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第18話 フォルティリゼイナ帝国-5

 昼食時も過ぎた昼下がり。王都の広場の煉瓦道を人々が行き交う中、アイ達一行は王国を発つサナの見送りに出ていた。


「通りすがりだったのに一緒にお城に泊めてくれてありがとう。

 迎えが来るからそろそろ行くね」

「ペッ」


 予定の時刻が近づき、サナと足元のアレッペが別れを告げる。


「魔獣を鎮静化できたのはサナの協力のおかげだからな」

「サナ~また会えたら特訓の成果見せるからね~!」

「アレッペまたな~!」


 思い思いに挨拶を交わすジフとカナ、そして頭の上のガリュマに挟まれながら、アイも一言くらい何か言おうかと考えていた。

 そうしてサナを見ていると、アイは漠然と既視感のようなものを感じた。鮮烈な蒼色の髪と、金色の瞳……つい最近も、どこかで見たような……と、記憶を巡らせていた、その時。


「アイ、この前はごめんね」

「えっ? 何が?」

「晩餐会の夜のこと」


 サナの方から、不意にアイに向けて言葉をかけられた。しかしそれが詫びであることにアイは心当たりがなく、戸惑ってしまう。……〝晩餐会の夜〟を全く気にしてないと言えば、嘘になるが。


「な、なんで俺に……?」

「今度また会ったらアイともお話ししたいな」

「う、うん……」


 完全にサナのペースに流されてしまった。アイも彼女のことを悪く思っているわけではなので、言われるがまま挨拶に頷く。やはり、彼女がジフやカナと早々に仲良くなるのもわかる気がした。


「じゃあみんな、またね」

「ペェ~」


 サナが左腕にアレッペを抱え上げ、もう片方の右手を振る。アレッペもまた片手をひらひらを揺らす。一行が手を振り返す中、サナは踵を返し、蒼色の長い髪と黒いスカートを揺らして歩き出す。



 彼女の背中が人混みの中に消えた頃合いに、アイがわざとらしく声を潜めて隣のジフに言う。


「……ジフ、良かったのかよ。

 サナ本人は気にはしてないけど忘れてもなかったみたいだぞ。

 サナが帰るまでに心残りなく話せたのか?」

「何で俺に聞くんだ」


 妙な仕草をするアイを、ジフは訝しげに睨む。


「いやだって、ジフとサナってとっくの前から仲良しだったじゃん?

 だから今回サナも一緒に行動することになったわけだし。

 それにサナと話してる時のジフ、すげー顔が優しいし。

 でもサナはカナにいってぇ!!」


 珍しく洞察力を働かせるアイの尻に、ジフのローキックが炸裂した。


「何が言いたいのかわからんが、俺はサナのことを異性と認識はしていても意識をしたことなんてない。

 仲が良……話しやすいのは、それだけ彼女が信頼するに値する相手だらだ」

「ふ~ん……」

「そんなに気にしてるならお前こそカナとちゃんと話したのか。

 サナにまで気を遣われて、情けない」

「えぇ……? それはその……」

「二人とも何の話してるのよ」


 身を寄せ合ってひそひそ話に夢中になっているアイとジフの間に、ぬっとカナが現れる。二人は短い声を上げて咄嗟に離れた。


「今わたしの話してた?」

「い、いや……」


 眉を顰めたカナが交互に二人の顔を見る。図星を突かれたアイとジフはわかりやすく狼狽えている。隠し事をされたカナはさらに頬を膨れさせる。



「……あ、ああ~! そう言えばまだ午後からの予定決まってなかったっけ!

