咲くやこの花 風待草
仙道アリマサさま主催 “作詞家になろう!”
『仙道企画その5(ボカロ企画その2)』への参加作品です。
⇒ 曲&素敵イラストがつきました!
頁下部の画像リンクから動画にとべます。
はなれゆく あなたにと 手向けるはこの花
「幸せに」なんてことばは いらないのに
いかないで ほんとうは 泣いてすがりたかった
笑うことしかできないの 風待草
雪はとけ 流る
虫たちは 戸をあく
季節はめぐる いく幾年も ずっと
わたしはここに残されるのに
捨て置いてくれていい 他愛ない花なんて
春風よ 願いかなう日が くるのならば
旅立ちをいわう 青空に 餞となるのなら
笑っていよう 風待草
(仮名表記)
はなれゆく あなたにと たむけるはこのはな
しあわせになんてことばは いらないのに
いかないで ほんとうは ないてすがりたかった
わらうことしかできないの かぜまちぐさ
ゆきはとけ ながる
むしたちは とをあく
きせつはめぐる いくいくとせも ずっと
わたしはここにのこされるのに
すておいてくれていい たあいないはななんて
はるかぜよ ねがいかなうひが くるのならば
たびだちをいわう あおぞらに はなむけとなるのなら
わらっていよう かぜまちぐさ
この花(此の花、木の花)、風待草 =いずれも梅の花を表す言葉です。
曲先の作詞作業だったのですが、いただいた曲から和風の響きや切ない雰囲気が感じられました。
企画を知ったのが1月末、開始が2月からということで、その時節の和のモチーフでいこう! と思い。
なら梅にしようかな、と調べているうちに色々とイメージが湧いて、梅の花、冬から春へと続く季節、別れ、和装の女性……などを浮かべながら作ってみました。
梅が「風待草」と呼ばれるのは、東風を待って(春の訪れを待って)咲くことから、だそうです。
「この花」は、和歌から。
「難波津に 咲くやこの花 冬ごもり 今は春べと 咲くやこの花」
王仁『古今集仮名序』
(「この花」=「梅の花」というのは、古今集仮名序に添えられた古注にて、編者の紀貫之が「梅の花を言ふなるべし」と注釈しているとのこと。
※あくまでもこの和歌では。例えば時代や背景等によっても、「花」が何の花を指すかは変わってきます。)
雨水……降る雪が雨へと変わり、雪解けが始まる頃。
蟄虫啓戸……土中で冬眠をしていた虫(といっても虫だけでなくすべての生き物の意)たちが、暖かい春の日差しの下に出てき始める頃。
(参考:「暦生活®️」https://www.543life.com/)
などの、二十四節気、七十二侯も織り込んでみました。
真ん中の曲調が変わるところ、滔々と流れる川のように、歳月が流れていくような壮大なイメージだったので、そんなことも考えつつ。
和の切ない響きが、少しでも表現できていたらなと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!