第8話:ダンジョンにいこう! 2
[パーティー要請:トミオ]
[受諾しますか? YES/NO]
「もちろんYESです!」
そんな感じで、俺はフィーカとパーティーを組んだ。
「ここまで撤退すれば追ってこないんだね」
「はっ、その通りです。なので、お試しするのには最適かと!」
ビシッと敬礼して答えるフィーカ。いちいちアクションが大げさだな。配信者ってこういうもんなんだろうか。地味に初めて会ったんだよな。
とりあえず、俺は先頭に立って進む。
現れたのは、部屋だった。
天井まで3メートル位、広さは学校の教室くらいだろうか。そこらじゅうに石や岩が転がっている。投石には困らないだろう。フィーカは既にインベントリに収めてたけど。
「あ、あそこ。天井にぶら下がっています。憎らしいですねぇ……」
見れば、天井の一画にケイブバットが逆さまにぶら下がっていた。その数5匹。決まったエリアに入ってきたら襲いかかってくるやつだな。気づかなければ奇襲になる嫌な仕掛けだ。
「あ、ちなみに石を投げても襲いかかってきます。声は無視ですね」
「色々試してくれてるのは助かるよ」
これは本当にそうだ。ただ困るだけでなく、自力で突破する方法を模索してたんだろう。
「予定通り。俺が近づいてくから投石で援護してね。危なくなったらポーションを使って」
いくつか回復ポーションを渡しておいた。うっかり、フィーカに攻撃がいくことも考えられる。
「了解です! ふははは! 見ているかケイブバット共! 今からお前たちをこのトミオ様が見事倒してくれようぞ! はははは、思い知れぇ!」
「お前も戦うんだよ!」
あ、思わずお前って言っちゃった。
「ひぇ。も、もちろんです! いや、トミオさんはノリが良いですなぁ。さすがは上級者」
特に問題ないらしい。むしろちょっと嬉しそうだ。これが三下魂か……。
「じゃ、さっさと行くわ。援護よろしく」
「お任せくだされぃ!」
長く付き合ってると俺の常識が歪みそうなので、とっとと広場の中央に向かうことにした。
「ピギィ!」
という甲高いケイブバットの鳴き声が複数頭上から響く。それと羽音。足元を巨大な影が踊り、頭上に扇風機くらいの風を感じる。
確かにこのシチュエーション。初心者がいきなり体験したらパニクるかもしれないな。
頭上に目をやり、ショートソードとウッドシールドを構える。
ケイブバットは不規則に飛ぶけど、そもそも空中で動ける範囲が広くない。ランダムっぽく見えるけど、主に上下に動く。左右の移動は少ない。
「ピギィ!」
「ピピギィ!」
「よっと!」
突っ込んできた一匹を盾で受け、もう一匹をショートソードで斬る。一撃ではないけど、ダメージは入った。こいつら、正面から来るようだ。最初のダンジョンだからそういう設定なのか?
「ピピッ!」
「よし、一匹! おっとあぶねぇ!」
追撃を入れて一匹倒すと、頭上から追加が来た。何とか躱す。さすがに数が多いと、全部避けるのは無理だ。反応速度が早くても、限界はある。
やられなければOK! そんな気持ちで立ち回る。
「ピギッ!」
「よし当たった! ははは、思い知れ!」
「上手い! ナイスだフィーカ!」
「背中はあたしにお任せください! ははは! くらえ! 無限石投げ! あ、こっち来た! 来るな! 来ないでくださぁい!」
インベントリから次々に石を出して投げていたフィーカに一匹向かった。
一応、それなりに状況判断はするみたいだな。
「落ち着いて対処しろ! そいつらは上下に動く!」
「え? あ、ホントだ! てやぁ!」
武器をダガーニ刀に持ち替えて、すぐに対応した。一言でよくわかったな。
残る三匹を俺が倒す前にフィーカの投石援護も復活。あっという間に五匹を殲滅した。
「ピピィ!」
「あ、来ました増援です! 馬鹿め! 遅いわ!」
「時間で来るパターンだったんだなぁ」
多分、フィーカ一人の時だと殲滅する前に到着してたんだろう。
やってきたケイブバットは四匹。さっきよりも少ない。こうなったらもはや作業だ。
「じゃ、さっきと同じで」
「かしこまりましたぁ! この石投げのフィーカにお任せください!」
「その場の勢いで名乗ってるな……」
反応したらキラキラした目でこっちを見た。もしかして、ツッコミ役だと思われてるのか?
これ以上何か言うとまずそうなので、新たに現れた四匹を地道に殲滅にかかる。
殴る、盾防御、回避、投石援護、殴る。ちょっとダメージを受けつつも、二人だと早い。ケイブバットのHPが低いのもあってすぐに倒せる。
あっさり倒してこれで終わりと思った時だった。
◆WARNING!◆
【ボスモンスター出現!】ビッグ・ケイブバット 推奨レベル8【危険度:☆】
◆WARNING!◆
赤く装飾された文字列が、俺達に警告とばかりにボスモンスターの出現を知らせた。