 俺行ってみたい所あるんだ!」


 カナの追求を振り切るようにして、アイはわざとらしく話題を切り替える。アイの大きな声に、運良くショウが反応してくれた。


「行ってみたい所ですか?」

「うん。えーっと、ここなんだけど」


 アイは懐から王国の地図が載っているパンフレットを取り出し、みんなの前で広げて指を差す。リンやショウが覗き込みながら場所を確認する。


「王都の郊外でしょうか? 結構遠くの森の辺りですね……」

「ここは確か、とある資産家の洋館がある所じゃなかったですか?」

「……ここ、前に行ったことがある気がする」


 心当たりを示したのはカナだった。パンフレットには小さな森に囲まれた洋館が写っている。その建物とカナの記憶が一致したようだ。アイもそれを知っていたのであろう、少し複雑そうな顔をする。



「そう。たぶんこの洋館、ヨータが前に行ったことがあるんだよ。

 ヨータの荷物に、仕事の資料をまとめたファイルがあるんだけど、

 前にたまたま運び屋の仕事で開いた時に、仕事とは関係なくヨータが自分で行った場所のメモもあったんだ。

 そのうちの一つがこの洋館だった」


 アイの説明に、カナとジフが静かに驚く。同じくその場で聞いているショウも、洋館に関する知識を巡らせる。


「この洋館の持ち主は、プライベートで貴重な考古学の文献を集めて保管する趣味があるそうです。

 洋館の中には立派な書斎があると評判で、観光や見学に来る人もよくいるそうで」

「……つまり、ヨータがここの文献について、何か調べに行った可能性があると……?」

「……うん」


 確認するようにジフに問われ、アイは頷いた。確認というのは、具体的な目的と、アイの心境の二つの意味だろうけれど。


「王都にある公共の資料では手詰まりになっていた所ですし、

 今度は個人で保管されている物を調べてみるのもいいかもしれませんね」


 ショウもアイの心境を汲んだのだろう、しかしアイの顔を立ててかあくまで合理的な言い方で、アイの提案に同意した。



「あ……でも、王都から結構離れてるから、リンが一緒に来るのは危ないか……?」

「それについては心配ご無用です!」


 心配がよぎるアイだったが、リンの傍に控えていたヴィッキーが、威勢よく答える。


「姫様にはヴィッキーさんが付いてるのもありますけど、王国領内には各所に騎士が駐在しているので、郊外にも騎士の方々が待機していますよ。

 何かあった時はヴィッキーさんの要請ですぐに来てくれますから」


 疑問にショウが解説する横で、得意げな顔のヴィッキーがおもむろに右手を挙げる。その直後には周囲に控えていた数人の騎士が彼女の後ろに整列した。


「すぐってそんなすぐ!?」

「それでリンが変装してヴィクトリアさんから離れると機能しなくなるわけか」


 ヴィッキーが披露した臣下の権限に、ジフと共に思い思いに感想を述べ、誇らしげなヴィッキーの周りに集まるアイ達。



 目的が定まり、懸念も解決して、アイは改めてカナに言う。


「カナには先に相談するべきだったよな……

 ごめん、勝手にヨータのファイルから漁って……」

「ううん、ヨータのファイル、大事にしてくれてたんだね」


 後ろめたそうなアイとは裏腹に、カナは穏やかに微笑む。


「やっぱりアイに運び屋を任せて良かった。

 私もヨータが何を調べたのかちゃんと知りたいし、洋館に行ってみよ!」


 さっきまでの膨れっ面はどこへやら、カナは無邪気な笑顔をアイに見せる。陽だまりのような笑顔にアイの胸がどきりと跳ねた。カナがリン達との会話に混ざった後もアイがしばらく呆けていると、今度はジフの肘が横腹に直撃する。


「いてっ、なんだよ!」

「別に」


 現実に引き戻されたアイに、ジフは意趣返しのような呆れた笑みを見せる。じんじんとする横腹を押さえながら、アイ達も会話の輪に加わった。




 * * *




「ほいよ、クレープ二つお待ちどうさん」

「うひょ~ありがとおっちゃん!」

「落とさねぇようにな。そっちの兄ちゃんは目ぇ怪我してんのか?」

「……すぐ治る」

「お大事にな~。これ、お釣りの四百ダイス」


 今日も人々で賑わう、昼下がりの王都の一角。店が立ち並ぶ市場に、長い袖越しに両手でクレープを持つ少年と、右目に白い眼帯を付けた長身の少年が歩いていた。

 ――カイルとジュディエ。コキュートスの氷人形達。しかしいつも着用している、黒に幾何学的なラインが入ったフードの服ではなく、今は王都の住民となんら変わりないカジュアルな服装をしている。


