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第15話 ハイルカントリュス-1

 空中に佇んでいる巨大な鳥獣――その全身に纏う影が剥がれ落ちるかのように消えていき、本来の羽の色が露わになっていく。

 深く鮮やかな真紅と、高潔で神々しい純白。尻尾の先端で幻想的にひらめく虹色。鋼のように硬く巨大な爪の漆黒。鋭く艶めくくちばしの黄金色。そして大空そのものを映すような瞳の蒼色。


 そこに降臨したのは紛れもなく、古来よりカンティル族が御神体と崇め祀る天鳥の魔獣――ハイルカントリュスだった。



「どういうこと……? シズマ義兄さんの体にハイルカントリュスが憑依していたの……? どうして……!?」


 ハルアは突如目の前に現れた守り神の姿に驚愕する。アイ達も上空に君臨する巨大な鳥獣に圧倒される。


『お前から説明してやれば良いではないか、小僧』


 魔力を通して、ハイルカントリュスの声が響く。低く重厚感を感じる声。わざとらしく呼びかけられたショウは、未だ地面に膝をついたまま後ろめたそうに顔をそむける。


『……全く、この愚図が』


 侮蔑の篭った呆れ声でハイルカントリュスが吐き捨てる。直後、彼の目が光り、アイ達の脳裏に景色が流れ込む。



 ――数ヶ月前。気まぐれに大陸の空を回遊していたハイルカントリュスが、風に乗ってクラドザンク山脈に戻ってきた時だった。

 偶然、時同じくして一族の村に帰郷するため山道を上るシズマに気づき、瞬く間に彼の体に憑依した。そのままシズマとして村に足を踏み入れるが、その後出くわしたショウと他愛ない会話を交わした直後に、シズマ本人ではないことを見抜かれた。

 興を削がれたハイルカントリュスだったが、自分を守り神と崇めてくるカンティル族を長きに渡って眺めていた彼は知っていた。

 ――ショウが一族の風習に不満を抱いていることに。


 ショウの前で正体を表したハイルカントリュスは、彼に詰問する。


『小僧、お前はこのまま当然のように儀式が続くのを今年もこの先も黙って見ているのか? 前回は失敗したと云うのになぁ。

 ……だがこれは変化のためのきっかけだと思わんか?

 誰にも賛同されぬのなら、お前自身が証明せねば雪辱を味わい続けるだけだぞ』


 正体を見抜いた意趣返しとでも言うように、ハイルカントリュスもまたショウの抑圧された感情を見抜いていた。


『《影》と煉獄の使者……その脅威を知っているな。それらと相対する大いなる力がこの山に近づいてくる気配がある。それを今度の儀式で私に捧げろ。それを示しとしてお前の望む変化を私が認めてやる』


 まるで楽しんでいるかのように、ハイルカントリュスは自らそう提案した。

 ――そう。守り神を祀る儀式の破壊を企てた、全ての黒幕。それは崇められているハイルカントリュス自身だったのだ。



 いきなり流し込まれた景色がいきなり終わり、アイ達は現実に引き戻される。その一部始終を見せつけられたアイ達は呆然としていた。


「いや……待てよ、ショウはハルアさんを助けるために儀式を止めたかったとしても、なんで今までずっと崇められてきたお前が、ショウにそんなことさせる必要があるんだよ!」


 直接会話を見せられてなお、アイは納得できずに問いただす。『守り神』と呼ばれているハイルカントリュスが、儀式を阻止したいショウをどうして肯定し、指示したのだろうか。


『――飽きたからだ。お前達一族に』


 あっさりと吐き捨てられた答えに、絶句したアイ達の表情が歪んだ。

 

『何十年、何百年と代わり映えのない儀式で、特別美味くもない鳥人を食わされ続ける。

 千年前に《影》の災厄が迫ろうと、私が魔獣になろうと、お前達は変化を乗り越えようとせずただ同じことを繰り返しただけだった。そして煉獄の使者共が再びこの時代に蘇ってなお……何一つ変わろうとしない。

