表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/29

軍神マルス

「本気で行く!」


──龍人型

魔道龍ドラマギア


ゼロの全身が眩い光に包まれ、龍の紋様が皮膚の下で脈打った。

次の瞬間、筋肉が膨張し、骨が軋む音と共に身体が倍近くに巨大化していく。


額からは二本の鋭い角が伸び、黒銀の鱗が顔や腕、胸を覆っていく。

赤い瞳に灯る闘志は、まるで燃え上がる炎のようだった。


背からは漆黒の龍翼が展開し、地を割るほどの衝撃と共に広がった。


そして腰の後ろには、鋭い尾が伸びる。

その姿はまさに――人と龍の境界を超えた“龍人”だった。


右手には、同調するように龍魔剣ノクスが唸り声を上げて巨大化する。

刃先は赤黒い焔を纏い、まるで意思を持つかのように脈動していた。


左手の真爪は、岩をも粉砕するほど硬質化し、拳を握るだけで空気が悲鳴を上げる。

ゼロの体から吹き荒れる龍気が地面を抉り、辺り一面が震動した。


砂塵が舞い、岩肌が砕け、戦場全体がゼロの存在を中心に揺れるようだった。


その体の大きさは――すでにマルスとほぼ互角。


マルスが口角を吊り上げ、大剣を構える。


「来い、龍の化け物め!」


大剣が閃光を描きながら連撃を放つ。


ゼロはそのすべてを、寸分違わず打ち返した。


刃と刃がぶつかるたびに火花が奔り、空間が歪む。

音が遅れて響くほどの速度で、両者の剣撃が何十、何百と交錯した。


やがて、ゼロは一歩、後方へ跳躍した。


「行くぞ……龍魔五式」


── 終焔覇龍アポカリプス・バーン


ノクスを高く掲げ、一気に振り下ろす。

同時に、龍が咆哮した。


その咆哮は天地を裂き、紅蓮と漆黒が混ざり合う“終焔”を呼び覚ます。

赤黒い炎は波のように世界を包み込み、空をも焼き尽くしていく。


大地は溶け、空間が軋み、時間さえも崩れ落ちる。

物質、魔力、魂の区別なく、触れたものすべてが虚無へと還る、終焉の炎。


しかし――マルスはその剣撃を受け止めた。

神力が世界を歪ませ、無数の層を持つ防御壁を形成している。

炎と光がぶつかり、世界の輪郭が震えた。


「斬らせぬ!」


その声と共にマルスが大地を蹴る。

衝撃で地面が陥没し、空気が爆ぜる。

ゼロの間合いを外れ、天に向かって大剣を掲げた。


「天剣──《滅》!」


頭上に無数の魔法陣が展開され、空を覆い尽くす。

そこから、大剣が豪雨のように降り注いだ。

その数、千を超える。天すら血のように赤く染まる。


(防御か攻撃か……そりゃ攻撃しないでどうする!)


ゼロは吠え、一本一本を叩き落とす。

拳で砕き、剣で弾き、蹴りで吹き飛ばし、最後は掴んで投げ返す!