「人間の女が好きな食べ物って聞いてたけど、店やってたのめっちゃいかついおっちゃんだったじゃん。

 あ、ジュディエもいる?」

「いらない」

「だと思った~。こっちはメイアにあげよ。

 てか今日のジュディエ、いつもの黒い眼帯じゃないとひ弱っぽくてウケる~。

 店のおっちゃんにも心配されてたじゃん」

 ダサいヘマをしたか喧嘩に負けた奴みたい、と無邪気に悪口を吐き散らすカイルを無視して、ただ彼が羽目を外さないか監視しながらジュディエは無言で歩き続ける。



 彼らとは別の場所。ハンドメイドのストーンアクセサリーが並ぶ店内で、二人の少女が身を寄せ合い、食い入るように商品を凝視していた。


「アルズって……何色が好きなのかしら……」

「やっぱ青色なんじゃない~? どっちかっていうと水色?

 ていうかノーラ、そんな爆弾の配線処理みたいな顔しなくても大丈夫だって~!」


 爆弾の配線処理とはよく言ったもので、アルテノーラは選ぶ色を間違えれば命を失うが如き鬼気迫る表情をして、商品棚のアクセサリー達と睨み合っていた。


「アルズに渡すのよ!?

 ここで間違えたら私がアルズのこと何もわかってないみたいじゃない!」

「ノーラがアルズに喜んで欲しくて選んだって伝われば大丈夫だよ~。

 もしくはアルズが付けてて素敵だと思うやつを選んじゃえば~?

 わたしもこれ買っちゃお~」

「アルズが付けてて素敵な……」


 話している間にもメイアの方が先に決めてしまい、一方アルテノーラは思い浮かべた想像上のアルズに耽っている。少しして我に帰り、覚悟に満ちた顔で指を差した。


「こ……これにするわ!!」




 店を出た二体は、すでにそれまでの店で購入した大きな紙袋を腕に提げていた。それらに比べれば両手に収まるほど小さな包み紙を恐る恐る手に持ち、アルテノーラはいまだ緊張の面持ちで見つめている。


「決まって良かったね~ノーラ」

「う……上手く渡せるかしら」

「プレゼントは渡すまでが一番楽しいんだから~!

 頑張ってるノーラを応援するの、わたしも楽しいよ!」

「アンタ他人にプレゼントなんてしたことあんの?」


 尤もらしいことを言うメイアだが、アルテノーラに指摘されると「エヘヘへ」と笑って誤魔化している。



「メイア~! ノーラ~!」


 店が立ち並ぶ市場の道で二体が話していると、向こうの方から聞き慣れた少年の声が聞こえてきた。その声にいち早く反応したメイアがぱっと嬉しそうな表情になり、声の方に駆け寄っていく。


「カイルく~ん! 良いもの買えた?」

「おー! いろいろ美味いもん食ったしさっきクレープ買った! メイアのもあるよ~」

「やったー! ありがとうカイルくん!」


 合流したのは、両手で長い袖越しにクレープを持つカイルだった。彼の後ろにはジュディエもいる。カイルがまだ食べていない方のクレープを差し出しながら、メイアが持つ紙袋に目をやる。


「メイアもいっぱい買ってんじゃん」

「そうなの~! 洋服いっぱい買っちゃった! カイルくんが着たらきっと似合う服も買ったよ~」

「え~マジ!? どんなの~!?」


 二人揃ったことで輪をかけてはしゃぎ出すカイルとメイアを、アルテノーラが少し遠巻きに冷めた目で見ていた。


「何なのよこの頭の悪い会話……」

「お前も荷物が増えているな」

「うるさいわね!!」


 静かすぎていつの間にかすぐ横に回っていたジュディエに、アルテノーラは慌てて持っていた袋を隠した。


 彼ら四体は《影》の力を宿し、体が氷で構築された、異常現象を起こして人々を襲う異形の存在達だ。だが市民に扮した見た目のみならず、自然体で交わされるこのような会話を聞いても、彼らの正体に気付く者などいないだろう。

