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第7話:ダンジョンにいこう! 1


 PvPに勝って貰ったアイテムでクエストを片付けたら、レベルが二個上がった。


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 トミオ

 レベル:6

 クラス:新米探索者

 HP:30

 MP: 0


 STR(筋力):9

 AGI(速さ): 9

 VIT(体力): 7

 DEX(器用):8

 MNA(魔力): 5

 LUC(幸運):8

 

 装備:

右手:ショートソード(攻+4)

左手:ウッドシールド(防+3)

体:レザーアーマー(防+5)

頭:なし

アクセ1:なし

アクセ2:なし


 クラススキル:なし

 汎用スキル:なし

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


 何となくプレイスタイルに合わせて上がっている気がする。魔力がまるで上がっていないな。まだ魔法もスキルもないから、こんなもんか。


 貰った報酬で武器の方も更新した。武器はロングソードやスピアもあったんだけど、防具にも予算を回した結果ショートソードになった。軽い武器は使いやすいから嫌いじゃない。

 ちなみに、ハルちゃんの使っていた手甲も売っていた。攻撃力と防御力が微増という感じでちょっと微妙だったな……。


 フロントタウンは村人よりも兵士の数が多い。異世界探索の拠点というのが強調されている。NPCも忙しく働いているのが多くて、どこか慌ただしい雰囲気がある。

 いくつか納品クエストがあって、リストに登録されていた。この辺をやっていくかはおいおい考えていこう。


 一通り村を周り終えた俺は、探索者ギルドへと戻ってきた。

 ギルドの建物は丸太小屋を豪華にしたようなやつだ。凄く巨大な木を使って組まれていて、なかなか見応えがある。

 クエスト一覧から依頼を受けることもできるんだけど、NPCとやり取りするのも大事だ。会話から隠しクエストが発生するかもしれない。


「おかえりなさい。トミオさん。今日はどのようなご要件ですか?」


 眼鏡をかけた受付嬢がにこやかに挨拶してくれる。そういえば、『ゲヘナ・オンライン』では受付の眼鏡率が高かったな。BWOはどうなんだろう。そのうち有志が検証してくれるはずだ。


「今受けられるクエストを教えて貰えないかな? 少しは増えた?」

「そうですね。トミオさんは、『見晴らしの洞窟』探索クエストが受諾可能になっています」


 カウンター上に一枚の詳細の書かれた用紙が置かれる。


--------------------------------------------------

 『見晴らしの洞窟』探索

 推奨レベル:5


 フロントタウンの東の森の中に小さな洞窟がある。

 その洞窟をくぐり抜け、最深部で「世界」を見よ。

 報酬:150EXP

300Gn(ギニー)

    ※フロントタウン外への探索許可

--------------------------------------------------


 初心者卒業クエストだ。これを受ければもっと広範囲の探索が可能になる。まだ村の周りをうろついてたから制限があるなんて気づかなかったけど。


「この依頼受けます」

「はい。依頼受諾ありがとうございます。マップに場所が表示されるので目印にしてください」

「明かりのアイテムなんかはあった方がいいですか?」

「洞窟内は明るいから大丈夫ですよ。回復アイテムはあった方がいいそうです」


 受付さんの応対は流暢だ。AIによるもので、仲良くなると色んな反応を見せてくれるという。しかし、俺にここから話を広げるトーク能力はないのだった。事務的に必要事項を話されて終わりだ。


 たまにNPCと仲良くなるのが上手な人がいるけど、あれは一つのスキルだと思う。AI相手だと、コミュ力とは別の能力が必要だと思うんだよな。


 NPCと仲良くなるのが目的じゃないからいいか。

 依頼を受けた俺は気を取り直して、ギルドの外に出た。


◯◯◯


 『見晴らしの洞窟』はさっきブラック・ババーニィを倒した森の中にあった。たまに遭遇するモンスターを倒しつつ、細い道を進むと崖みたいな地形。そこにぽっかりと穴があいていた。


 いきなり危険モンスターなんてのに遭遇したのは驚いたけど、この森自体は良いところだ。明るくて静か。出てくるモンスターも弱い。

 ショートソードとウッドシールドの使い勝手は良好だ。特にシールド。回避の他に受けが選択できるのは大きい。


「さて、初ダンジョンいってみますか」


 周囲を見回すと、他にプレイヤーが結構いる。同じクエストを受けた人だろう。それがどんどん洞窟に吸い込まれていく。

 その流れにのるように、俺も暗闇に向かって進んで行った。


 受付嬢さんの言う通り、『見晴らしの洞窟』内は明るかった。外より若干薄暗いくらい。光源アイテムが必要ないタイプのダンジョンだ。


「……入った瞬間、振り分けられたな」


 周りに人が居ない。同時に入ったプレイヤーが四人はいたはずだ。エリアが切り替わった瞬間、サーバーを振り分けたのだろう。混雑対策だ。


「…………」


 止まっていては話にならない。剣と盾を構えて慎重に進む。見える範囲にモンスターはいない。罠は……わからない。いきなり致命的な罠をしかけてはこないだろう。


 土の地面を踏みしめる感触と足音を聞きながら少しずつ進んでいく。曲がり角。要注意だ。待ち伏せがあるかもしれない。

 試しにその辺の小石を投げてみるが反応なし。一応大丈夫だと判断して進む。……なんか、石が多いな。投石したらちゃんとダメージ入るのかな、このゲーム?


