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思っていたより大ごとになりました、どうしましょう。②


(そんな話聞いたことない…!リコリーに言われたこともないし、設定資料集にもそんなの書いてなかったはず…!)


あまりに突然の告白にエルミリアは驚愕した。

リコリエッタ本人から打ち明けられたこともなければ、護衛に就くと正式に決まった時にもそんな話はされていないのだ。

そのような事情があったのならば、護衛をする上での注意事項として説明を受けるはずではないのか。

ナイトリアス侯爵家がフェランドル公爵家を害する恐れがないことを理解しているからこそ、王家もリコリエッタの護衛としてエルミリアを選んだはずである。

そうであれば尚のこと、こんな大事な話を聞かされていないことに納得がいかなかった。


(見初められた可能性…確定ではないから余計なことを言わなかったってこと?でも護衛をつけるならどんな些細なことでも、脅威になり得る可能性があることは伝えるはず…。)


頭の中で思考がぐるぐると回る。

「何故」という疑問が次々と湧いてくる。


(お父さまは知っている…知らされている…。それなら、侯爵家そのものが信用されていないわけじゃないはず…。)


「…驚くのも無理はない。龍族という存在が実在するのかすら定かではないと言われているのだからな。」


龍族はその個体数の少なさから、魔物の変異種であって「龍」という確立した個体ではないのではないかという研究者もいるぐらいなのだ。

そんな種族から見初められたなど、安易に明かせないのも無理はないのかもしれない。

エルミリアが父の配慮とは違う理由で考え込んでいると、ブライアンが会話に入ってきた。


「父上、見初められた『可能性がある』とはどういうことなのですか?」

「うむ…龍族の研究の第一人者として知られる者がいるのは知っているか?」

「リヒト・デーゲン氏ですか?ラフェイアの研究で有名な…。」

「そうだ。彼の研究によると、龍族には伴侶となる者と己の鱗を交わす風習があるとされていてな。」


(は?ちょ…!?)


エルミリアの背中を冷や汗が伝う。

先ほど父に嗜められた時とも、リコリエッタの秘密を知らされた時とも違った焦りだ。


「リコリエッタは幼い頃、王城にある庭園で怪我をした子どもを治療したそうなのだが…その相手が礼にと渡してきたのが、龍族のものと思われる鱗だったらしい。」


(お礼に鱗…!?いや、確かに逆鱗じゃなくても貴重な霊薬を作れるって聞くけど…!)


「鱗を渡してきた者が子どもにしか見えなかったことから、その場にいた従者はどこかで拾った『宝物』を礼として差し出したのだろうと思ったそうだ。リコリエッタ本人も幼かったためか、ほとんど覚えていないようだしな。」

「…その風習というものがわかったのはいつの話なのですか?」

「3年ほど前だ。その時に私にもこの話が知らされた。」


覚えのない設定に混乱した頭のまま、必死で前世の記憶を呼び起こそうと考え込んでいると、突然その記憶が甦る。

それはリリース1周年を記念した制作サイドへのインタビュー記事に書かれていた。

キャラクター原案者やストーリー原案者、サウンド担当者や作画担当者にまでインタビューをしたボリュームのある内容で、各人が特に力を入れた点や難しく感じた点などが語られていた。

その中のストーリー原案者へのインタビューに、「アンクロフトを攻略対象者に加える案もあった」という話があった。


(たしか…リコリーが国とアンクロフトを護る為に龍の花嫁になって、その空いた座にヒロインが…って話だったはず…。)


しかしそうすると、他のルートでは「友好度の存在しないお助けキャラ」としてしか登場しないリコリエッタに突然重要な役割ができてしまうことや、不要なファンタジー要素が強くなってしまうなど、ゲーム全体の整合性が取れないとの意見が多く出たことからこの案は早々にお蔵入りしたということだった。

その反動かのように、公式はリコリエッタを「純真無垢で慈愛の女神というコンセプトで作った、唯一駆け引きのいらないキャラ」という存在にしたのだ。


(え、待って…じゃあこの世界ってリリースされたゲームと一致した世界じゃなくて、ボツになった案も含まれてる世界だっていうこと…!?)


そう考えるとこの世界とゲームの些細な差異にも納得はいく。

アンジェリーナが第六感的感覚が強いというのもそうだ。

これは「攻略対象者(ブライアン)の妹」という役割でしか登場しなかったゲーム中では、当然触れられていなかった。

だがもしもリコリエッタが龍の花嫁になるという設定が採用されていたならば、龍の存在に気付くのがアンジェリーナだった可能性もある。


「この話をエルミリアにもしておくべきなのではという意見もあったのだが…。」


自分の名前が出てきたことで、エルミリアは思考を中断する。

自分の思考と家族の思考のベクトルが違うところにあるため、うっかりするとズレたことを口走りかねないのだ。

それこそ、フェストラーダから古龍の逆鱗を受け取ったなどとは口が裂けても言えない。

あくまで現段階では、であるが。


「この話を聞いてしまうと、リコリエッタを心配するあまり魔物討伐への参加が望めなくなるのではという反対意見が出てな…。」

「それは…討伐部隊長からすれば、あまり面白くない意見なのでは…。」

「内心はそうであっただろうが、部隊長は己の名誉より、部隊員の生存確率を下げないことを選んだ。結果として、今この時までエルミリアには知らされなかったということだ。」

「経緯はわかりましたが…。」

「私たちにお話ししても大丈夫なのですか?お父さまがお咎めを受けるようなことは…」

「お前たちだけは、私の一存で話すことを許されている。心配せずとも良い。」


問題ないという回答を聞いたアンジェリーナが、ほっと胸を撫で下ろす。

ブライアンはまだ気にかることがあるようだが、ひとまずは納得したらしい。

そしてエルミリアはー


(ん゛んん゛んんん〜!!!??)


冷や汗をかきながら、心の中で盛大に唸っていた。




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