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それって恋なんですか!?

雷が、地面ごと私を貫きました。

手に持っていた本がバサバサと音を立てて落ちているというのに、まるで頭に入って来ず。友達が、「どうしたの?」なんて心配そうに声をかけてくれていると言うのに、まるでフェードアウトしていくように、ぼんやりとしか聞き取れず。


私の目は、思考は、全て彼に奪われてしまった。

なんなら、命すら奪われたと言っても、過言ではなかったのです。

私は、なりふり構わず走り出し、私よりも一回りも二回りも大きな彼の手を掴み、叫ぶように聞くのでした。


「しゅ、恋愛の守備範囲は何歳までですか!」


「どういう事なの!?」


後ろから、友人のツッコミを入れる声がやけに遠く聞こえました。

他の人の視線が、痛いほどに突き刺さっているというのに、私は、ちっとも気になりませんでした。

ただ、やはり、彼に私の五感が奪われてしまったような気がしてなりませんでした。


彼は、ポカンとした表情で、私を見下ろしていました。

きっと、突然手を掴まれ、訳の分からない疑問を投げ掛けられたことに、困惑と恐怖を抱いているに違いがありません。

しかし、そんな私の考えとは裏腹に、彼はふはっと吹き出し、少し肩を震わせながら、目を逸らしていました。


「か、変わってるね、君。」


困ったように、されど、面白い物を見付けたと言わんばかりの顔で、彼は腰を下げて、私と目線を合わせました。

視線が交差するのを、こんなにも強く感じたのは、後にも先にも、この瞬間だけでしょう。

ビリビリ、パチパチと、視界が弾け、けれど、決して彼からは視線を外せませんでした。


「守備範囲年齢だっけ?」


彼は、目を細めて、真っ黒な瞳に私を映します。彼は、同じ学年とは思えないほど、色気がじんわりと滲み出ていました。

色気に当てられて、軽く目眩がしました。

彼のそれは、麻薬のようだ、と思いました。ずっとずっと、感じていたいと思ってしまうほど、中毒性がありました。

ふっと、口角を上げて、彼は妖艶に笑います。


「君なら、何歳でも良いかもね」


その言葉に、息を呑んで、足りない頭でぐるぐると、その言葉の意味を理解しようとしていました。

そして、漸く、鉛のように重くなった口を開いては、


「わたしのこと、すきって、ことですか!」


など、見当違いな事を口走り、更に混乱してしまいました。

「いや」「ちが」「そういう意味じゃなくて」だの、纏まらない言葉を何とか絞り出しながら、嫌われたくない一心で、言い訳がましい事を言い続けました。

彼は、先程よりも強く肩を震わせて、完全に私から顔を背けてしまいました。

近くにいた、彼の友人であろう人物に、「おいおい…」と呆れたように肩をつつかれていました。


そして、その方は、随分と愉快そうに笑いながら、言うのです。


「はいはい、二人とも。落ち着けよ…顔、真っ赤だぞ」


そう言われた時、初めて頬に熱が集中していることに気が付きました。そして、同時に、彼も私と同じ状況であることを理解し、より一層顔に熱が集まり始めました。


「ぁ」「ぇ、」「ぅ」など、言葉にならない言葉を零しながら、ぐるぐると頭が回るような感覚を覚えながら、微かに残った理性で、彼の手からゆっくりと、手を離そうとしました。

しかし、突然彼の手に力が込められ、離れることができませんでした。


顔を上げて、彼の方を見ると、いっそ、白々しさを覚えるほど酷く真顔で、けれど口角を微かに歪めながら、私を見下ろしていました。


「これから宜しくね」


どっちの意味ですか!



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