 そんな心底つまらんものを、《影》を葬った後の世に残す意義など毛頭感じられんのだ』


 守り神であるはずのハイルカントリュスから吐き捨てられた無情な言葉の数々。

 ハルアは唖然とし、ショックを受ける彼女を見てショウは苦渋を噛みしめる。


『そして――そこの小僧。此奴には《影》の病の兆しが見えたからだ』


 だが、追い討ちをかけるようにハイルカントリュスが言い放つ。ショウはひゅっと息を呑み、アイ達が彼を見る。


『己の一族に対する疑心暗鬼が増幅し、それが病と結実すれば凄まじい狂気的が爆発して一族ごと破壊する。

 最後くらい見納めに相応しい派手な宴を眺めながら、捧げられた大いなる力に舌鼓を打って終いにしようと思ったのだ』


 見世物を待つ観客のような物言いだった。ずっと共謀していたにも関わらず、ショウには初めて明かされたのだろう。


「……僕が……黒影病……?」


 ショウは地面にへたれ込み突っ伏したまま、しかし衝撃を受けた顔で、突き付けられた自分自身の現状を信じられずにいた。

 フユリが黒影病で死んだことが、全ての始まりだった。その感情が、いつの間にか自分自身を苛む負の感情になっていた。ハイルカントリュスという強大な存在と共犯になったことで、これで本当に一族を変えられるという思い込みに変わっていた。


 一族の思考停止した浅ましい風習とは違う、使命感すら感じていた行いだった。――はずだった。

 黒影病になりかけて理性を失っていたのは自分の方で、今までの行いは愚行に過ぎなかったというのか?

 どこまでが自分で考えた選択で、どこから我を忘れていたんだ?

 見開いたショウの瞳が揺れ、呼吸が不安定になっていく。


 そんなショウの姿を見ているアイもまた、強い衝動が込み上げていた。

 黒影病で苦しむ者を知っている。助けられなかった時のことを嫌でも覚えている。そうでなくとも、ショウは今苦しんでいる。そうなるように誑かした奴が目の前にいるのだ。

 アイはおもむろに前へと歩み出た。


「ショウ……やっぱり俺は……お前に協力する」


 不意に呼びかけるアイの声で、ショウははっと顔を上げる。一番前へと進み出たアイは、上空のハイルカントリュスを強く睨んだ。


「お前も、一族のみんなも、これ以上こんな奴を崇める必要なんかねぇよ! この村からいなくなるのはお前の方だ! ハイルカントリュス!!」


 張り上げた声と共に堂々と剣を向けたアイの右手の輝石が輝き、彼の体から眩い光が迸る。

 光の中から空中に飛び立ったのは――粒子が舞い散る真紅の光の翼、大星座の証を背に広げたアイと、竜の翼で飛翔し朱色のたてがみが輝く竜獅子、獅子焔座(ししほむらざ)の大精霊ガリュマダロン。

 ハイルカントリュスの目に映るその姿は、かつて世界を救うために契約を願い、彼がそれを拒否した青年――《明星の救世主》とよく似ていた。


『成程……近づいていた大いなる力の一つはお前だったか。千年前の頼みを蹴った報復を果たしに来たというのか?』

「んなもん俺には関係ねぇ。でも《救世主》がお前と契約しなかったのも、お前が魔獣に降格されたのも、それで正解だったと思うぜ! ショウやハルア達の気持ちを散々バカにしやがって! 行くぞガリュマ!!」

