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救世主か、あるいは死神か
2019年2月19日。
蛍光灯の明かりが、不自然に青白く手術室を照らしていた。
血の匂い、緊張、沈黙。
モニターの数字は不安定に揺れ、ナースの目が震える。
それでも、その男だけは静かだった。
白衣をまとった医師が、メスを取る。
「失敗はしません。」
彼はそう言った。
「私は――256回中256回、成功しましたので。」
彼の名は、アベ・ツカサ。
人々は彼をこう呼んだ。
“奇跡の執刀医”。
だがその日、彼が救った命は、
二日後に死亡した。