、ゼログラスの力を使えば、一瞬でこのパーティーを崩壊させられる。しかし、アスラはあえてそうしない。そもそも、これは自分一人で始めた復讐劇なのだから。


「今回は、一人一人を確実に――暗殺する」


アスラが静かに呟く。

情報によれば、勇者パーティーは王都セレリアに立ち寄る予定だ。この街なら、暗殺のための動線も整っている。指名手配中というリスクはあるが、そんなのは後の話だ。


長年使い続けている情報屋に、アスラは勇者パーティーの名前や詳細な情報の入手を依頼した。

その間、三人はいつも通り、平和な日常を過ごす。


ルアには長めの双剣を持たせた。右手には炎、左手には雷の魔法を纏わせる。


これだけで、ルアの攻撃力は劇的に向上する。もともと俊敏な動きに加え、魔法の付与で敵に隙を与えない戦闘力になった。


「ルア!思いっきり打ち込んでおいで!全力でいいぞ!」


アスラは剣を構える。

ルアは頷き、ゆっくり歩き始めた。だが次第に速度は上がり、気づけば目の前で双剣が旋風の如く振るわれていた。


剣撃は炎と雷が交差し、複雑に絡み合う。アスラは両手で受け流すが、攻撃は止まらない。


すると、双剣をクロスの形に斬り裂いた!

クロスになった、炎と雷の剣撃がアスラに向かって飛んでくる。


「え?なにそれ?」


アスラは焦りながらも、二つの剣撃を真向き切りで同時に防ぐ。その隙をルアは見逃さず、低い姿勢からの突きを放った。


アスラは体を回転させ、間一髪でかわす。


次はアスラが袈裟斬りで反撃する。ルアは双剣を器用に使い、刃を滑らせながらアスラの攻撃を防ぎ、逆に反撃のチャンスを狙う。


アスラは蹴りを放つも、ルアは華麗にかわした。その流れで双剣乱舞が叩き込まれる。


「早くなってるな!ルア、その調子だ!」


三時間に及ぶ訓練の末、ルアの戦闘力は目に見えて向上した。これならパーティーに加えても十分戦えるだろう。

次の戦闘から、ルアを正式にメンバーとして加えることにした。


そして定番の〈終極のダンジョン〉に挑戦することに。今回はルア一人の力でどこまで潜れるかを試すためだ。


「ヒールが使える仲間がいればもっと安全なんだけどな……」


アスラの声には感情がほとんど乗っていない。


三人はダンジョンへ突入していく。目標は六十階層。薄暗い通路に差し込む光が、緊張感を一層高める。


「ルア、今どんな心境だ?」


「うん……ワクワクしてる!自分の成長に驚いてるんだ。うまく言えないけど、今の自分が信じられない!」


ルアの笑顔が自然に増えていき、少し頼もしくも見えた。


「確かに最近のルアには目を見張るものがある。我の技も今度教えてやろう!ドラゴンの技だぞ!わっはっは」


ゼロも満足そうに頷いた。


戦闘は連続した。小型モンスターは剣で斬り、大型モンスターは、クロス切りで叩き伏せる。大軍勢が現れれば、魔法で一掃する。体力と魔力が限界に近づいた頃、ついに六十階層に到達した。


「やったじゃないか!ルア!おめでとう。これでお前も一流の冒険者だ」


アスラは満面の笑みで祝福する。


「一人でこの歳でここまで来るとは……アスラ以外にも化け物がおったか」


ゼロはニヤリと笑った。三人はテントを貼り、静かに勝利を祝った。夜風が通路を吹き抜け、遠くから微かにモンスターの鳴き声が聞こえる。


ルアの意向で、次は八十階層を目指すことになった。きっと彼女は、さらなる訓練で己を高めるだろう。


「みんなどうする?転移魔法を使えば、一瞬で上まで帰れるけど」


アスラの声にゼロとルアは目を丸くする。


「転移魔法だと!?とっくの昔に滅びた魔法だ。まあ、アスラが使えるのは納得だな。」


ゼロは感嘆の表情を浮かべる。


「転移魔法?すごい、見てみたい!」


アスラは少し広めの空間に移動する。


──空裂転環スカイリング


地面に大きな魔法陣が描かれ、三人が中に入ると、光に包まれて一瞬で消えた。眩い光に包まれ、時間と空間の感覚が歪む感覚。


次に目を開けると、そこは自宅の前だった。夜風に揺れる木々の葉のざわめきが、達成感と安堵を一層深く感じさせた。

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