『おうッ!』



 かつては大精霊に並ぶ存在であった天頂の魔獣を、正面から指差すアイと、それに応えるガリュマダロン。

 ショウは上空に浮かんでいるアイを見上げていた。このビテルギューズの地で生きていて知らぬ者はいない――《救世主》と同じ大星座の光の翼が、彼の目に焼き付けられる。


「アイくんが……大星座……!?」


 大星座の降臨――共に戦う意志を示すアイの翼から、青空に粒子が降り注ぐ。ハルアもまた、守神の本性を目の当たりにして戦意喪失しかけていた闘志を奮い立たせた。


「たとえハイルカントリュスの言うことでも……せめてこの子達をここから助けなきゃ……!」

「……何にせよ戦わないとこの山から生きて帰れそうにないな」


 格闘技の構えを取るハルアに続き、ジフも再び実体化させた槍を握る。

 覚悟を固めるハルア達を、ショウが見ていた。そして彼自身も決断するようにまぶたを強く閉じ、再び開いた目でハイルカントリュスを見上げて立ち上がった。


「ハルアも……一族のみんなも……巻き込んでしまったこの子達も――フユリ姉さんのために、もうこれ以上誰も死なせない!! お前を倒してこんな儀式終わりにするんだ!!」



 眼下にいる者達が、自分に刃向かおうと構えている。ハイルカントリュスは舞うように身を翻し、空に広げた大きな翼から、礫の如き無数の羽根を地上に放つ。

 広範囲に降り注ぐ羽根が地面に衝撃と土煙を起こす。が、直前でショウとハルアが起こした風がドーム状のバリアになり、羽根が散り散りに吹き飛ばされる。


「ジフくん!! あいつより高い位置から水の魔術を!!」

「わかった!」


 吹き荒ぶ風音の中、ショウの咄嗟の指示にジフも即座に応じて術を放つ。


「《海槍の奔流(タイダル・トーレント)》!!」


 足元に展開した魔法陣に、ジフが槍を突き刺す。直後、ハイルカントリュスの頭上で閃光が弾け、豪雨の如き水塊が巨体に落下した。

 鉛を叩きつけられたに等しい衝撃がハイルカントリュスを襲い、羽ばたいていた翼の動きが鈍る。



「うぉおおおお!!」


 直後、飛翔するアイが空を切って炎を纏った剣を振り下ろし、寸前で見切ったハイルカントリュスが鋼の如き嘴で受け止めた。さらに反対側から同じく翼で駆けるガリュマダロンが牙と爪で襲い掛かり、まさに鍔迫り合いの鋭い音と激しい火花が繰り返し空に弾ける。


『このような子供騙しごときが……!!』


 再び互いを弾き返した時、ハイルカントリュスを守るように翼から竜巻が放たれる。風圧を凌ぎきれなかったアイとガリュマダロンはそれぞれ背後の壁へと叩きつけられ、砂塵が上がった。



「アイくん!!」


 ショウ達がその様を見ていた間にも、上空のハイルカントリュスは広げた翼から頭上に巨大な風の球体を生み出す。祭壇の道具や捧げ物すらも巻き込んで威力を増していくその風が、ショウ達に向かってレーザー砲のように放たれた。

 先頭に立っていたショウが直ちに両手を伸ばして風のバリアを展開する。地面ごと削ぎ剥がす勢いの暴風が、ショウの風越しに全身にのしかかる。暴風の勢いは止まることなく、このまま続けていればショウの両腕がへし折れるのが先だろう。

 そこに、ショウの後ろに着地したガリュマダロンが咆哮を上げた。


『グォオオオオオオオオ!!』


 ガリュマダロンの全身から上り立った魔力がショウの体へと降り注ぐ。ハイルカントリュスと同等かそれ以上の、大精霊の力を纏ったショウが、叫びと共に力を振り絞る。


「うおおおおおおああああああ!!」


 そして、ショウが暴風を正面から真っ二つに裂いた。風の残滓にガリュマダロンの魔力が混ざり合い、後ろに立つハルアが構えた両手に集わせる。


「はぁッッ!!」


 残滓が新たなエネルギーの球体になり、強い熱の宿るそれを上空に放つ。一直線に宙を裂き、摩擦で漲る球体が、ハイルカントリュスの暴風とぶつかり合った。


 周囲一体に荒れ狂う衝撃波が迸る。それが止むよりも前。

 ハイルカントリュスは前方から強い熱気が迫るのを感じ取った。

 暴風の層を突き破って現れたのは、紅蓮に煌めく炎を纏った大鳥。大精霊ガリュマダロンの炎を宿した、鳥になったショウだった。

 白銀に渦巻く暴風に、火の粉が舞い踊るその中心で、二体の紅の鳥が衝突する。



 爆炎と衝撃を振り払い、ハイルカントリュスは前方に視線を戻す。己と同じ高さの上空――その目の前で、剣を構える赤い光の翼の大星座、アイがいた。全身から揺らめく炎のように魔力を滾らせる。


