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武闘派体育祭 4

 次の対戦が始まると、観客は前の対戦を忘れたかのように盛り上がった。

 しかし、鉄子のクラス、虎美のクラスを除いた他のクラスは二つのクラスのような勢いはない。

 あれらと比べると見劣りしてしまいそうな、そんな騎馬ばかりだ。

 その一方で、鉄子と虎美の猛攻は止まることを知らなかった。

 二つのクラスは怒涛の勢いで相手の騎馬を崩し、蹴散らし、駆け上がっていった。

 鉄子の騎馬はその勇猛果敢な破竹の進撃で会場を盛り上げ、虎美はその大胆かつ容赦のない猛攻で会場を絶句させる。

 やがて二人は騎馬戦の決勝へ、どちらかがその頂上に立たんとしていた。

 

「なぁ、広能の兄ちゃん。兄ちゃんはアタシと桜井、どっちが勝つと思ってんだ?」


 そう声をかけてきた虎美の頭には鉢巻が巻かれていた。

 この決勝戦に辿り着くまで、虎美は騎手として立つことは無かった。

 後ろでクラスの兵隊に号令をかけるのみ。それでも、ここまで勝ち上がってきたのは、虎美がリーダーとしてクラスを特訓させてきたから、そして的確な指示をしてきたからだ。


「その鉢巻...ついにお出ましってことかい?」


「そりゃそうだぜ、相手はあの桜井なんだからな。それで、どっちが勝つと思ってんだ?」


「そんなこと言えるわけないじゃないか。僕はただ見届けるだけだよ」


「そう桜井のガキに吹き込まれたんだろ?」


 吹き込まれたとは...尖った言い方をする。朝は仲がよさそうだったのに。二人の距離が縮まったかと思えば、やはり鉄子への敵対心は摘まれないのか。


「僕はどっちも持ち上げることはできないよ」


「そりゃあ半端なことで」


 半端...その言葉が、今では飲み込みづらい。前まではいくら半端だのなんだの言われようが、すんなりと受け入れられたのに、認められたのに、躱せたのに。

 桜井鉄子の兄貴分として立った。盃を交わした。そんな僕が前と変わらぬままではいかない。しかし、ここで変わるということは、大友虎美を切り捨てるといことも意味していた。


「まぁ兄ちゃん...あんたは半端なままでいいんだよ」


「どういうことだよ?」


 不意の言葉に思わず驚き振り向く。心の中の葛藤を根本から否定された。誰かが僕が抱えていたものを奪っていったような、そんな不意の言葉だった。


「兄ちゃんはカタギじゃねぇか。カタギはいらんこと考えねぇで半端なまんまでいいんだよ」


 ある種の諦めにも聞こえた。虎美はいつもの調子で言っていたが、その言葉にはどこか物悲しさを孕んでいた。僕と虎美の間に壁があるような、その壁を立てたままにするようなそんな諦めを感じた。


「じゃあアタシは行くぜ、よく見といてくれよ?」


 そのまま虎美は会場へと歩いていいた。

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