 今この王都にいる彼らは、賑わう市場で年相応にはしゃぐ、遊び盛りの四人の少年少女でしかなかった。



「はぁ~あ、毎日とは言わねーけどたまにこうやって町をうろつくだけの日がもっとあってもいいのにな~」


 メイアの荷物を拝見し終えたカイルが、なにとなしに溜め息と共に愚痴を吐き出す。


「好きなだけ戦って色々ぶっ壊すもの楽しいんだけどさ、

 動いた後疲れてだるいし、興奮しすぎて帰ったら何があったかあんま覚えてねーし、

 なんつーか時間を過ごした感じがしないんだよね~」


 直感的な、五感で感じたままを言葉にするカイルの吐露。本人にとってはただあけすけにごちているだけだが、彼ら氷人形にとって核心を突いたものだった。


「ものすごくたまーにこうやって地上の町に出してもらえるけど、

 何にも考えなくていいかわりにたくさん好きなことできるからさ~。

 毎日好きなもん食って好きな服着て好きに歩けたら、もっと思い出が増えんのかな~」


 “思い出が増える”、というカイルの発言に、他の三体もわずかに反応を見せる。


 カイルが言った通り、戦闘で副交感神経を刺激し、脳内麻薬が溢れ出した影響で、その波が消えた後は頭の中がぽっかりとした空洞になる。だが、それは体の自然な作用だけでなく、『ベッドルーム』と呼ばれる氷柱の中で物理的に記憶を消されているからだ。個人的な『思い出』が蓄積されることはないのだ。

 スッキリしたと感じることもあれば、不自然な空白ができた感覚に違和感を感じることもある。そうしている間に次の戦闘に駆り出される。その繰り返しだ。


「……俺もそう思う」


 誰の声かと思えば、普段は任務中の受け答え以外はろくに口を開かないジュディエだった。彼が自分から喋り出したことに、カイルだけでなく残りの二体も驚く。


「えー! ジュディエが賛成してくれるの珍しいじゃん。残りのクレープいる?」

「いらない」


 共感が嬉しかったのかカイルに食い掛けのクレープを差し出され、即答で断った。


「仮に、俺達に『個人的な記憶』が蓄積されたらどうなると思う?」

「え~? どういうこと?」

「任務に集中できなくなるじゃない」

「でも戦闘が楽しかったら大丈夫じゃない~?」


 ジュディエはカイル達に問いつつも、はなからまともな答えが得られるとは思っていない。それでも三体とも推測するだけの思考力はあることを確認した。


 ――経験や、そこで発生した感情の差異。それが『自己』を形作り、周囲とは違う個体になっていく。つまり違う考えや行動を取ることが当たり前になっていく。そのことにジュディエは気付いている。

 それが意図的に消されるということは、何を意味しているのかも――


「まあ~……でも、カイルくん、今楽しい?」

「えっ、うん。超楽しいよ」


 哲学的な会話の中、不意にメイアがカイルに問いかける。カイルは相変わらず率直に答える。


「カイルくんが楽しいなら私も楽しいよ~。

 ノーラだってアクセサリーを選んでる時は楽しそうだったし。

 ジュディエも今日はたくさん喋ってくれるし」

「何なのよ急に気色悪いわね」


 急に〝楽しい〟という意思表示をし始めたメイアに、カイルは頭にハテナを浮かべ、アルテノーラは気味悪がって身を引く。


「みんなが楽しいのが私も一番楽しいから。

 全員が同じ思い出を覚えてるって思ったらなんか不思議じゃない~?」

「あ~、なるほど確かに~!」


 心境を語るメイアに、恐らく深く考えていないカイルが一緒に喜んでいる。アルテノーラは変な物を見る顔をしていた。

 メイアの言うように、果たして今日の記憶が消されずに済むのだろうか。あるいは逆に、全員忘れたはずの記憶を誰か一人でも覚えていたら、その時一体どうなるのだろうか。ジュディエは一人思案するが、口には出さぬままだった。