「今度はお前が焼き鳥になるんだよ!!」


 アイが声を張り上げて宣言し、彼が構える剣の切先に集う炎が、巨大な灼熱の紅球になる。


「《さんざめく払暁(ライジングウェイブ)》!!」


 そしてアイが振りかぶった剣から豪速球の紅球が放たれ、ハイルカントリュスに直撃する。その巨躯が炎に呑まれた。


「ショウ!! 今だ!!」

「はい!!」


 上空からアイが呼びかけ、地上で人の姿に戻ったショウが前へと走り出す。

 ハイルカントリュス炎の中から辛くも翼を広げて炎を振り払う。しかし大星座の炎に焼かれた真紅の羽毛は煤まみれになり、その表情からは消耗を隠せずにいた。



 時間にして僅か、しかしその間にショウはハイルカントリュスまで距離を詰め、地面を蹴って跳躍する。アイの光の翼と、ショウの鳥獣の翼でハイルカントリュスよりも高く青空に飛び上がり、二人は狙いを定めてそれぞれ剣と脚を構えた。


「《緋龍斬刀ブレイズ・バーミリオン》!!」

「《猛禽の嘴フィニッシャーズチェスト!!》」


 太陽の光を背に受け、咆哮と共にありったけの魔力を込めた彼らの体から炎が燃え滾り、地面へと駆ける二筋の眩い閃光となってハイルカントリュスを一直線に貫いた。

 二人の渾身の攻撃をその身に喰らったハイルカントリュスは大きな爆発に飲み込まれ、巨大な影と爆煙を背に着地したアイとショウが地面を滑る摩擦で砂塵を吹き上がらせた。


 白と黒の煙が入り乱れる中で、墜落した巨体が重い音を響かせ地面を震わせる。引いていく煙の隙間から地面に墜落したハイルカントリュスを捉えたショウは、翼をはためかせて猛スピードでその巨体に迫っていった。

 拳に纏った青い炎が激しく燃え立ち、トドメの一撃を正面からぶつける。



 ――寸前、ハイルカントリュスの目の前でその拳は届くことなく、ショウの足は止まっていた。



 右腕を突き出したまま立ち止まっているショウの姿にアイ達も驚愕する。ショウは拳をそれ以上動かすことなく、けれどもさらに強く握りしめる。


「……お前……衰弱してるんじゃないか……《影》の影響を受けたのか……だからお前はカナさんの力を――」


 絞り出すようなショウの言葉に、アイ達が驚く。

 かつては大精霊と並んでいた魔獣が、子供数人だけの手で追い詰められた。大星座のアイと大精霊のガリュマダロンが加勢していたとはいえ、確かにあっさりし過ぎている。

 同じ人ならざるものだからか、可能性を悟ったらしいガリュマダロンが言う。


『大空の風を司る魔獣なら……《影》の侵食が強い土地があれば、周辺の大気の影響を受けるかもしれない……大陸中にそういう場所が増えるほど負荷も増えて……』


 ハイルカントリュスはその隙に逃げることも反撃することも、ショウの言うことを否定もせず無言で地に伏している。


「お前さえいなくなれば……もう儀式なんて必要なくなることも……こうなるまで僕達カンティル族がずっと同じ儀式を繰り返していたことも……わかってるんだ……だけど――」


 小さな風が砂を撫でる中、誰に問われるでもなくショウは拳と声を震わせながら吐露する。


「作物が育つのも、波が流れ続けるのも、風が何かを動かすのも……風が起こす災害から大陸を守るのも……

 季節の巡りを乗り越えてまた同じように次の季節が迎えられるのは……決して簡単なことじゃない……!

