思っていたより大ごとになりました、どうしましょう。③
(思ってたよりずっと面倒なことになってる…!)
先ほどから父が明かしてくるどの内容も、そのすべてがあまりにも想定外すぎた。
何よりも厄介なのは「サリエラがアンクロフトを攻略できる可能性がある」ということだ。
リリースされていたゲームの世界設定をそのまま反映しているのなら、サリエラとアンクロフトが結ばれることは絶対にありえなかっただろう。
サリエラが小細工をしようとも、ゲームの強制力が働くことでアンクロフトはリコリエッタ以外を選ばないはずだった。
しかし今は、確実に大丈夫だと言い切れない状況になってしまっている。
これはあまりにも大きな誤算だった。
それに、リコリエッタのこともある。
アンクロフトがサリエラに籠絡されることがなくとも、リコリエッタが龍の花嫁になってしまったら。
リコリエッタが受け取った龍の鱗というのが、求婚を目的として渡されたものであるとは言い切れない。
もしかすると本当に礼のつもりで、入手困難な霊薬の材料として渡された可能性もゼロではない。
(それでも…楽観視するのは危険だわ。事態を想定するんなら、なるべく悪い方にしておかないと…。)
リコリエッタの性格上、アンクロフトや国民の安全と自分の身を秤にかけられるようなことがあれば、間違いなく前者を優先してしまうのだ。
それはゲームのプレイヤーとしても、この世界に生きたエルミリアとしてもよく知っている。
もしそこにつけ込まれるようなことがあればー。
(相手を舞台から引き摺り下ろして、自分が代わりにその舞台に立つ…彼女は、それぐらいはやりそうな性根の持ち主っぽいもんね…。)
呪いなどというものを王族相手に躊躇なく使ってしまえる、その倫理観と無駄な行動力が何よりも怖いのだ。
この世界では王族相手はもちろんのこと、貴族相手に平民が危害を加えるようなことをすれば、即刻極刑ということもあり得る。
サリエラの身分は今でこそ男爵家の娘だが、元々は平民だ。
そもそも父親が賜った男爵位ですら当代限りのものであり、サリエラやその伴侶になる者に継がれるわけではない。
つまりサリエラ自身の身分は平民と変わらないということである。
(国外追放ならまだしも、死刑にはなってほしくはないし…。)
今の中身は性格のよろしくない転生者だが、元々は素直で明るいサリエラの身体なのだ。
可能な限り極刑という結論は免れさせたい。
とはいえ、それもすべてサリエラの行動次第になってしまうというのがまた悩みの種の一つである。
「さて、話を戻そう。」
父の言葉に、エルミリアはハッとした。
自分が考え込んでいる間に、また話が一段落ついてしまったらしい。
ところどころ聴こえていた単語を拾うに、重要な続報があった様子はないので問題はないと思うのだが、思考に耽ってしまう癖は我ながらどうにも考えものだ。
「エルミリアに接触してきた目的だが…可能性の一つとしては、男爵家の娘を見限ったということが考えられる。」
「やはり、可能性として1番に上がるのはそれですよね。」
「それは…殿下に解呪の処置が始まったからでしょうか?」
「本来ならばそう考えるのが妥当だが…そうとも限らんな。」
「え?」
「…そもそも私に接触するのが目的だった…ということですか?」
「憶測だが。…その場合は『見限った』というより、『用済みになった』と言うべきか。」
エルミリアは「何故」、と言いかけてやめた。
エルミリアに接触することが目的であったのならば、そんな回りくどいことをせずともやりようはあったはずだ。
わざわざ警戒させるようなことをする必要はない。
そう考えてしまうのは、エルミリアである自分に前世の感覚が抜けきっていないからなのだろう。
「確実に自分の話を聞かせるため、ということですね。」
エルミリアは公爵家の娘だ。
貴族の身分を持たない者が邸を訪れて、おいそれと会える相手ではない。
そしてそれはリコリエッタが相手になれば、さらに難しくなる。
ならばどうすればいいかー答えは明解だ。
話を聞かざるを得ない状況を作ればいい。
「私に会うこと自体が、リコリエッタに会うために打っている布石であると、お父さまはお考えなのですか?」
「…今のところはな。」
なんとも遠回しなやり方だ。
サリエラの願望とフェストラーダの目的が面倒に絡み合った結果、といったところだろうか。
(その気になればリコリエッタを無理矢理攫うことだってできるのにそれをしないのは…悪印象を持たれたくないから?)
もしそうなら完全に失敗しているわけだが。
あるいはこの「遠回り」こそが目的なのか。
「話を聞かざるを得ない状況でも作らないと、エリーは不審者とみなした時点で転移魔法を使って強制送還するか、消し炭にするぐらいはしそうだからね…向こうも慎重になったと言うことなのかもしれないな。」
「…お兄さま?さすがに失礼すぎませんか??」
さすがのエルミリアでも、素性も目的もわからない相手を初手で消し炭にするようなことはない。
…はずである。
「リコリエッタとエルミリア、どちらもに関わることが目的なのであれば、半分は達成していることになる。現状では相手の方が上手かも知れんな。」
「それは…」
ここでエルミリアは無意識に一呼吸置く。
この言葉は、フォルテリアという国で口にする者が他にいない、ある意味特別な言葉だからだ。
「私が、クロエ様の名を賜っているからでしょうか。」
執筆中のデータがすべて消えてから約2ヶ月…!!
記憶を呼び起こしながらなんとか続きを書きました…!!泣
バックアップ、だいじ。