「みんなお待たせ。遅くなってごめんね」


 四体の誰でもない、少女の声に呼び掛けられる。

 一斉に振り向けば、そこには蒼く長い髪と黒いドレスをたなびかせる少女――サナが立っていた。彼女の足元にはアレッペもいる。


「サナちゃんよかった~! 色々と予定通りに終わったみたいで」

「うん。みんなも王都楽しめた?」


 四体がこの市場に集合したのは、先に王都に赴いていたサナの迎えを任されたからだ。

 本来ならば、王国に展開している大精霊の結界の力で、《影》を宿している彼ら氷人形は容易く国土内部に侵入できない。しかし現在は結界が弱っている影響で、《影》の力を解放まではできずとも王国に踏み入れることが可能になった。いつもならサナやベリアルの工作に頼っているのだが、今回は役目が逆転している。


「お嬢はもう行く所ねーの?」

「ペェェ」


 カイルがおもむろにアレッペを掴み上げ、ぬいぐるみのようにもみくちゃにしながらサナに尋ねる。


「うーん、事前に決めてた所は大体回ったけど……

 ……でも、今日はアルズじゃなくてベリアルの指示だし。

 ベリアルなら細かいこと言わないから、暗くなる頃に帰れば大丈夫だよ」


 彼女らコキュートスの本拠地、アンダーベースでの指示を思い返しながら、サナは答えた。そして少し逡巡したサナは、今しがた思いついたように付け足す。


「私も夕飯にみんなと行きたいお店見つけたんだ」

「え~! 夕飯のお店に行けるの!?」 「やったー楽しみ~!」

「ペェ~!」

「だからそれまでは、みんなの好きな所を回っていいよ。

 これが終わったら、次からすごく忙しくなるから。今のうちに羽を伸ばしておいて」


 サナの提案にカイルとメイアが大はしゃぎし、カイルの手に掴まれたままのアレッペが巻き込まれている。


「まだまだ気になってたお店が色々あるんだよね~」

「アンタまだ買う気なの? 一旦荷物預けたいんだけど」

「なぁジュディエは晩飯なに食べる~?」

「その時考える」


 浮かれるメイアとは対照的にげんなりとした顔をするアルテノーラ。お目当ての店に向かっていく彼女達について行きながら、呑気で一方的な会話をするカイルとジュディエ。昼下がりの市場の人混みに、少年少女によく似た四体の氷人形が溶け込んでいく。


 彼らと食卓を囲んだところで、今日の些細な経験は、もっと強い刺激や記憶消去で呆気なく消えるだろう。そもそも氷人形は食物を摂取する必要はない。味覚を感知し、消化し、栄養を吸収するという機能は備わっているものの、最低限の肉体の維持にしかならず、戦力の増強にはならない。


 ……それでも、サナの中でなんとなく興味が湧いた。アイ達と行動を共にしていた時の過ごし方を、彼らにやらせたらどうなるのか。きっとカイルとメイアがずっと騒がしくて、アルテノーラが一々毒づき、ジュディエは我関せずを貫いている。いつもと大して変わらない。が、その想像を実際の光景として目にしてみたくなった。

 これは情なのか、単なる好奇心なのか。自分はアイ達に何か影響を受けたのか。それを楽しむ暇潰しもたまには良いだろう。


 あらゆる情報を映しているようで、しかし空虚な目で四体の背中を見つめていたサナは、解放されたアレッペを再び抱き上げて、市場の道へ氷人形達を追いかけた。


 ――18 フォルティリゼイナ帝国

次回更新:3月28日(金)予定

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