 それでも僕達一族は……何百年も、何千年もの間ずっとずっと風の恵みを守り続けてきたんだ……!!

 それを僕が今ここで……僕の手で壊すことは……」


 そして前に突き出していた己の拳を地面に殴りつけ、彼は膝から崩れ落ちて項垂れる。



「……僕には……できない……!!」



 ショウの怒りや苦悩が、彼自身の誠実な心を苛み、その痛みを滲ませて吐き出した本心を、アイ達とハイルカントリュスが黙って聞いていた。

 望みを断ったのは、黒影病の兆しを自覚し、理性を取り戻したからだろうか。………いや、最初から今この時まで、ショウは悩みながら、戦いながら考え続けていた。そして自分自身の否定も厭わず、結論に辿り着いたのだ。



 やがて、ハイルカントリュスがおもむろに体を起こし、翼をはばたかせて突風でショウを後方へ吹き飛ばす。彼のもとへハルアやアイ達が駆け寄るのを見下ろしながら低い声で吐き捨てる。


『最後まで中途半端な甘ったれであったな、お前は』


 ショウを支えるアイが、キッとハイルカントリュスを見上げた。


「でもショウはお前に勝ったぜ」


 それだけは揺るがぬとアイははっきり突きつけ、さらに続ける。


「誰にもわかってもらえなくても……ずっと一人で悩んで抱え込んで、走り回ってもがいて、最後は自分の手でお前を倒した。俺達がショウと出会ったのも、俺が力になったのも、必死に何かを変えようとしたショウが自分で手繰り寄せたんだ。それでもまだ何も変わらないって言うのかよ」


 アイの問い掛けにも、ハイルカントリュスは沈黙している。


『……そこまで言うなら己らで好きにするがいい』


 静寂を裂いて、ハイルカントリュスが言った。再び羽ばたいて上空に飛翔する。


『久方ぶりに大星座と大精霊の相手をして、しばらくじっくり眠れそうだ。その間、今までのように私に縋ろうと私の知ったことではない。自ら行った私への無礼と高説通り、精々無駄な足掻きをしていると良い』


最後に空から吐き捨て、ハイルカントリュスは全身が淡く光り出し、光の粒となって魔力に還り、霧散した。



 光の粒の残滓が風に吹かれて空に溶けていった。ハイルカントリュスが消えた後の空を、ショウとアイ達はしばし見つめていた。やがて、ショウがはっと思い出す。


「シズマ兄さん!!」


 立ち上がったショウが祭壇の方へ走り出し、アイ達もそれを追いかける。祭壇に上がると、ハイルカントリュスの憑依から解放されたシズマが倒れていた。


「義兄さん! 大丈夫!?」


 ハルアがショウと共にシズマのもとに膝をついて呼び掛ける。二人が見守る中、ジフがシズマの体の状態を確認する。


「脈と呼吸はある……気絶しているだけだ」

「すぐ治癒するから……!」


 カナもその場にしゃがみ込み、手をかざして治癒の光を発現した。光がシズマの全身を包み溶け込むと、彼のまぶたがゆっくりと開いた。


「……ショウ……ハルア……?」

「義兄さん……!」


 意識が戻ったシズマに名を呼ばれ、ハルアは目を潤ませながら安堵した。



「――終わったか」


 不意に、祭壇の下から老人の声が聞こえ、アイ達が振り向く。長老とお付き達数人の大人が、こちらへ歩いていた。その中にはショウの母もいた。


「村からも見えておったぞ。お前達がハイルカントリュスと戦っている激しい光が」


 激しく怒るでもなく、長老はそう言った。だが彼を含めた大人達は皆、重々しい、そして苦い顔をしていた。


「理由は後で詳しく聞くとするが、まあなんとなくわかっておる。祭りの予定を変更せねばならんな。ひとまず今は村に戻って休みなさい」

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