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Beyond World Online~一部イベント特効ゲーマーの行くVRMMO ~  作者: みなかみしょう


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第60話:三下からの提案

 フィーカから連絡があった。俺に会って頼みたいことがあるそうだ。

 正直、断ろうか迷った。思わず反射的にそうするところだった。


 しかし、冷静に考えるとあいつは言動こそちょっとアレだが、行動そのものはマトモそのもので、これまで俺は不利益を被ったことは全く無い。

 むしろ、レベル上げのための狩り場を探してくれたり、装備品を貰ったりと親切まである。


 俺ももう大学生。もう少しで社会人。選挙権だってある。

 ここは感情的な対応ではなく、冷静な判断から来る大人の対応で行こうと思い、承諾した。


「トミオさん! 女の子になりませんか!」


 断るべきだったと心底思った。


「今回は縁がなかったってことで。貴方のご活躍を祈ります」

「あ、待ってください! ちゃんと説明します! お慈悲を! どうかお慈悲を!」


 帰ろうとしたら膝にすがりついてきた。相変わらずなりふり構わない奴だ。


 現在地はモリス・ルクスの町。その宿屋の一室だ。小綺麗で見晴らしがよく、他にプレイヤーがいない場所を指定された。怪しげな気配がするとは思ったが、まさか開幕性転換とは思わなかった。


「わかった。説明を頼む」


 手近な椅子に座って説明を促す。

 すると、フィーカは立ち上がり、自慢げな様子でインベントリ操作を始めた。


「AP装備作れたんだな」


 フィーカの見た目が変わっていた。

 彼女の配信チャンネルでよく見かける、SF風の銀と青色の服装。それを肩や胸周りをアーマーっぽくしたファンタジーバージョンといった出で立ちになっていた。見た目だけを変更するAP装備。遂に手に入れたらしい。


「ふふふ。お気づきですか。これで動画配信も捗るというもの。奇抜な装備で駆け回らずに済むのです」

 

 それはそれで面白そうだ、とは言わなかった。話が長くなる。

 話を進めろという雰囲気を察したのか、フィーカはすぐに話題を変えた。


「それはそれとして……これです!」

「なにこれ……」


 ドヤ顔で右手に掲げて見せつけて来たのは青い宝石の嵌ったペンダントだった。結構大きい。まるで変身アイテムのような……。いや、なんかわかったぞ。


「もしかして、性別や見た目丸ごと変わるアイテムか?」

「いかにも! さすがはトミオさん! これは『メタモ・リカ』という課金アイテムでして、設定した姿に使用者を変化させます!」


 何となく察した俺の言葉を、フィーカは喜びを隠さず肯定する。

 実に自然な動作で俺に手渡し、喜色満面で語り続ける。


「配信収入を注ぎ込んで作り込みました! 是非、これを使ったトミオさんとリアルタイムで配信をしたい次第でして……」


 話しているうちに断られる可能性に思い至ったのか、自信を消失して声がだんだん小さくなっていく。なかなかの要望をしている自覚はあるらしい。


「とりあえずは、どんな姿になるかだな」


 フィーカにはイベント時に狩り場探しなどで借りがある。見た目が完全に切り替わるアイテムを金を払ってまで用意したのも、俺への配慮だろう。……いや、単に見栄えの問題かもしれないが。


「へへへ、そうですよね。気になっちゃいますよねぇ。使い方は簡単、インベントリから使用するか『メタモルチェンジ』と呪文を唱えるかで、是非後者の方を推奨……」


 素早くインベントリから使用した。


「ああっ、なんていけずな!」


 フィーカの叫びはよそに、アイテムはちゃんと発動した。メタモ・リカからまばゆい青い輝きが満ちて、俺を包み込む。一瞬、視界が光に奪われた後には全てが完了していた。


「……なんか。背が低くなったくらいしか、わからないな」

「ご安心を! 姿見を用意しております!」


 言うなりインベントリから巨大な鏡を取り出すフィーカ。なかなか用意周到である。


「なるほど……」


 鏡に写った自分を見て、俺はそう漏らすしかなかった。


 コンセプトはフィーカと対になるデザインなんだろう。青髪ツインテール。小柄で胸が大きめ。服装は似ているけど、落ち着いた色合いにオレンジの差し色が入っている。ファンタジー風の服装だけど、こちらはアーマー無しのミニスカートだ。


「我ながら素晴らしい出来です。いかがですか? ご満足いただけましたか?」

「また気合の入った見た目にしたな。……感覚は意外と変わらないか」


 とりあえず何度か跳ねたりしてみる。少し、胸が揺れるのが邪魔な感じだ。引っ張られる痛みはないけど、戦闘中に気になるかもしれない。

 この手の設定を調節する所があったはずだ。俺は設定画面を出して乳揺れ演出周りのパラメーターを触り始めた。


「おや、何をする気ですか?」

「いや、胸が揺れて邪魔だから……」

「それを変えるなんてとんでもない! 頑張りましょう! ゲームプレイに支障はないはずですから! トミオさんならできます!」

「あっはい……」


 本気の目だったので素直に従うことにした。


「つまり、フィーカと正反対な見た目のキャラで配信に参加すればいいわけか」

「そうですそうです。いやー、我ながらナイスデザイン。財産を注ぎ込んだ甲斐がありましたっ。中身がトミオさんでも全然アリ! ですな」

「…………」

 

