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作戦会議のターンその2ですよ!④


「謝罪…ですか…?」

「そうだ。」


エルミリアが思わず聞き返すと、父はさも当然とでも言うように頷いた。

何故なのか。

いや、どんな事情があれ人としては取り敢えず謝罪のひとつぐらいはした方がいいというのはわかる。

しかし、今回は状況が状況だ。

迂闊にこちらの非を認めるような行動をとると、サリエラを増長させかけない。

そんなことは父もわかっているはずだ。

では何故なのだろうか。

困惑の表情を浮かべるエルミリアには答えず、父は続ける。


「謝罪をする時には、私とブライアンからきつく言われたとも伝えておきなさい。それから、なるべくしおらしく振る舞うように。」

「し、しおらしく…ですか?」

「そうだ。」


(それはエルミリアの設定的に結構難しいんですけど!?)


声に出して叫びたい言葉を飲み込み、代わりに心の中で全力で叫ぶ。

こう言ってはなんだが、エルミリアははっきり言ってしおらしさとは無縁と言ってもいいキャラクターだ。

ヒロインがエルミリアの婚約者であるリチャードの攻略ルートに入ったときには、「慎重な性格のあなたが選んだのであれば、きっとそれが最善なのでしょう。」と言ってすんなり婚約解消を受け入れたほどだ。

バッドエンドルートに進んでしまった時でさえ、その不誠実さに腹を立てはしても、悲しむような描写はなかった。

そのエルミリアに、しおらしさを求められるとは。


「…承知しました。」


(こうなったらエルミリアのキャラを壊さないように注意しながらそれっぽく振る舞うしかない…!)


心の中で拳を握り、ひとり覚悟を決める。

こうなったらとことんそれらしく振る舞うまでだ。

今はエルミリアとして生きているが、元々自分は現代日本人として社会に揉まれていたのだ。

その頃に経験した苦労や障害を思い出せば、しおらしい演技のひとつやふたつ出来るはずである。


それに、父の補足を聞いたことでその狙いも概ねわかった。


(おそらくお父さまはサリエラに、「ナイトリアス侯爵家はルードベッヘ男爵家との繋がりを欲しがっている」と思わせたいんだ。「現侯爵であるお父さまと次期侯爵であるお兄さまから強く叱られた」と伝えさせることで、エルミリアの感情よりも家業を優先したと思わせる、ってところね…。)


そこで「エルミリアと父兄の間に亀裂ができた」とまで思わせられれば、仕掛けとしては最高なのだろう。

サリエラがどこまで深読みしてくれるかにもよるが、少なくとも「エルミリアの謝罪は侯爵家当主である父の命令によるものであり、それを不服に思っている」とまでは思わせなくては。


(…いや、それはもうまさにそのままなんだけど。)


それならばしおらしさの中に、ほんの少しの不満を感じさせる態度の方がいいかも知れない。

いかにして信じ込ませるかの演技プランを自分の中で練っている間に、父は兄への指示をしていた。


(あ!マズイ!お兄さまの動きを聞き損ねた!!)


「では頼んだぞ。」

「承知しました。オリヴィエにも協力を頼んでおきます。」

「オリヴィエ嬢は実に聡明なお嬢さんだ。…お前の練習にもなって、いいやも知れんな。」

「…重々気をつけます。」


父がニヤリ、という表現が合う笑みを浮かべると、ブライアンは苦笑を返した。

先日の夜会の折、なんでもないことのようにブライアンの意図をするすると読んでしまったことを言っているのだろう。

彼は彼で、難解な役回りを受けてしまうことになったらしい。


(あの2人の間に挟まれて(はかりごと)…ごめんなさいお兄さま…。)


エルミリアは心の中で合唱しつつ謝罪した。


「では、今日の話はここまでとしよう。」

「はい。」

「あ、お兄さま。この魔道具のことで1つお聞きしたいことが…。」

「あぁいいよ。なんだい?」


これは、半分は興味本位だ。

こういった類の魔道具を使うことがないエルミリアとしての。

そして、プレイヤーとして課金アイテムを使ったことがある茜としての。


「この魔道具はどうやって相手を特定するのですか?」


発売前から話題になるような品であれば、買い求める者はそれなりに多いだろう。

使用者と対象者が特定できなければ混乱を引き起こすだけであり、そんな商品はすぐに国から販売中止を求められてしまう。

そうならない為に、それぞれを特定する方法があるはずだ。


「最初に蓋を開ける前に、相手のことを思いながら魔力を込めるそうだよ。」

「多少、集中力が必要そうですね。」

「そうだね。…相手の持ち物や、髪や爪などの身体の一部だったものがあると、より確実らしいよ。」

「…なるほど。」


ブライアンが続けた言葉に、エルミリアは眉を顰める。

それは魔物を討伐した際、稀に発見する「呪い」を付与するアイテムと同じ使い方だった。

そしてそういったアイテムは大体の場合において、何かしらの代償を支払うことが多い。

更にいうと、代償がなんであるかは魔道具師の分析ではわからないことが殆どである。

要は使ってみなければ何が起こるかわからないのだ。


(これを買い求める人たちは、これが魔道具とは知らない。そして知らないうちに何かしらの代償を支払わされる可能性がある…。)


それではまるで、詐欺ではないか。


エルミリアは魔道具を含め、精神操作系の魔法を使うことが少ない。

その前に火力で押し切ってしまうからだ。

自身の婚約者に対して不満を持ったこともなければ、何がなんでもその相手を手に入れたいと思うような強い想いも持ったことがない。

だから今までの人生で、まじないの類にすら興味を持ったことがなかった。

しかし世の中には、こういった魔道具の力に頼りたいと思うほどに恋焦がれる相手がいる者もいるだろう。

そんな人たちを、この香水は食い物にするかも知れないのだ。


(やっぱり、絶対に許すわけにはいかない。)


家族会議の終了とともに、エルミリアは決意を新たにした。



家族会議その2、終了。



お兄さまは大変な役回りが多い人(可哀想)。

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