暴風のような動き。まるで龍が暴れているかのごとく、嵐が戦場を呑み込む。


──龍炎息ドラゴンブレス


紅蓮の炎が大剣の群れを呑み込み、地平を真紅に染め上げる。

大気が悲鳴を上げ、空すら軋む。熱が世界の輪郭を歪めた。


「うおおおおおおッ!」


ゼロは暴れ狂うように炎の中を突き進む。

巨大な大剣を掴み取り、マルスへと投げつける。

一度、二度、三度――その剣は隕石のような勢いで飛来し、

衝撃波が空を裂くたびに、神と龍の戦場が再び赤く染まった。


マルスはわずかに怯むが、即座に反応し、全てを正確に撃ち落とす。


だが、その隙を逃すゼロではない。


ゼロは地を這うように突進し、マルスの懐へ潜り込む。

そして、真爪で脇腹をえぐり抜いた――はずだった。


しかし、その傷は瞬時に閉じた。


「神に攻撃は効かぬぞ!外界からの信仰力が落ちない限り、我らの天力は尽きないのだからな!」


マルスは笑う。

その笑みには圧倒的な余裕があった。


ゼロの動きが一瞬止まる。

斬っても回復、燃やしても効かない。

神の再生力の前に、打つ手がないように見えた。


だが――ゼロの瞳が鋭く光る。


「……なら、燃えるまで燃やすまでだ」


ゼロは口角を吊り上げた。


「余裕そうだな!そんなに下等種族をいじめて楽しいか?神よ!」


「ああ!楽しい!楽しいぞ!!お前たちを蹂躙できるのが、我の快楽でもある。そして我のために死ね!」


マルスが高笑いする。


そして、大剣を振り回しながら突進。

ゼロも正面から迎え撃つ。

両者の剣がぶつかり、衝撃波が空を裂いた。


ゼロが左ストレートを叩き込む。

マルスも同じく左ストレートで反撃。

互いの拳がぶつかり、周囲に亀裂が走った。


次の瞬間、ゼロが真爪を展開し、マルスの胸を深く掻き切る。


「ぐはっ!」


だがその傷も、瞬く間に再生する。


「ならば、回復が追いつかない剣撃を入れてやる!」


ゼロが咆哮した。

龍魔力を極限まで圧縮し、龍魔剣ノクスに流し込む。

刃が脈動し、黒い雷が奔る。


ノクスが唸り、形態を変えた。

龍魔剣と完全に一体化する。

その瞬間、魔道龍ドラマギアは“完成体”へと至った。


ゼロの周囲で黒い稲妻が暴れ狂う。

その眼にはもはや迷いがなかった。


「終わらせる!」


──龍魔五式

神雷皇破オメガ・バースト


剣が振り上げられ、天地を裂く閃光と共に振り下ろされる。


刃には“神雷”が纏われ、無数の雷柱が大地と天を貫いた。

その範囲、数十キロ。

落雷の総出力は――大陸一つを焼き尽くす威力!


マルスの全身を無数の雷と斬撃が同時に貫いた。


「グガッ!」


神の顔が歪む。

ゼロはその一瞬の隙を逃さなかった。


龍族の始祖、炎の化身――焔龍神の力を呼び覚ます。


第十五階梯龍魔法

── 龍神焔りゅうじんえん


黒炎が天地を覆い尽くす。

それは熱ではない。存在そのものを焼き尽くす“終焉の炎”。

マルスの身体を包み込み、空間ごと焼き払った。


マルスは炎を振り払おうと身を捩る。

だが、炎は離れない。

それどころか、彼の神衣すら燃え尽きていく。


ゼロは左拳でマルスの顔面を殴り抜き、

続けざまにノクスで腹を斬り裂いた!


マルスは苦悶の声を上げながらも、炎を纏ったままゼロへ突進。

二人の巨体がぶつかり、轟音が世界を揺らす。

次の瞬間、ゼロは掴まれ、地面へと叩きつけられた。


マルスはゼロの頭を掴み、顔を持ち上げる。

そして――


「死ねッ!!」


頭突きが炸裂。さらに二発。

続けざまに左ストレートを叩き込み、ゼロの体は宙を舞った。


――――


ゼロがマルスを見ると、傷は跡形もなく消え、燃え盛っていた炎さえも静かに消滅していた。

まるで戦場そのものが、マ支配下に置かれているかのようだ。


マルスは笑う。余裕と傲慢が滲む笑みだった。


「あいつ完全に我の事、なてめるな」


その瞬間、ゼロの胸の奥底に熱いものが込み上げた。


久しく感じなかった“怒り”。それは、龍にとってただの感情ではない。

怒りは力の源。筋肉を膨張させ、血を熱くし、心臓を灼くように鼓動させる。


龍族の本能が、戦いの炎をさらに燃え上がらせた。


「……今度は、深く斬る」


言葉と同時に、ゼロの姿が掻き消えた。


空気が弾けるような音が響き、次の瞬間には斬撃が十重にも飛んでいた。


爪でえぐり、空間を裂くように炎を吐く。単純な攻撃方法――だが、そこに宿るのは桁外れの速度と精密さだった。


大地が震え、地表は炎で割れ、赤い閃光が夜空を照らす。

マルスの周囲を旋回するように、ゼロの残像が幾重にも重なり、その動きはもはや視認すら不可能だった。


攻撃が来る!!