 やはり中身はおっさんなんだろうな。こういう反応を見ると、その確信を深めてしまう。


「おっと、つい興奮してしまいました。それで、お願いできますでしょうか? これならトミオさんの素性も知られず安心だと愚考するのですが……」

「いいよ」

「やはりだめ……え、いいんですか?」

「イベントの時に色々動いてくれたからお礼するって言ってたしな。これだけ準備してあれば大丈夫だろ」

「え、これって、なんでもしてくれるってことですか?」

「そこまでは言ってねぇ」


 さりげなく話の内容をすり替えるな。油断も隙もない。


「それで、俺はどうすればいいんだ? ロールプレイの方針はどうする? 名前も考えた方がいいよな。ギャル系みたいなノリはさすがにできないんだけど」

「お、おう……なんか、積極的な上に手慣れてますね」

「ネカマプレイの経験がないわけじゃない」


 何年か前、カモグンさん達と一緒にとあるVRゲームを遊んでいる時に、やったことがある。

 経緯としては、カモグンさんの知り合いのギルドに姫……いわゆる女性であることをアピールして貢がせたりする人が加入し、ギルドブレイクの危機に陥っているという相談があった。

 その時たまたま別行動をとっていた俺が急遽女性キャラを作り、ネカマプレイで姫を排除するという任務が与えられたわけだ。

 姫は非常に典型的なタイプだった。ゲームは上手くなく、中身の能力でギルドに不和を招く、スタンダードなやつ。

 そこに俺というゲームもプレイできるし、人当たりの良い女性(俺)が加入することで、姫の影響力を排除するというシナリオだった。


 結論からいうと、作戦自体は上手くいった。ノリノリで指導したカモグンさんとコサヤさんにより、俺はそれなりの振る舞いができるようになり、ギルドにはすぐ馴染んだ。カモグンさんの知り合いが協力してくれたことも大きい。

 ゲーム上でも頼りになるし、普段の会話も朗らか。そんな女性キャラ(俺)が加入したことで、姫は徐々に影響力を失っていった。たまにぶつぶつ言ってたけど。

 RPGにおいて、ちゃんと一緒に遊べる仲間という要素は強く、二週間ほどで姫は見切りをつけて新たなギルドへと旅立っていったのである。

 任務完了。良いことをした。そう思った。


 そこからが最悪だった。今度は俺が原因でギルド内に不和がもたらされてしまった。そりゃそうだ、姫を排除するための姫だもん。化け物に化け物をぶつけてしまう形を自ら演出してしまったのだ。

 俺はカモグンさん達と相談し、学業とかの理由をつけて引退するという軟着陸ルートを探った。

 

 でも、間に合わなかったんだよなぁ。これが。

 少しずつログイン時間をずらしたり減らしていたのがいけなかった。

 ある日の深夜、俺がいない時に、ギルド内で内紛が勃発。それはもう醜い言い争いに発展したらしく、そのままギルドがブレイクされてしまったそうな。

 悲しいのは、最初に助けを求めた知人さんもそれに加わっていたことだ。なんか、俺が男だってのを信じてくれなくなっていた。


「……と、いうことがあったのさ」

「な、なかなか凄まじい経験をしていたのですね。むしろ頼もしくなりましたが」

 

 悲しい記憶だ。インターネット老師に話したら怒られるかもしれない。でも、悪意はなかった。本当だ。


「では、あたしが考えてきた設定でお願いできますか? 名前はスクラちゃん。一人称はボク。ちょっとクールな感じでいつものようにツッコミを入れてくれると嬉しいです。これならトミオさんもやりやすいのでは?」


 しっかり設定を詰めてきている。実際、それならやれそうだ。


「じゃあ、それでいこう。ボク、フィーカのことは何て呼べばいいかな?」

「うおっ、かわいい……。呼び捨てが良いかと。あたしはスクラちゃんと呼びますので!」

「じゃあ、それで」

「では、さっそく試しに行ってみましょー! いい場所知ってるんですよ!」

「いきなりかよ! 急すぎるわ!」

「ヒュー、良いツッコミ。まあ、突発お試し配信ってことで、損はさせませんから」


 肩を掴まれて、なんとなく連行されてしまう。この姿だとフィーカの方が背が高いから印象が変わるな。見上げる感じは新鮮だ。モザイクまみれの配信をしないでいい興奮だろうか、頬を紅潮させながら先を歩いている。


「まあ、このくらいならいいか」


 姿が変わって身バレの心配もないし。

 そんなわけで、突発で女体化して配信することになった。




お久しぶりです。

ちょっとだけタイトルを変えました。MMOっぽいタイトルにしてみたかったのです……。


既にご覧になっていたら申し訳ないのですが、新作を始めています。

良ければお読みください。下の方にもリンクを張ってあります。


限界勇者のスローライフ〜田舎でのんびり暮らそうと思ったら、元魔王を拾ってしまった件〜

https://ncode.syosetu.com/n7190ll/



ちょっと真面目な話を書くと、この作品用のネタが溜まるシステムです。

別作品を更新してたら「ネタためてるのかな」とでも思って頂けると嬉しいです。


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― 新着の感想 ―
「男が演じる女性の方が男受けはいい。なぜなら男が喜ぶツボを心得てるからだ」 という言葉を思い出しました。 それにしてもバ美肉を普通にこなす主人公というのは珍しいかも。
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