 そんな疑問を覚えたりしながら、洞窟探索は進む。

 曲がり角を超えてすぐ、急にバサバサという羽音が近づいてきた。


「ピピィ!」


 30cmくらいの真っ黒な羽根つきの影。コウモリだ。「ケイブバット」と名前が表示された。不規則に飛びながら、襲いかかってくる。


「てい」

「ピッ」


 とりあえず、攻撃される前にウッドシールドで叩いたらダメージが入った。しかも、動きが止まった。すかさずショートソードで斬りつける。


「ピピィ……」


 ケイブバットはあっさりと地面に落ちて消えていった。


[ケイブバットの爪を獲得]


 HP低かったな。動きが不規則だったから、初心者だと狙いにくいかもしれない。

 攻撃する瞬間ちょっと遅くなったし、捉えられないほど早くないから問題ないか。

 数が多いとちょっと厄介、そんなところだ。


 このままコウモリを叩き落として終わりというわけじゃないだろう。


 そう考えつつ進んでいると、また曲がり角。いや、それ以上の変化があった。


「あれ? 他のプレイヤー?」


 人がいた。向こうも俺を確認したらしく、凄い勢いで走ってくる。


「あああ! た、助かった! 助けてください! この先に進めなくて困ってるんです! お願いです、お助けを! なにとぞぉぉ!」


 可愛らしい声と共に、女性アバターのプレイヤーがダイビング土下座でこちらに滑り込んできた。


「うおっ! と、とにかく顔をあげて。いや、立ち上がって」

「お願いです。あたしと一緒に攻略してください。ちょっと一人じゃ無理そうでして……」

「この先に何かいるのか。……? って、もしかして、配信者? できればやめて欲しいんだけど」


 女の子の近くに、丸い物体が飛んでいた。レンズ様の物体がついている。カメラだ。配信や録画用の機能で、設定したアングルで撮影をしてくれるやつだろう。


「ああっ、これは失礼しました! あたくし、フィーカと申します! 通称三下系配信者。登録者500人程度のケチな存在でございます。はい、録画もこの通り停止しました。ライブ配信は元よりしておりません!」

 

 立ち上がって物凄く早口で色々と教えてくれた。

 金色のインナーカラーが目立つ赤髪のツインテール。俺と同じくらいの長身にスレンダー体型。いかにも配信者でございという派手な見た目だ。装備は初期の探索者服みたいで、外見との乖離が凄い。


「三下系って、そういうロールプレイってことです?」

「へへぇ、最初はそんなつもりはなかったんですけど。いつの間にやらこういう話し方になってしまいましてね。まあ、きっと魂がこういう形をしているってことで!」

「すごい魂だな……」


 そんな感想しか出てこない。三下の魂を持つ者なんて初めて見た……。

 話を戻そう。


「俺はトミオ。このダンジョン攻略のクエストを受けてきたんですが、多分同じですよね?」

「へへー! その通りでございます! あ、敬語じゃなくてOKです! むしろ、あたしは今から土下座しまくってでも助けて貰う立場なんで!」

「土下座はそんな気軽にするもんじゃないよ!」

「あっ、まともな人ですねトミオさん! 凄いラッキーを感じます!」

「えーと、ここで何をしてたか教えてくれ……」


 この子のノリに合わせると話が進む気がしない。しかし配信者か。厄介だな。インターネット老師達も「配信者など自己顕示欲の強い奴には注意しろ」と言っていた。


「この先に広間があるんですけどね。ケイブバットの群れがいるんです。しかも増援つきで。あたし、実はこの手のゲーム初めてでして。わーって群がられるとパニクっちゃいまして……」

「武器とレベルはいくつ?」

「5です! 武器はダガー二刀流! 試したらできたんで!」

「へぇ、スキル無しで二刀流できるんだ」


 面白いことを聞いた。装備とレベルを見るに、深く考えず、流れでこのクエストを受けた感じかな。VRのRPGに慣れてないのに、いきなり多数を相手にするのは大変だろう。


「わかった。共闘しよう。あ、できれば配信には出たくないんで録画はちょっと……」

「そ、そこを何とか! 極力写らないアングルにしますし、編集する時にモザイクかけます! それも全身に! 音声も加工します! 何卒! 厚かましいお願いだと思いますがぁ! これでも楽しみにしてくれている人がいるのです!」

「お……おう。じゃ、アップする前にチェックだけさせてくれ」


 涙目でもの凄い圧でお願いされて断れなかった。クールかわいい系の見た目なんだけど、言動と行動で台無しだな……とちょっと思った。


「ありがとうございます! ありがとうございます! ……で、どのように攻略しましょうか?」


 フィーカは切り替えの早い女だった。いや、助かるけど。


「フィーカさん、ダガーで上手く攻撃あてられる?」

「フィーカで良いですっ。なんなら三下娘でも! お気軽にお話を! あ、攻撃は上手くあてられません。一匹なら平気ですが、不規則な動きに慣れなくて。戦闘ってのがほぼ初めてなんですよね」

「戦うゲームが初めてってこと?」

「はい。普段は農業とか建築のゲームなどをしておりました。こう、PVを見てピピッと感じたもので、挑戦したという所にございます」

「新しいゲームをする時ってそんなもんだよね。わかった」


 早口で口数が多いのはともかく、教えてくれる情報は的確だ。ロールプレイが三下というのは気になるが、この子は上手くなる気がする。コツさえ掴めれば。

 俺は地面を見て、その辺に転がってる石を指さす。


「あの石、拾って投げたことある?」

「じ、実はさっき。遠距離から地道にいけないかと思って何度か。そこそこ当たるけど、殲滅速度が間に合わず、というとこでしたねぇ」

「つまり、当たるしダメージは入るわけか」


 しっかり自分で攻略法まで考えている。ちゃんとしてるぞ。


「じゃ、俺が突っ込んで囮になるから。後ろから石を投げて援護してね。あ、回復した方がいい? ポーションはある?」

「なるほど。ものは試しというやつですね! ポーションはないです! すみませんがお恵みください!」


 また土下座してこようとしたので、慌てて止めた。

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