ゼロもすかさず反応した。


天剣──《爆》


── 龍鎧壁ドラゴニックガード


マルスが静かに呟いた瞬間、世界が弾けた。

爆音が轟き、ゼロの腕、脚、そして背中が爆散するように吹き飛ぶ。


衝撃波が戦場を貫き、周囲の岩山をも粉々に砕いた。

しかし――ゼロは立っていた。


その肉体は無傷。龍の鱗が光を反射し、まるで灼熱の中に神が立つような威容を放っていた。


「ダメだ、ダメージを与えられない。何かいい手があれば……」


焦りではない。冷静な思考がゼロの頭を巡る。


いまの攻撃でも通らない……ならば、何をすべきか。


息を整え、マルスの一挙手一投足を観察する。攻撃を受け流しながら、脳裏では幾千もの戦術が組み立てられては崩れていく。


全ての力を出し切っても届かない。

相手は神。その差を、誰よりも理解している。

それでも、退くわけにはいかない。龍として、戦士として。


「何か、何か方法はないかか?」


息を荒げ、マルスの斬撃を紙一重でいなしながら思考を続ける。

時間が止まったかのように、一瞬が永遠に感じられた。


焦りが手を震わせる。それでも思考は止まらない。

無数の戦術が崩れ、また浮かぶ。その果てに、小さな閃光が生まれた。


「──魔法剣があった!!」


――――


だがゼロにとって、それは初めての試みだった。

第十五階梯龍魔法── 龍神焔りゅうじんえんを、己の剣に流し込むという禁じ手。


失敗すれば、剣が暴走し、己の命すら焼き尽くす。だが、それでもやるしかなかった。


ゼロは呼吸を整え、意識を一点に集中させる。


剣の内部に、龍の炎が流れ込んでいくのを感じる。

まるで灼熱の溶岩が血管を駆け巡るような激痛。

それでも、歯を食いしばり、ただひたすらに制御を続けた。


その間に、マルスの斬撃が飛ぶ。

ゼロの肩を裂き、背を貫き、腹を割る。

三度、確実に斬られ、鮮血が地面を染める。


それでもゼロは止まらない。

全身が痛みで悲鳴を上げても、集中を切らすことはなかった。

龍神焔を流し込む。それが今、唯一の希望だった。


「お前、俺を見てないな?ふざけてるのか?」


マルスが大剣を構え、地を滑るように間合いを詰める。

その刹那、横一閃――。

音もなく、ゼロの胸が深々と斬られた。


「グハッ!」


鮮血が弧を描き、鱗が散る。

地面に叩きつけられながらも、ゼロは倒れない。

その瞳には、まだ燃えるような光が宿っていた。


──龍帝光ドラゴニックレイ


左手に集束した膨大な魔力が閃光と化し、一直線に放たれた。

凄まじい熱量が空気を歪ませ、直撃すれば神すら貫く威力。

しかし――。


マルスはその光を真正面から受け止め、大剣を盾のように構える。


金属音とともに衝撃波が爆ぜ、光が弾き飛ばされた。

砂塵が舞い、天地が震える中でも、微動だにしない。


「そんな攻撃、効くと思ったか?」


余裕の笑み。その姿を見て、ゼロの歯が軋む。

しかし次の瞬間、龍魔剣ノクスが不気味な唸りを上げた。

刀身が脈打ち、灼熱の炎が螺旋を描く。


刃の輪郭が変わり、鋭く、細く、まるで居合刀のように形態変化していく。


ゼロは血まみれの身体を支えながら、ゆっくりと刀を鞘に収めた。

その動作は静かで、荘厳で、まるで儀式のようだった。

目を閉じ、深く息を吸う。


腰を低く落とし、居合の型に入る。


雑音が消え、時間すら止まったように感じた。

心臓の鼓動だけが耳に響き、世界が一点に収束する。

“心眼”が開く。すべての動きを、意識せずに読み取る。


マルスが大剣を構えた。

次の瞬間、天地を裂くほどの薙ぎ払い。

だが、ゼロはすでにその軌道を“見て”いた。


一瞬の隙――攻撃と攻撃の間に生じる、たった一拍の間隔。


考える前に動いていた。


龍魔零式

── 魔顎咆噛デモニック・ファング


居合一閃。

刀が抜かれる瞬間、龍の咆哮が空を裂く。

炎と共に顕現した巨大な龍の顎がマルスへと食らいついた。

衝撃波が地を割り、天を焦がす。


「ぐおおおおぉぉー!!」


マ右腕が、肩ごと喰い千切られた。

血が噴水のように溢れ、神の悲鳴が戦場を震わせる。


マルスが膝を着く。

その隙を逃さず、ゼロはふらつく身体で再び居合の構えに入った。


「いくら神でも切れた体は元に戻らないらしいな!」


血に濡れた唇が笑みを刻む。


龍の闘気が、空気を震わせるほどに膨れ上がる。

その足元の大地は砕け、熱気と共に砂塵が舞い上がった。

ゼロの瞳は紅く光り、まるで地獄の底で目覚めた龍のようだった。


龍魔零式

── 魔顎咆噛デモニック・ファング


二閃目。

稲妻のように刀が抜かれ、咆哮が再び轟く。

空気が裂け、地平が歪む。

今度はマルスの左肩を噛み砕いた。


「ぐがががっ!!」


上半身が崩壊する。


腕も肩も失い、血に塗れた肉塊のように見えた。

だが、神はまだ終わっていなかった。

燃え残る光が、彼の体を一瞬だけ照らす。


絶叫と共に、立ち上がり、脚で蹴りを放つ。

その速さは音よりも早く、衝撃で大地が割れる。

ゼロは冷静に、その動きを読み切る。


一閃。


蹴りの脚が宙を舞い、続けざまに背後へと回り込む。

龍の残光が尾を引き、炎の中で刀が閃いた。

もう迷いはなかった。


刀が閃き、首を斬り落とす。


静寂が訪れる。炎が揺らめき、焦げた空気が漂う。

風が止まり、世界が呼吸を忘れた。


──龍が神を超えた瞬間だった。


ゼロの足元で、マルスの首が音もなく転がり落ちる。

その目には、確かに恐怖が宿っていた。


そしてゼロは、燃え尽きたようにその場に立ち尽くす。

神を斬った龍の瞳に、わずかな哀しみが宿っていた。


ゼロは血と炎に塗れた顔で、静かに呟いた。


「……神を斬った龍の名は、ゼロだ」


その声は低く、しかし天地に響き渡った。

燃え盛る戦場に、ただ一匹の龍が立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